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韓国大統領選連載①ーYouTubeー

韓国大統領選の投開票まであと2週間ほどを切りました。直前連載として「ユーチューブ」「ジェンダー対立」「86世代」をテーマに原稿書いたので、一部紹介します。1回目の「ユーチューブ」、全文は以下のサイト(有料会員記事)です。

https://www.sankei.com/article/20220222-INPFUWTPFZNLJG4IJH3EZ4BPDE/

東京の代官山にもたとえられるソウル・江南地区の人気スポット「街路樹通り(カロスギル)」。高級ブティックが立ち並ぶ一角に、「史上最低の選挙戦」と言われる今回の大統領選の「震源地」がある。

チャンネル登録者数が80万人を超えるユーチューブ放送局「カロセロ研究所(カセ研)」は、報道内容をめぐって絶えず告訴・告発を受け、警察当局による身柄拘束や放送の一時停止処分なども経験してきた。弁護士資格を持つ所長の康容碩は「われわれにはタレコミの真贋を見極める力がある。当事者への事実確認はしない」と言い放つ。
「報道機関ではなく、総合娯楽番組を制作している」とうそぶくカセ研だが、今回の選挙戦では、与党「共に民主党」候補の李在明陣営を攻撃する中心的な役割を担ってきた。李が義姉を罵倒する通話記録の集中報道、与党の女性選対委員長を辞職に追い込んだ男性問題の特ダネ…。新聞やテレビは、カセ研の引用報道に追われた。

カセヨン9

今回は保守系ユーチューブ番組ののカロセロ研究所を訪ねました。驚いたのは、スタッフが若いこと。写真手前の放送作家の女性2人は20代でした。カロスギルという立地も、「優秀な人材を集めるために必要だ」とのこと。おじさんたちが集まっているような印象のある日本の時事系ユーチューブとの差を感じました。

20220207カロスギルカレー

取材と、生放送現場の写真撮影の合間に時間があったので、近所のオシャレそうなカレー屋さんに入った後、ゴディバ直営の喫茶店で優雅にメモ打ちしてました。

20220207ごでぃば

余談ですが、取材の中で「尹錫悦が勝利し政権交代が実現すれば、保守系ユーチューバーは絶滅する」と予言していたのが印象的でした。テレビなどが政権にすり寄って右寄りになれば、保守系ユーチューブが存在感を失うとみているのだそうです。

前大統領、朴槿恵の弾劾罷免を受けた2017年の前回大統領選と比べ、今回は「ユーチューブ本格普及後の初の大統領選」と位置づけられる。政策論争が姿を消し、候補者本人や家族、陣営幹部らへの個人攻撃が報道の大半を占める状況を生み出したといえるのが、保革それぞれの党派性を帯びたユーチューブ番組だ。
韓国では朴の問題が発覚した当時、政権批判一色となった新聞・テレビ報道に不満を持った保守系支持層の受け皿となる形で、ユーチューブ報道が広がり始めた。一方、文在寅政権発足後には当時の法相、曺国の家族をめぐるスキャンダル報道などに不満を抱いた与党支持者らの間でも、既存メディアへの不信感が拡大。双方の「報道離れ」が進んだ結果、信頼できるメディア媒体に関する世論調査では20年、ユーチューブが首位に躍り出た。

保守系の「神の一手」や「ペンアンドマイク」、革新系の柳時敏がやっていた「アリレオ」など、今回は存在感がないですね。栄枯盛衰が激しい業界だなと感じます。

 中道系野党議員の元秘書、裵剛熏(25)は、2月初旬の旧正月に親族が集まった食卓でのやり取りに衝撃を受けた。「盧武鉉を殺した男だ」。前検事総長で最大野党「国民の力」候補の尹錫悦の動静を伝えるテレビに目をやりながら祖父がこうつぶやくと、他の家族もうなずいた。

韓国左派のカリスマだった元大統領、盧が最高検の捜査を受けて年に自殺した件をめぐり、左派系ユーチューブでは尹が苛烈な捜査を主導したからだとする責任論が広がっている。実際には、尹は当時地方検察庁に勤務しており、捜査への関与はほとんどなかった。「繰り返し同じような報道に接し、周囲に反論する人もいない。祖父も親族も、誰も疑問を抱かないのだろう」。裵はそう言ってため息をついた。

本当は第2回のフェミニズムや、第3回の世代問題のために話を聞いた若者でしたが、このエピソードが面白かったので第1回に回しました。

 真偽はともかく、泡(バブル)に包まれたように自分の興味のある、もしくは政治志向にマッチした情報しか見えなくなる「フィルターバブル」現象。保革支持層で情報が断絶する事態に加担する役割を担う「共犯者」が、実は大手メディアだ。
 新聞購読者などが少なく、日本のヤフーニュースのようなポータルサイト経由でニュースに接する人の割合が世界で最も高い韓国では、記事の閲覧回数が売り上げに直結する。「クリック商売」とも呼ばれ、大手新聞社なども刺激的なユーチューブ報道を競って転電する。

 このへんの話は、2年前に書いた「韓国メディアの苦悩」連載でも取り上げました(https://www.sankei.com/article/20200105-54X5CHPAMZKBHGUPLOL5AWVLQ4/)。ネット移行の弊害が出ている韓国と、移行自体がなかなか進まない日本。今後どうなるか、引き続き関心を持って取材しようと思います。

30代の経済紙記者は、新型コロナウイルスの影響を挙げる。省庁や企業の記者室が閉鎖され在宅勤務が続く中、「必然的にネット上の話題を取り上げることが増えるし、照会数が多ければ社内でも評価される」という。
ユーチューブに存在感を奪われた現状に、地上波の大手放送局幹部からも恨み節が漏れる。この放送局では候補者と酒を酌み交わしながら本音に迫る番組制作を進めたが、主要候補の一人が消極的だったために企画は立ち消えになった。「われわれだけ『中立』というかせをはめられ、ユーチューブ番組は一方的な報道を自由に行う現状が、社会のためになっているのか」。幹部は憤りを隠さない。

タクシーに乗ると運ちゃんがみんなユーチューブ見てて、陰謀論などを熱弁してくるのが気になり、一度まとめてみたかったテーマでした。もちろんユーチューブは付き合い方次第で、よい情報ツールであるとは思うのですが。


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