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令和6年司法試験商法 参考答案例

こんにちは、be a lawyer(BLY)のたまっち先生です。

今回は、昨日まで実施されていた令和6年司法試験の商法について、be a lawyerの個別指導講師(77期)が参考答案例を作成しましたので、公開させていただきます。

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では、早速、令和6年司法試験商法の参考答案例をみていきましょう。

第1 設問1小問1
 Dから相談を受けた弁護士としては、Dは会社法(以下法令名称略)385条1項の類推適用により本件臨時株主総会1の開催をやめることを請求する手段が存在すると回答することが考えられる。
 もっとも、本件臨時株主総会1は、「株主」(298条1項括弧書き)である乙が召集したものであるところ、385条1項は、監査役による「取締役」の行為の差止めについて規定したに過ぎない。
 そのため、Dは、上記手段は取り得ないとも思える。
 しかし、385条1項の趣旨は、監査役が取締役の行為を監督し、もって監査役の独立性を担保する点にある。そして、株主総会は通常、取締役が招集し(298条1項柱書)、取締役は、株主総会の決議が瑕疵を帯びないようにすべき善管注意義務を負う(330条、民法644条)ことからすれば、裁判所の許可を得て株主総会を招集した株主も、取締役に準じる立場として、当該株主総会の決議が瑕疵を帯びないようにすべき善管注意義務を負うと解すべきである。
 そうすると、本件臨時株主総会1を招集した乙も取締役に準じる立場として、当該臨時株主総会の決議が瑕疵を帯びないようにすべき善管注意義務を負うといえる。
 したがって、Dは、乙が取締役に準じる立場の者であるとして、385条1項の類推適用により本件臨時株主総会1の開催をやめることを請求することができる。
 よって、Dから相談を受けた弁護士としては上記のように回答すべきである。



第2 設問1小問2
 1 まず、Eは、本件臨時株主総会1において、乙が甲社の株主に対して1000円相当の商品券を贈呈する旨の記載のある本件書面を送付したことが「株主の権利の行使に関し」て「利益の供与」を行ったものであり(120条1項)、本件決議1は「決議の方法が法令に違反する」(831条1項1号)と主張することが考えられる。
   しかし、120条1項は、「株式会社」が株主に対して利益の供与を行うことを禁止するものであるところ、本件臨時株主総会1では、甲社の株主である乙が上記の内容の本件書面を送付している。
   そのため、乙による上記行為は、「利益の供与」には該当せず、上記主張は認められない。
 2 次に、Eは、本件臨時株主総会1において、乙が甲社の株主に対して1000円相当の商品券を贈呈する旨の記載のある本件書面を送付したことが、「決議の方法が・・・著しく不公正なとき」(831条1項1号)にあたると主張することが考えられる。
  ⑴ 同号の趣旨は、株主総会の適正な運営、決議の公正を図る点にあることからすれば、「決議の方法が・・・著しく不公正なとき」とは、株主の議決権行使の意思決定の過程が歪められたときをいうと解する。
  ⑵ 甲社では、過去の定時株主総会に際して、甲社又は甲社の役員若しくは株主が一定の内容の議決権の行使又は議決権の行使自体を条件として商品券等を提供したことはなかった。それにも関わらず、乙は、本件書面において、「株主総会参考書類に記載した乙社提案の各議案に賛成していただいた方には、後日、1000円相当の商品券を郵送にて贈呈させていただきます。」等と記載して、これを同封した本件臨時株主総会1の招集通知を他の株主に送付している。
    そして、本件臨時株主総会1では、出席した株主の議決権の数は、例年の定時株主総会よりも約30%増加し、行使された議決権のうち議案に賛成したものの割合も、例年の定時株主総会において行使された議決権のうち甲社が提案した議案に賛成したものの割合よりも高いものであった。
    これらの事実からすれば、乙の上記行為は、他の甲社株主が本件臨時株主総会に出席し、本件議案に賛成する動機付けとなっているといえ、株主の議決権行使の意思決定の過程が歪められたといえる。
    したがって、乙の上記行為は、「決議の方法が・・・著しく不公正なとき」にあたる。
    よって、Eは、上記主張をすることができる。
第3 設問2
 本件株式併合は、本件決議2によって効力を定められた日にすでに発生している。
 そこで、丙社としては、本件株式併合の効力を争うために、本件決議2の取消しの訴え(831条1項)を提起することが考えられる。
 そして、本件決議2では、全ての株主が議決権を行使して株本件式併合がなされた結果、丙社が甲社から締め出しされる、いわゆるキャッシュアウトが行われている。
 そこで、丙社としては、取消し事由として、本件決議2は「特別の利害関を有する者」であるAらが議決権を行使したことにより、丙社が甲社から締め出されたことが「著しく不当な決議」にあたると主張することが考えられる。
 1 前提として、丙社はすでに甲社の株主ではないが、本件決議2を取り消すことによって「株主となる者」(831条1項柱書)として、本件決議2の取消訴訟を提起することができる。
 2 「特別の利害関係を有する者」とは、ある議案について他の株主とは異なる特別な利益を受けたり、不利益を免れたりする者をいう。
   本件決議2が行われる前の時点である令和5年11月1日の時点で、甲社の発行済株式の総数は600株であり、丙社が200株、Aが300株、Cが100株を保有していた。そして、本件決議2により、本件計画が実施された結果、甲社の株式はAが1株のみ保有することとなり、その後本件株式分割及びB、Cに対する第三者割当によって、甲社の発行済株式は400株となり、Aが200株、Bが100株、Cが100株保有することになった。
   これら一連の事実からすれば、Aらは本件決議2により、一旦はAのみが甲社の株式1株を保有することになったが、その後Aが200株、B及びCが100株保有することになった点で、甲社の株主の地位という、他の株主である丙とは異なる特別な利益を受けたといえる。
   したがって、Aらは「特別な利害関係を有する者」にあたる。
 3 「著しく不当な決議」とは、他の株主に対し著しく不当な影響を与えるような内容の決議をいう。
   確かに、令和3年12月の時点から非公開会社(2条5号参照)となった甲社においては、公開会社の場合と異なり、株主が経営に関心を持つことが通常であるから、本件決議2によって、株主である丙社を締め出すことは、丙社が甲社の経営に参画する利益を害することになる。
   しかし、上記時点より丙社から派遣されていた取締役Fは、甲社の営業範囲と隣接する地域で建築設備機器の製造及び販売等を行う丁社の再建の一環として、甲社に対し、甲社の持つ技術やライセンスを丁社に提供するよう求めるなどしたため、AらとFとの間には見解の相違が見られるようになっていた。また、Aらが丙社代表取締役Gと面会した際も、両者の見解は一致しなかった。これを受け、Gは甲社を買収し、丙社の完全子会社化することを考えた。Aらとしては、甲社と競合関係にある丁社のために自社の技術やライセンスを提供することはあり得ず、甲社の独立を維持するためには、上記のような計画を有する丙社を甲社から締め出す必要があるといえる。
   また、Gが考えていた甲社を丙社の完全子会社にする案も、Aらが決定した甲社の独立を維持するために丙社を締め出す案も、甲社の企業価値との関係では、客観的にいずれか一方が他方より優れているとは言いがたく、見解の分かれる問題であった。
   そうすると、Aらが丙社を甲社から締め出そうと考えたことも直ちに不合理とはいえず、本件決議2は丙社に不当な影響を与えるものであるとはいえない。
   したがって、本件決議2は「著しく不当な決議」にはあたらない。
 4 よって、丙社の上記主張は認められない。


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