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宇宙からの帰還

大学の時のドイツ語の授業は、核融合やイスラム文化と幾何学(モザイク)模様を取り上げた教科書を翻訳していく内容。
その教授のドイツ語の単位は取りやすいと評判で、単位取得のためのだけの馬鹿共が集まった授業で、教授にとっては砂漠に水を撒くような仕事だったと察します。
もちろんそんなことは教授は百も承知で、馬鹿共に少しでも興味と教養を持たせるために選んだ教科書で授業をしていたのでしょう。おかげで今でも興味深いその教科書の内容は覚えています。
そして教授は立花隆の『宇宙からの帰還』を奨めてくれました。もし授業の内容に少しでも興味を持ったならこの本を読んでみなさいと。宇宙から地球を見るというのは人間の価値観を根底から覆すもので、宇宙から還ってきた宇宙飛行士たちのその後の死生観や人生観を描いていると。
ちょうどそのころテストパイロットと宇宙飛行士たちを描いた珠玉の映画『ザ・ライトスタッフ』を観たころで、とても感慨深かったのを記憶しています。
立花隆さんの訃報を聞いて、あのドイツ語の授業の教室や教授の顔や教科書の挿絵がぼんやりと蘇りました。
戦うジャーナリスト立花隆さんのご冥福をお祈りいたします。


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