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路傍の石ころ

例えは悪いが、路傍に打ち捨てられたエロ本のような存在。道行くものの興味を惹くのだが誰も手を出さない。そして打ち消えるか、ゴミとして処分される。そうなって欲しくない。MONDOの存在は映画の中だけで良い。

上記の記事から11年経った。
娘は東京へ出て結婚した。風のように消えたモンド(MONDO)はいつの間にか記憶からも消えかかっていた。

そう、僕と娘の間で、その少年のことはモンドと呼ぶようになっていた。モンドは一日中街をうろうろしていたから、時折彼を見かけていた。いや、あえて僕の視界の中へ訪ねてきていたのかもしれない。彼を見かけた時は娘に報告していた。

でもいつの間にか彼は消えてしまった。物語の中のモンドのように。

ところがである。今年のある春の日、僕の仕事場の前をロード用自転車で駆け抜けていった精悍な青年がいた。彼はこちらへ振り向いて軽く会釈した。

え?
そうだ!モンドだ!

驚いた。モンドは鋭い体躯の美形の青年になっていた。

そしてまた風のように消えていった。

東京の娘にはもちろん報告した。娘と同い年だから26歳になる歳だ。

つかの間の間、忘れかけていた温かい気持ちになった。


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