聖杯/カップの5
聖杯/カップの5
大まかな意味(正位置の解釈)
灰色の空の下、黒い喪服のようなローブを纏った人物が俯いて顔を隠しています。その頬に涙が伝っているであろうことは想像に難くなく、足元の中身が溢れ出てしまっている3つの聖杯を見ればその理由は明らかでしょう。流れ出ている赤い液体は葡萄酒にも見えますが、血とも解釈することができます。まだ2つ、内容物をちゃんと湛えている聖杯がありますが、この人物はそれらには背を向けているようです。喪失はあれど、必ず後に残るものはあると教えてくれているカードです。しかし、まだ立っている2つの聖杯を持って、この人物が橋の向こうに見える城に辿り着けるかどうかは別問題です。辿り着くための力はきっと2つの聖杯がもたらしてくれます。遠くの城も要塞などではなさそうで、きっとこの人物を害することなく迎え入れてくれるでしょう。問題は、この人物が歩くための気力があるかどうか、そのための心の強さがまだ残っているかどうかです。周囲の力が借りられるようならば借りたいところです……一方、そんなことを考える余裕すらない可能性が高いところが、このカードの恐ろしい点です。
※余談……ややショッキングな占例になりますが、筆者はこのカードを死別や肉体の死と特に縁が深いカードだと思っています。これ自体が起きることは稀ですが、「大アルカナ編」「13、死神」よりも遥かに死との関連が深いカードと言えます。
★大まかな意味:喪失、離別、何かの決定的な損失、嘆き悲しむような心境、もう戻らない時間や関係や心や人物の喪失、経済的な喪失(損失、というよりは機会の喪失や費用の喪失などのニュアンスが強い)
★人間関係/恋愛上の意味:「大まかな意味」と同じ。但し対象が人間関係や人格、心の喪失に深く関連するため嘆きや悲しみの色が濃くなる。離別や特に死別が絡む場合、ペットロスやグリーフプロセスが絡む可能性が非常に高く、本人も周囲も苦しい状況が想定される。
日常における物事との関連:死別、離別、取り返しのつかない喪失、心に穴が開いたような気持ちで過ごしている人、強い悲しみや寂しさに引き裂かれそうな人、誰かを失って残された誰も彼もが悲しんでいる集団など、ホスピス勤務者や死にまつわる商売をしている人間、僧侶や聖職者など、自殺やその遺族
逆位置
逆位置になると、全ての杯が覆り、内容物が残っているものはないかもしれません。このカードを“絶望からの復活”と読む占い師もいますが、筆者としては、“全てを失ったからこそ、もう前を向くしかない”と切り替えがしやすい状態、という意味での“絶望からの復活”のニュアンスが近いと思います。カードに描かれた人物も、泣いてばかりいられないほど周囲が慌ただしくなるのかもしれません。心理的な前向きさを示唆するというよりは、本人は苦しいながらも、周囲への対応に追われていく内にまた日常生活の軌道に乗っていくようなイメージが強いです。他の喪失や失意を示すタロットカードと同様、逆位置になったからと言ってその苦さが完全に払拭されるわけではありません。ですが、例えば前章の「剣/ソードの10」の逆位置よりは、まだ「5」の段階で止まっているために、決定的な終止符や再起不能を示すものではないと思っています。最も、そうであったとしても本人が再起できるかは周囲のサポートや金銭的余裕などの現実的な事情にもよります。再起できる現実が備わっているか、この先大丈夫そうかについて、このような絶望的なカードを得たならば、必ずフォローとして見ておくようにしましょう。
★大まかな意味:「正位置」とほぼ同様ですが、やや立ち直ろうとしている色が強くなるでしょう。ただし、喪失が前提にあることは間違いないので、そこに対するケアが必要です。
★人間関係/恋愛上の意味:絶交や別れ/絶縁から立ち直ろうとしている、辛うじて心が離れるような出来事から回復しようとしている、(関係が遠い場合)私生活でこのようなことがあって立ち直ろうとしている
日常における物事との関連:「正位置」とほぼ同様だが、筆者はこれらの状態からこのカードを得た人物が立ち直ろうとしているか、ある程度時間が経って過去になろうとしているかのいずれかのケースが多いように感じる。遠方からの死の便り、などもあり得る。
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