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新今宮の休日

Moon River,
Wider than a mile:
I’m crossin’ you in style
Some day.
Old dream maker,
You heart breaker,
Wherever your goin’,
I’m goin’ your way:
Two drifters,
Off to see the world,
There’s such a lot of world
To see.
ムーンリバー 君に続く果てしなく続く長い道のようだ
いつかまた君の側に戻るよ
懐かしい夢を見せてくれて、ハートを揺らせてくれた
君とならどこまでも一緒に行ける
彷徨うようなふたりが
ふたりの流れ者が、
世界を見るために旅立つ
あまりに多様な世界を見るために

上記の記事が賛否を呼んでいるという。

感動ポルノ。そうなのかもしれない。

注釈にもあるように、大阪市の「新今宮ワンダーランド」という新今宮エリアのブランド向上事業のPR記事のようで、筆者は仕事でこのPR記事を執筆したのだという。シリアスな場所での非日常体験を描いているのだが、軽妙で仕掛けも巧妙で読み物として面白い。

事実に基づいたフィクションなのかな。

でもタイトルに引っかかっていた。一見、記事の中のまつの屋での奇妙なデートを単なる名作映画のタイトルにかけているようではある。

この記事は、社会のエッジのような場所で、女性ライターが一宿一飯の精神の恩返しでホームレスとデートのような時間を過ごす。持つものと持たざる者の邂逅と別れ。それぞれの世界に戻っていく。

おいちょっとまて、これって「ティファニーで朝食を」というより「ローマの休日」ではないか。

「ローマの休日」

原題は「Roman Holiday」といい、ローマ帝国時代の休日の娯楽で、コロッセオでグラデュエーターを戦わせたことに由来している。

奴隷同士のデスマッチで残虐性を楽しむという、他人を犠牲にして自分が楽しむという娯楽。

つまり、ローマの街に冒険に出たアン王女と、そこで出会った新聞記者との邂逅と別れを描いているストーリーと、当時まだWW2後まだ10年も経っておらず、残虐な社会への抗議と自由への想いという、二つの意味があったといわれている。

まだまだ暗い過去の影があるが、情緒あふれるローマの街での一日限りの実らない愛を描いてはいるが、決して悲しい物語の終わりではなく、強く正しくいきるための未来への糧となった。強く正しく生きるということは、相反する正義という自己矛盾との葛藤でもある。

一方の「ティファニーで朝食を」では複雑な事情で14歳で結婚した過去を持つヒロインが、ニューヨークの街で高級コールガールとして人生を学んでいくストーリー。彼女は名前のない猫を買っていて、客の男たちのことを鼠ちゃんと読んでいる。猫は彼女自身なのであり、これがこの映画の重要なメタファーなのである。

有名なラストシーンで彼女は、「自分の生き方は自分で作った檻の中にいるようなものだ」と、彼氏に気づかされた。

お金や地位という檻から出て、自由になり自分に正直な愛に生きることを決意した。

「ローマの休日」では相反する世界でのおとぎ話、「ティファニーで朝食を」では社会の光と影が描かれている。

「テフィアニーで朝食を。まつの屋で定食を」というタイトルは、この記事の本当の文脈は言葉の使い方や行間から読み取ってください、という隠されたメッセージでもあり、奴隷同士を闘わせて残虐性を楽しむようなRoman Holidayのようでもある。

本当のタイトルは「新今宮の休日」なのかもしれない。

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