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そして、展示グラフィックができるまで。

6回に渡って、情報デザインコース卒業研究制作展2021「そして、」は一体どのように作られていったのかご紹介していきます。

第3回目は展示グラフィックができるまでのプロセスをお話していきます。
展示グラフィックとは以前こちらでも紹介したトーン&マナーやロゴなどのビジュアルを、展示会場にも反映させるために制作されたグラフィックを意味しています。例えば、キャプションやサインの装飾などが含まれます。
情デの卒展の組織にはこれを専門に行う「展示グラフィック班」が存在しています。そんな展示グラフィック班が、どのようなこだわりをもって展示において大切な役目を持つキャプションやサインなどを作っていったかを[ 形・情報・素材 ]の三要素に焦点をあてて説明していきます。楽しんで読んでいただければ幸いです。

01.作品キャプション

作品キャプションは作品タイトルや説明を載せたもので、来場者の皆さんの作品理解につながるものです。制作するにあたっては「見やすく、分かりやすく」を重点に置いています。

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まずは自由な発想で、作品キャプションのを考えます。今年は「ペンやインクで描かれた、有機的な細い線とアナログの要素を加えたトーン&マナー」が特徴なので、キャプションも有機的な形にしようと試みました。

しかし、その案はすぐに撤回されました。有機的な形もとっても魅力的なのですが、作品キャプションは作品を説明するものであり、目立つものではないと考えたからです。
なのでシンプルに正方形でデザインを固めていくことにしました。

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有機的な細い線を背景に敷くことで、メインビジュアルの優しい雰囲気を出しています。

正方形でデザインを微調整していた頃、DMが「本の栞になるような縦長の規格」に決定したため、キャプションも縦長にマイナーチェンジを行いました。
正方形よりも縦長の方が説明文の一行が短いことで読みやすく、左上のナンバリングから右下のピクトグラムに流れるように読める構図となりました。

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次に見やすく分かりやすい情報の配置と文字組みを考えます。
キャプションに記載する情報の選定では、作者の所属ゼミ名やサブタイトルの掲載の順番に過不足がないかを検証しました。最終的には展示空間にゼミごとの振り分けがないので、ゼミ名の記載を削除しました。サブタイトルは付いている作品と付いていない作品があるので、どちらでも対応できるよう隙間をもたせることにしました。

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文字組みなどを進めながら、キャプションに載せるピクトグラムについても考えていきました。これらは作品によって異なる「作品の撮影可否」や「作品への接触可否」についてを案内するためのものです。文字の太さとのバランスを考えて少し太めに、遠くからでもわかりやすいサインを目指しました。

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キャプションの素材は「アナログの要素を加えたトーン&マナー」を実現するために、はじめから紙で作ることが決まっていました。さらにDMの小口がロゴ・線と共通する紺で染められていることから、キャプションの小口にも色を付けています。

キャプションを支えるスタンドは、キャプションを展示台に乗せられない人がキャプションを自立させるための高さ出しに使います。会場である赤レンガ倉庫の床との相性を考えて木材でシンプルに製作しました。

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何度も調整を繰り返し、見やすさとメインビジュアルの柔らかい雰囲気を兼ね備えたキャプションが完成できたと思います。特にキャプションスタンドはスポットライトに当たると単体でも映えるので、ご来場の際にはぜひ注目して頂きたいです。

02.サイン

サインとは案内板、看板、道しるべ、などのことを指すピクトグラムのことです。言語に頼らずに視覚で直感的に情報を伝える手段の一つです。

例年は会場内での順路を示す矢印と、お手洗いのピクトグラムの二種類を制作していますが、今年は新型コロナウイルス感染症拡大防止対策のサインを追加でたくさん制作しました。
これらもキャプションと同じでわかりやすく、そしてどこにでも使えるものであることに重点に置いています。

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ビジュアルや色味から感じられる優しい雰囲気をサインにも生かしたいと思い、角が削れた可愛いを意識したデザインにました。線も少し太めで、ころっとしているところが特徴です。
本来堅苦しくなってしまいがちなコロナウイルス対策の情報も、を工夫することで受け入れてもらいやすくなるのではないでしょうか。

03.クローク札

クローク札は大きなお荷物などをお預かりした際に、お預かりした荷物とご本人様を照会する札のことです。クロークを利用される方にしか見て頂けないのも寂しいので、制作過程からご紹介したいと思います。

クローク札はお預かりした荷物に付けるものと、来場者の方にお持ちいただくものの2つで1セットになります。はDMやキャプションと同じく縦長で決定し、素材はアクリル板と木材を組み合わせてる事が決定したものの、肝心の数字をどのように印刷するのか悩みました。

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写真はコピー用紙に数字を印刷し、アクリル板と木材で挟んだ状態です。なんだか、それぞれの素材の良さを生かしきれていない気がします。
そこで数字を刷るのではなく、彫ってみることにしました。

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レーザー加工によってアクリル板には数字と線を彫刻し、木材には数字と紐を通す穴を開けました。
アクリル板の彫刻には墨入れをすることで、数字を浮かび上がらせることができました。有機的な線も綺麗に再現することができ、レーザー加工機の精度の高さに感動しました。

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04.その他制作しているもの

その他にも展示グラフィック班では順路と作品名を記載した展示場内図大型バナースタッフ章など、会場のあらゆるものを制作中です。最後にちらっとお見せして、展示グラフィックの紹介を終わりたいと思います。

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最後までご覧いただきありがとうございました。
卒業制作展2021「そして、」第3回 展示グラフィックができるまでの裏話はお楽しみいただけたでしょうか。

第4回の更新は2/22(月)です。webサイトについてお話しします。
どうぞお楽しみに!


多摩美術大学情報デザインコース卒業研究制作展2021 展示グラフィック代表

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