使ってみたくなるVE入門 3. 価値、Valueとはなにか

 VEの定義は次のとおりでした。
 「VEとは、①最低のライフサイクル・コストで、必要な機能を確実に達成するために、②製品やサービスの機能的研究に注ぐ組織的努力である。」[1]

 ②の製品やサービスとは、触れることができる製品などや、触れることができない業務など、あらゆる分野を指しています。つまり、VEは何に対しても適用することが可能です。なぜなら、VEの思考プロセスは設計や課題解決などと同じだからです。

 VEには次の行動指針があります。[1]
 【第一原則】使用者優先の原則
 【第二原則】機能本位の原則
 【第三原則】創造による変更の原則
 【第四原則】チーム・デザインの原則
 【第五原則】価値向上の原則

大まかにはこの原則の言葉から想像がつくと思いますが、普遍的な内容です。特徴的なのは第二原則の機能本位という部分、そして、関連して第五原則の価値向上の原則が挙げられます。
 「機能」とは何か?に対する厳密な議論は他の機会に譲ることにして、ここでは大まかに、機能とは「はたらき」や「効用」と考えるとわかりやすいと思います。そして、「価値(Value、Vとします。)」は機能(Function、Fとします。)を対価(コスト、Cost、Cとします。)で割ったものとします。VEでは価値をV=F/Cと表します。つまり、コスパ(コストパフォーマンス)とほぼ同じ意味ですね。同じ機能なら対価は安いほうが良いし、対価が同じなら機能が高いほうが良いですよね。
 価値は機能と対価のバランスですから、全く同じ対象であっても、求める機能が異なれば当然価値が変わってきます。おっさんだけで安上がりに飲みたいだけであれば、一人当たり3,000円の安居酒屋でも十分でしょう。そういう場合に安居酒屋はおっさんたちには価値が高いですね。一方、奥さんとの結婚記念日に高級レストランでおいしいワインを飲みながら食事をして数万円払っても、安いものです。でも、おっさんだけで数万円だと安いと感じるでしょうか。この二つの状況を単に金額だけで比較することはできませんよね。何を求めて、いくらの対価を払うのか、そのバランスが大切だということですね。
 VEは、機能を明確にする、つまり、使用者が求めているものをしっかりと把握することで、使用者にとっての価値を最大化しようとすることを目的にしています。

参考文献
[1]土屋裕(監修),産能大学VE研究グループ(著):「新・VEの基本」,産業能率大学出版部(1998)

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