見出し画像

「デジタルツイン・XR・メタバース」と「ソードアートオンライン」

11月30日にあったSYMMETRY LIVE「都市におけるデジタルツイン活用」がすごく面白くて興味深かったのだけど、最後の方に東京都の方がデジタルツインの未来を聞かれて、「個人的にはソードアートオンライン(SAO)の世界をめざしている」という趣旨の発言があって、その通りだなあと思ったのだった(「時間も操作することができる…」というような趣旨の発言があったように思うので、多分アリシゼーション編のアンダーワールドを想定されているのかなと思った)。

個人的に前からSAOはデジタルツインやメタバースと相性がいい(というかその未来を示している)と思っていたので、現実の取組の参考になりそうな箇所をピックアップしてみようと思う。

はじめに(全体のまとめ)

「アインクラッド」「マザーズロザリオ」「オーディナルスケール」「アリシゼーション」はデジタルツインやXR、メタバースの観点から見て損は無いと思う。
アインクラッド    ★★★★
VR世界の話でストーリーも割と面白いし序章だし見ておくといいと思う。
◎マザーズロザリオ   ★★★★★
VR空間によるターミナルケアという視点がとてもいい。いかにVRを活用し現実のQOLを上げていくか、という取組のヒントになっていると思う。
◎オーディナルスケール ★★★★★
おそらくデジタルツインやXRといったものと一番相性のいいストーリー。国交省のPLATEAUもこの文脈に近いように思う。
〇アリシゼーション   ★★★★
AIによる仮想世界の構築やAIの人権の話。とても示唆的で面白い。ただ後半になるにつれてちょっと雑になる(描写にも一部難あり)

※あくまで個人的な感想です。なるべく具体のストーリーのネタバレは避けてます。あと、ちょっと描写がやりすぎかなと思うところがあるのが玉にキズではある(フェアリィダンス、アリシゼーションの一部)

〇【1 アインクラッド(アニメ1期1~14話)】

舞台となる仮想世界アインクラッド城

■デジタルツイン・XR・メタバース参考度 ★★★★
■面白さ ★★★★
■概要
・一番最初のシリーズ。「ソードアートオンライン」というフルダイブ型(HMDを付けて五感全てがVR世界へと飛ばされる)のMMORPGが発売されるが、開発者のトラップによってログアウトできなくなり、仮想世界から脱出するデスゲームが始まる、というもの。
・仮想世界で五感全てが体験可能で普通に生活できている様子が描写されており、シリアスなシーンも多いが総じて「こういうVR世界の実現って面白いな」と思わされる内容。

△【2 フェアリィダンス(アニメ1期15~25話)】

舞台となる仮想世界の世界樹

■デジタルツイン・XR・メタバース参考度 ★★
■面白さ ★★
■概要
・2番目の話で、1番目の後日談のような作り。内容はアインクラッドに比べるとちょっと今一つ(一部描写が微妙)。
・最後にザ・シードというメタバースみたいな話が出てくるんだけど、この発想は面白かった。2014年のアニメの内容が今年バズってるメタバースと同じ。ようやく現実が空想に追いついた感じ。

主人公は開発者から世界の種子(メタバースの元プログラム)を渡される
メタバースのイメージ ※日本政策投資銀行レポートから(画像リンク先)


△【3 ファントムバレット(アニメ2期1~14話)】

舞台となる荒野

■デジタルツイン・XR・メタバース参考度 ★
■面白さ ★★
■概要
・3番目の話。剣の世界から銃の世界での戦いへ。デジタルツインとかの視点からいうとあまり新味はない感じ。


◎【4 マザーズロザリオ(アニメ2期18~24話)】

VRによるターミナルケアを行う「メディキュボイド」

■デジタルツイン・XR・メタバース参考度 ★★★★★
■面白さ ★★★★★
■概要
・ほぼ4番目の話。VRによるターミナルケアの話。これは素晴らしかったように思う。終末期医療のフェーズに入った患者のQOLをどのようにしたら上げることができるのかということ(現実世界でも一部進みつつある)。
・VR等の技術は障害者や高齢者の物理的障壁を取り去ることができるし、福祉分野のDXとも親和性が高いように思う(例えば吉藤オリィさんの電動車いすとか、eスポーツ分野における障害者の活躍とか)。

VR映像で思い出の場所へ 終末期緩和ケアに効果(芦屋市立芦屋病院)
※神戸新聞記事(画像リンク先)


◎【5 オーディナル・スケール (劇場版)】

ARが普及し始めている東京が舞台
現実世界にあらゆる情報が投影されつつある

■デジタルツイン・XR・メタバース参考度 ★★★★★
■面白さ ★★★★★
■概要
・これまでのVR世界の話と異なり、今回はARの世界。これはすごくよかった。多分、一般的にデジタルツインとかXRとか言った時に、このオーディナルスケールを想像する人も多いんじゃないかと思う。
・デバイスもオーグマーと呼ばれる小さな端末になっている。これくらいのデバイスなら現実に着けていてもそんなに違和感はないだろうな。食事をするときにカロリー管理を可視化するシーンが出てくるなど、今のスマホの機能をより高度に、よりウェラブルにしたような未来が描かれている。
・バトルの中の会話で敵キャラから「VRでは英雄でも、ARでは形無しだな」といったことを言われるシーンがあるんだけど、この発言ってARとVRの違いをすごく端的に表している。VRだと身体感覚を基本全部バーチャル世界に持っていくのだけど、ARは現実世界ファーストでそれに付加情報をつける感じなんだよなあ。
・国交省のPLATEAUが発表された時、Twitterのタイムラインが「オーディナルスケールじゃん」という風にすごく盛り上がったのを覚えている。

・オーディナルスケールでは、機械学習とXR技術を使えばある意味で死者を蘇らせることも可能となる、といった点もフォローされている。オーディナルスケールの劇場公開は2017年だが、2020年には実際に韓国で類似の取組が行われ、物議を醸したことがある。


〇【6 アリシゼーション(アニメ3期:全47話)】

アンダーワールドという環境でAIによる自律型の国づくりがシミュレートされる

■デジタルツイン・XR・メタバース参考度 ★★★★★
■面白さ ★★★★★(ただし後半は微妙)
■概要
・AIによる自律的な仮想世界の構築、AIの人権といった分野に取り組んだ意欲作でとても興味深い。
・テクノロジーによって作られたクローズドな時空の中で、完全なボトムアップ型AIの作成に成功し彼らが自律的に社会を形成したとき、現実社会は彼らの人権をどうするのか(AI側から「我々の世界は維持エネルギーを外部(現実世界)に頼っている脆弱なものだ」という趣旨の発言が出てくる)。
・イメージ的には佐藤航陽さんの取組が近いように思う。

・AI世界の魂をデータとして入れる外付けハードディスクのようなものとして「人間の脳とほぼ同容量のデータを保存するメディアとしての光量子ゲート結晶体、通称ライトキューブ」という発言も出てくるのだけど、なんとなくcluster社CEO加藤さんインタビューのメタバース研究所の取組を想起させる。メタバースの研究が脳の仕組みの研究につながっていくというのはとても興味深い。

だからclusterは最近、東京大学の稲見研究室と、京都大学の神谷研究室とコラボして「メタバース研究所」というのを作ったんですよ。
神谷研究室は、脳の情報をデコーディングして取り出しましょうという情報工学の研究室です。脳活動自体は、電気信号なので、これを機械学習をかませることによって、今この脳はどういうことを考えているのか、何を見ているのかというのを取り出して解釈しよう、デコードするということを研究している研究室なんですね。


おわりに

ということで前々から「デジタルツイン・XR・メタバース」の話題が出るたびに、「これってSAOのあれで見たことあるなあ」と思っていたのだけど、ざっくりとまとめてみた。
こうして見ると、空想したものは何年(または十数年くらい)か遅れて現実化していくように思うし、技術の発展が速い現代ではその速度はもっと上がっているんだろうな。
海底二万里を書いたジュール・ヴェルヌは「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」ということを言ったとされているけど、その実現に資するように僕も手を動かし続けていきたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?