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短篇【夢見る機械】齋藤飛鳥


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下校の夕暮れ、空は楽しく晴れていた


赤く光る空に映える騒々しい雲が、
今でも少し憎たらしい


帰り道、短い車両の一幕

連鎖するの車輪音は秋の終わりを凛々しくて伝えて、廻る姿に俯きながら通っていく

『肩広すぎ』


躍起に見える彼の滅裂な目線は
ただ先走る背景の薄暗い色合いに


座ってもぶつかり合う肩は、沸々と熱くなる
『てか彼女が隣にいるのに普通携帯見る?』

「いつも飛鳥の方が見てるし」

間髪入れず、文句が垂れる。
声が瞬きそうに見える

『言い訳しない、ダサいよ』


不貞腐れる空に堕ちるように、
「いつもより素直だね…」

携帯を仕舞いながら
『やっとテスト終わりだよ、もっと高校生を満喫しないと』

「まあ受験は追いかけてくるからね」

疎らな空席の車内で帯びる2人の間
「てか明日席替えか」
『そう!!』

あまりの声の大きさに
少ない目線が集まる

「………静かにね」


『隣がいい………』
肩に当たる熱を無邪気に乞おう

足をバタバタさせて、天邪鬼のように
『………今のままがいい』

周期的に行う席替えに
帰り道が憂鬱になる

「前の席替えから楽しそうだったもんね」

『そんなことないもん……』

認めない彼女の動きは
照れが混じった喜びで
くねくねと、

『テスト明けなのに嫌気が〜』


憂鬱な彼女は
不意な愛で
頭を肩に乗せる

「………やっぱり素直じゃん」

『なんならもっと素直になりたい』


「………笑」

僕の潤った笑い声は
小さく彼女の頭部を通る

「手小さい…笑」

愛の重みが嬉しくて、
ゆっくりと空いた手を
彼女と重ねたくなった


『これで釣られると思うなよ』

強がりと恋は紙一重に

「はいはい…笑」

揺れる吊革は
笑顔で踊る

『〇〇の駅まで乗るから』

「まだ長いよ……笑」


まだ秋なのに、まだ熱い_________

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