株式会社をリーガルラッパーとして、DAOを運営します

2022年の秋ごろから構想を練り、2023年から本格的に作ってきたPlanetDAOが、来月5月前半にローンチします!

ここ1年、どのリーガルラッパーでDAOを組成すべきか、ということについて、弁護士先生にも大変ご協力いただき、話を進めてきました。

現在、多くのDAOが合同会社型をリーガルラッパーとして採用し始めているとおもいますが、私たちは異なる法人格を選定しました。その背景と理由ついてお伝えできればと思います。

合同会社型DAOの概要については、ぜひ以下の金光さんのnoteをご参照ください。(毎度わかりやすい内容でまとめてくださりありがとうございます。)

はじめに:
法的アドバイスについて:
本文中の情報は法的アドバイスではありません。具体的な法的助言が必要な場合は、弁護士事務所にご相談ください。
金融アドバイスについて: この記事は投資を推奨するものではありません。投資に関する決定はご自身の判断と責任で行ってください。


事業の大枠と目指すもの

事業の大枠としては以下のようなものになります。

  • 日本に存在する歴史的建造物を宿泊施設として生まれ変わらせます。

  • 小口投資で国内外からの個人投資家から資金を募ります。投資家は物件からの収益分配を受け取ることができます。

  • 歴史的建造物という公共性の高いものを扱う、また保全しながら使用することが必須の為、投資家や運営会社だけではなく、地域住民や専門家(歴史的建造物を専門とした建築家や環境保全の団体など)などの多彩なメンバーが意思決定や議論に参加します。

日本全国で現在900万棟※あるといわれている空家・空きビル。そのうち100万棟が歴史的建造物である、と言われているようです。この問題は必ず人口減少とともに拡大が予想されます。
※:総務省統計局 令和5年住宅・土地統計調査より

これまで国主導の助成金で文化財や町並みを保護してきましたが、限られた財源のため、国や地方自治体による維持・保存は困難になっています。
また、寄付やボランティアでは限界があり、長期にわたり世代を超えて残していくためには、資金を集め、運営していくことが必要です。そこで新たなビジネスを創出し、利益を生み出すことが必要不可欠となります。

歴史的建造物の保全・活用を目指し、国内外の多彩な仲間たち、地域住民、専門家と協力して、歴史的建造物を保全しつつ活用する仕組みがPlanetDAOです。

公共性の高い寺院のような物件をDAOで運用し、必要なリノベーションフィーの資金調達を実施し、地域のハブとなる宿泊施設として活用します。

私たちが定義するDAOとは?

DAOにはさまざまな定義がありますが、PlanetDAOにおけるDAOの定義は以下の通りです。

  • みんなで投資したお金を増やす(トレジャリー)

  • 誰が行動しても同じ結果が出る(スマートコントラクト)

  • 多彩な人々(国籍、職種、性別、年齢を超えた構成)によって運営される

DAOの法人格の選定

皆さんもご存知の通りだと思うのですが、改めて書いておきますと、
本来、DAOは個人の集まりとスマートコントラクト、トレジャリーによって構成されているため、法人格は必要ありません。しかし、個人の集まりだと事業失敗時に無限責任が個人に及ぶリスクがあり、不動産を扱う場合は登記が可能な法人または個人が必要です。

その為、私たちはDAOのリーガルラッパーとしての法人格を選ぶ必要がありました。どの法人格を選ぶべきか。合同会社、協同組合、など様々な法人格を当てはめてみる、色々な議論を経た結果、私たちは株式会社を選びました。

DAOは株式会社のような中央集権的組織のアンチテーゼとして作られたもののはずなのに、なぜDAOのリーガルラッパーとして株式会社を選定するのかを書いていきます。

なぜ株式会社をリーガルラッパーに選んだか?

私たちの事業には、必ず外せない2つの要点があります。

  1. 投資家に対して、出資以上のリターンを渡したい(初期投資に対する宿泊施設運営からのインカムゲイン)

  2. 地域住民の意思を反映させたい(私たちが歴史的建造物のような物件を扱えるのは、地域住民の意見が反映されるから)

特に①に関しては、現状の日本の法律(おそらく他国でも同様)で合法的に実現可能なのは株式会社のみでした。具体的には、物件を株式会社が保有し、投資者には株式を出資してもらい、その会社の株主となってもらいます。その物件からの収益は株主への配当という形で分配されます。

最近発表されている合同会社型DAOでは、投資家へのリターンを実装しようとすると、

  1. 出資額以上の配当については業務執行社員に対してしか行うことができません。

  2. 業務執行社員には名前と住所の登記が必要で、登記事項の変更には3万円かかります。気軽に変更できるものではありません。

  3. 業務執行社員権の譲渡は、他の業務執行社員間でのみ実行可能です。また、勧誘を行えるのは業務執行社員のみです。

一方で、株式会社では、

  1. 株主に対する配当の上限がなく

  2. 株式の自由な二次流通は可能

  3. 株主の管理に登記は不要で、組織内管理で完了します

DAO協会で発表されているスライドなどでは、合同会社型DAOで資金調達が可能になったことをフォーカスを当てているようですが、資金調達という観点では株式会社がより好条件です。
合同会社型DAOでスポットライトを当てるべき優れている点は、他にもあるのではないかと個人的には思っていたりします。(Macさんの意見を聞きたいところ!)

株式会社の不便性

株式会社は資金を調達し、収益を分配するには適した法人格ですが、会社法に則って行わなければならない点が、DAOの運営においては不便になると感じた点がいくつかありました。

株主総会の必須性

株式を発行している以上、年に一度の株主総会を開催する必要があります。株主総会はオンラインで行う、株主総会での議決事項と他のツールを用いた投票を明確に区別し、極力負担を軽減するようにしました。

少額でも出資と配当が必須

トークン設計では、ガバナンストークンのみを発行し、エアドロップ(無償配布・譲渡)が可能ですが、株式の場合、最低1円の出資が必要で、配当がない株式は発行できません。配当には制限を設ける必要があります(例えば、最大2円までなど)。

代表取締役の存在による中央集権制

私たちが株式会社をリーガルラッパーとして選ぶ際に最も悩んだのは、DAOの理念と逆の中央集権制を採用するかどうかでした。

この点についてはかなり気をつけた形で、代表の影響力を無効化し、事業運営中に代表や取締役だけで意思決定が行われることを極力排除し、DAOの理念に沿った設計に仕上げています。

例えば、初めに私は会社の発起人として代表取締役に就任し株式を100%保有している状態で始まりますが、株主が集まると私の株式は全て消却されます。そのため、代表取締役でありながら実質的には財務的リターンも議決権もありません。

また、事業のすべての意思決定方法や業務内容については定款、または規定に記載し、代表取締役や取締役だけの判断でこれらを変更することはできません。変更には株主の承認を必要としています。
また、これらの定款や規定は誰がいつ変更したかを可視化できるようにしております。

定款: https://drive.google.com/file/d/1EzDicXoPk9_cloH39IcwgG3H6y-JM2Em/view?usp=sharing
規程: https://planetdao.gitbook.io

さらに、デフォルトの設定では物件の運営は私たち立ち上げメンバーが所属する株式会社PlanetLabsに発注しますが、他の会社がより良いパフォーマンスを示す場合は、投票により運営会社を変更できるよう設計しています。

このように代表取締役は必要ですが、名前貸しのみで実質的な意思決定や業務実行が行われないように設計しました。

最後に

当初の計画では、所有権をブロックチェーン上に記録し、出資や配当を行い、二次流通を可能にすることを予定していましたが、実装できなかったのは、日本の法律がインベストメントDAOに課す限界によるものです。

ただ、合同会社型DAOについては、アジャイルに的法律を基にして作られた事例から得られるフィードバックにより進化していくようですので、今後の法改正にも期待しております。また、私のようにDAOの運営にチャレンジし続ける一員としては、貢献させていただきたいと思っております!

最後に、PlanetDAO、応援してくださると嬉しいです!


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