【3分解説】株式のバリュエーションのつかみ方

・ここでは、株価を評価するための投資指標についてご説明します。
・株価を評価するということは、ようするに投資候補の株価に投資すると儲かるか、儲からないのか、ということですから、こうした判断ができる何らかの基準が投資指標と言えます。
・ここでは、投資指標として、長期で株価が上昇するかどうかの指標(ROE)、現在の株価が割安・割高か判断する指標(PER、PBR)、株価の上昇ではなく配当の高さを判断する指標(配当利回り)についてご説明します。

(ROE)

・長期で株価が上昇するかどうかを判断できる投資指標がROEです。
・定義としてのROE(Return On Equity:自己資本利益率)とは、来期予想の当期純利益を自己資本で割ったものです。
ROE=当期純利益÷自己資本
・長期で株価が上昇する企業とはどのような企業かというと、株主から集めたお金をうまく活用して儲け続けることができる企業といえます。つまり、高い水準のROEを維持できる企業ということです。
・次に、ROEが高い企業の特徴を考えるために、以下の通り、ROEを売上高当期純利益率、総資産回転率、財務レバレッジに分解してみます。
ROE=売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)×総資産回転率(売上高÷総資産)×財務レバレッジ(総資産÷自己資本)
・順番に見ると、売上高当期純利益率とは収益の安定性の指標であり、これが高ければコストコントロールが上手くできている、と言えます。
・総資産回転率とは、収益の成長性の指標であり、これが高ければ資産を効率的に使えている、と言えます。
・財務レバレッジとは、事業を運営するために、自己資本だけでなく銀行からの借入や社債といった負債をどれだけ調達しているか、ということを示します。
・ROEを高めるためには、売上高当期純利益率か総資産回転率を高める必要がありますが、企業の戦略としては、収益の安定性と成長性は同時に求めることは難しいと言えます。
・というのも、収益の成長性を求めるときは、財務レバレッジを高めて資金調達を行い、保有資産(総資産)を上手く活用して収益拡大を目指す必要があります。一方で、収益の安定性を求めるときは、財務レバレッジを抑制して負債の利息負担も抑える必要があります。
・つまり、収益の安定性と成長性は、財務レバレッジの方向性が逆になりますので、どちらも求めることは難しいということです。
・以上から、ROEを投資指標として用いるときは、対象企業が収益の安定性、成長性のどちらを追求する企業かどうか見極める必要があります。

(PER)


・株価を利益を基準として株価の割安・割高を判断する指標がPER(Price Earnings Ratio)です。
PER=株価÷一株あたり来期当期純利益
・株価は1~2年先の業績を折り込みますので、使う利益は来期の当期純利益を採用します。
・見方としては、例えばPER=15であれば、今の株価は15年分の利益で回収できる水準、と判断できます。
・逆にいうと、使用する当期純利益は定常的な水準にあることを前提としますので、当期純利益が大きく変動する局面では使いづらい、と言えます。

(PBR)

・純資産を基準として株価の割安・割高を判断する指標がPBR(Price Bookvalue Ratio)です。
PBR=株価÷一株あたり純資産
・見方としては、株式を保有するということは、その会社の一部を保有することです。その株主の持分は、財務諸表上では純資産(厳密には自己資本)に該当しますので、この会社の持分を一株あたりの純資産という形で表現して、株価と比べているわけです。
・ですので、財務諸表上の数字をそのまま受け取ることができるとすると、PBRが1を下回っていれば、お得に株式を変えたと言えます。
・とはいえ、1を下回っていれば必ずしも割安と言えるわけではありません。
・先ほどの純資産は、財務諸表上で資産ー負債として算出できますが、収益が少ない、ないし収益が減少すると見込まれる場合においては、資産の価値が財務諸表よりも実際はもっと低いとも言えます。こうなると、純資産もまた実際はもっと低く、PBRの低さは正当化されうるということです。
・逆もしかりで、1を上回っていれば必ずしも割高と言えるわけではありません。
・例えば、財務諸表に計上されていない人材や組織文化などの経営資源について、こうした資産の価値も株価に織り込まれていると考えれば、PBRが1を上回っていても必ずしも割高とは言えません。
・1を上回ることを正当化できるもう一つの理由として、以下の式が挙げられます。
PBR(株価÷一株あたり純資産)=ROE(当期純利益÷自己資本)×PER(株価÷一株あたり当期純利益)
・ROEが高ければ利益が純資産に積み増されていきますので、足元のPBRが仮に高くても、利益が蓄積されればPBRの分母が大きくなりますので将来のPBRは低下しますので、正当化できると言えます。

(配当利回り)

・株式への投資は、株価の上昇だけでなく配当からも収益を稼ぐことができます。その配当の高さを示す投資指標です。
配当利回り=来期配当÷株価
・高利回りの株式は、国債や社債が比較対象になります。どういうことかと言うと、景気が過熱し始めて日銀など中央銀行が金利引締めを行う・あるいは市場がそうしたアクションを折り込み始めるときには金利が上昇しますが、債券は金利が上昇すると価格が低下しますので、配当利回りの高い株式が代替投資先として人気が高まります。
・ただ、基準としては配当利回りだけでは配当が安定して出続けるかは判断できませんので、収益の安定性を把握するため売上高営業利益率の高さや、減益しないことを来期の予想経常利益から確認します。

・では、こうした投資指標を具体的に景気サイクルに応じてどう活用するか、ということですが、続きは以下にてご説明致します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?