研究書評



2024年4月11日分

IR推進会議取りまとめ(概要) 〜「観光先進国」の実現に向けて〜
首相官邸ホームページ

〈内容総括・選択理由〉
今回取り上げた文献は、首相官邸ホームページに記載されているIR推進会議とりまとめで、特定複合観光施設区域整備推進本部事務局が出した文献である。現在日本では、公共政策の一部として日本へのIRの誘致を押し進めている。この文献ではIRの定義に触れながら、諸外国におけるIRのコンテンツや現状、公共政策としての日本型のIRのありかたや具体的な内容を説明している。自分自身の研究テーマとして、パチンコ文化の再興があり、その手段としてIRが有効だと考えた。そこでIRについての理解を深め、パチンコ店を誘致する余地があるのか、効果的なのか、というのを判断したかったことが文献の主な選択理由である。

〈内容〉
まず、IR(統合型リゾート:Integrated Resort)とは、「観光振興に寄与する諸施設」と「カジノ施設」とが⼀体となっている施設群である。またIRの特長として、カジノの収益により、⼤規模な投資を伴う施設の採算性を担保していたり、民間事業者の投資によって成り立っていたりする。利点としては集客及び収益を通じた観光地域振興が可能であり、新たな財政への貢献がみこめるというものがある。参考に、シンガポールのIRは、ホテル、カジノ、ショッピングモールのほか、高級ブランド店、レストランのパビリオンや、美術館、博物館、会議場、展示場、多目的広場、展望プールなど様々な施設が集まっている。諸外国のIRでは、民間ならではの自由な発想によりカジノ収益を活用して、昼夜を問わずビジネスからファミリーまで、上質なものから手軽なものまで、幅広いコンテンツが提供されている。これに加えて、日本型IRの構想では様々な日本の魅力を体験してもらい、思い立ったら気軽に日本各地へ行ってもらえるようなものである。これらを通じて日本各地における新たな観光ビジネスのモデルの確率を目指している。つづいては諸外国のIRの現状についてである。諸外国が提供しているコンテンツとして民間事業者を通じた国際的、魅力的なもの、家族も一緒に楽しめるコンテンツ等がある。例えば、世界最先端のショービジネスや、一流アーティストのコンサート、世界最高峰のスポーツイベント等がIRの施設内で開催されている。
続いて、日本ではIRをめぐって平成28年に特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律の概要が明示されている。IRを実現するために、目的や基本理念など、総合して10の項目が明示されていた。目的については、観光や地域経済の振興があり、それだけでなく財政の改善等もある。法律上の措置等の項目では、基本方針が示されており、カジノ施設の設置及び運営に関する規制について触れられていた。これは、ギャンブル依存症等の悪影響防⽌措置などを指し、カジノ施設における不正⾏為の防⽌並びにカジノ施設の設置及び運営に伴う有害な 影響の排除を適切に⾏う観点からの措置であるといえる。また、観光地産業の強化や地域経済の振興を主としている。これらのことから、IRではおもにカジノを通してそれらに付随する観光場所の振興が目的となっていることがわかる。日本におけるIR導入に関する根本原則は、単なるカジノ解禁ではなく、また、IR事業を認めるだけのものでもなく、新たな観光資源を想像するものでなければならない。日本型IRの具体的な内容としては、IR区域1つにつき1つのIR施設で1つのIR事業者が設置運営するものとしている。IR事業者カジノ事業を含めたIR事業全体を所有・経営・運営する⼀体性が確保された事業形態が原則とある。

〈総評〉
 今回、文献の選択理由として挙げた「パチンコ店を誘致する余地があるのか、効果的なのか」について、IRの定義、内容を深く知ることで確認することができたと考える。IR目的としては、観光地産業の側面がある。一方パチンコも日本独自の文化であるため、観光地産業の活性化には寄与するだろう。時折、外国人観光客が、パチンコのホールに足を運ぶ様子を見る。しかし、IR導入に関する根本原則には1つのIR区域に1つのIR施設、IR事業者がIR事業全体を経営、運営するとされていることから、運営の観点でパチンコ店を併設することが難しいと考えた。今後はパチンコの営業に関する法律を調べることで、IRに併設する以外の新たな手法を見つける手掛かりにしたいと考えている。


2024年4月18日分

鈴木 紫(20 19)「日本のインバウンド観光による経済効果」経営論集 第 29 巻第 1 号 2019 年 57–73 頁

〈内容総括・選択理由〉
今回取り上げた文献は、経営論集 第 29 巻第 1 号 2019 年 57–73 頁の日本のインバウンド観光による経済効果である。この論文では、近年の日本のインバウンドに関する政策やインバウンド観光の変化を概観するとともに、インバウンド需要の決定要因の実証的検証を行った。2010年以降、訪日外国人旅行者が年々急増する中で、インバウンド需要はどのように変化してきたのか、またその需要はどのような要因に影響を受けているのか計量的に分析している。IRでパチンコ業界を再興することは一度考え直すことにしたが、インバウンドでの再興は可能だと考えており、その妥当性を見出すことが、文献の主な選択理由である。

〈内容〉
国連世界観光機関(UNWTO)によると、国際観光客数は、世界全体で2017年には13億2,200万人にも達し、年々増加傾向にある。近年、日本の外国人訪問者数も急速に増加し、2018年には3,000万人を超えた。さらに、世界各国・地域別に外国人訪問者数をみると、日本は、2010年には、世界で16位、アジアで6位であったが、2018年には世界で11位、アジアで4位となり、日本政府が目指している観光立国の地位を築きつつあるとしている。続いて訪日外国人旅行者の動向については、年々増加する傾向にあるとしており、インバウンドという用語も一般的となり、訪日外国人旅行者が日本経済に与える効果も年々増大しているとしている。地域別の訪日外国人旅行者については、2018年段階でアジアが87%と大多数を占めていることがわかった。続いて外国人旅行者の旅行者数、消費額についてである。論文で算出された値によると、観光目的消費額は知名度が高い都道府県に依存する傾向にあると同時に、スポーツ、レクリエーション、温泉、都市型観光地の拠点数による経済効果が、自然、歴史、文化の拠点数による効果よりも多いということが分かった。宿泊者数ではスポーツ、レクリエーションのほかに温泉が拠点数における作用が高いということが分かった。続いて、観光政策がインバウンド需要に与える効果について述べられている。本論文での算出結果では、観光予算が大きい、すなわち、観光施策に注力している都道府県ほど、インバウンド消費額がより大きいものとなっているといえる。実証分析結果は、都道府県レベルで、訪日外国人旅行者数、訪日外国人旅行者の消費額というインバウンド需要を高めるために、どのような観光政策を採るべきかという指針となるとし、観光予算がインバウンド需要を促すという統計的有意な実証結果は、各都道府県における観光政策の成果を表している。

〈総評〉
今回、文献の選択理由として挙げた「インバウンドでのパチンコの再興」について、旅行客の観光拠点数における分布をみると十分に可能なのではないかと考えた。IRにも言えることだが、カジノをベースとした観光地を作ることを日本としても押し進めているため、パチンコ店を観光資産としてみることも十分考えられるからである。また、レクリエーションの経済効果が高いと算出したデータでもわかることから、パチンコ本来の強みである楽しさという点でも外国人観光客を集めることができるといえるだろう。今後はパチンコ店の観光資源としての活用について調べていくとともに、それ以外での再興の余地、風営法等の法律との兼ね合いについても学んでいこうと考える。

2024年4月25日分


早野 慎吾 パチンコ宣伝広告とギャンブル依存症に関する研究-パチンコ宣伝広告のあおり表現の効果- 都留文科大学研究紀要 第90集 (2019年10月)

〈内容総括・選択理由〉
取り上げた文献は、パチンコ宣伝広告とギャンブル依存症に関する研究である。この論文では、パチンコ店の宣伝広告のあおり表現の効果という観点からギャンブル依存症について取り上げている。いままでインバウンドでのパチンコ再興、そしてそれらが生み出す効果について考えるため、論文を読んでいたが、一度それらが生むデメリットについても知識を深める必要があると考え、この論文を選択した。また、ギャンブル依存症の問題点についても再確認しておくべきだと考え、選択した。

〈内容〉
近年、ギャンブル依存症が問題化されている。平成29年に日本医療研究開発機構が行った国内のギャンブル等依存に関する疫学調査の中間報告が行われた。これは、全国300地点、無作為抽出法により抽出した調査対象者10000名に行なわれた調査である。なお、有効回答数は4685名であった。その結果、ギャンブル依存症が疑われるものの割合は3.6%で、その約8割がパチンコ、パチスロに最も多くのお金を使っていたことが分かったとしている。ギャンブルとは金銭、品物をかけて勝負を行う遊戯であるが、日本で公的に認められているのは、公営競技(競馬、競艇、競輪、オートレース)と富くじ(宝くじ、ロトなど)そして風営法上「遊技」に分類されている賭け事類似行為(パチンコなど)である。公営競技とパチンコのギャンブル性の違いについて、①店舗数が多いこと②ほぼ毎日営業していること③払い戻しを店舗で調整できることの3つであるとしていた。主に③の要因から警察庁によるパチンコの宣伝広告規制につながっていると考えられると述べていた。
続いて払い戻し率とあおり表現についてであるが、そもそも払い戻し率というのは遊技者の勝ちやすさを意味している。公営競技では払い戻し率が法的に定められており主催者が調整することはできない。仮に主催者がどれだけイベントを宣伝したとしても、勝ちやすくなることはなく、法律にのっとって規定額が払い戻されるだけである。宝くじなどでも、あおり表現という観点ではかなりあおっている部類であるが、払い戻し率はかわらない。それらのギャンブルに対し、パチンコでは釘の調整や、設定において払い戻し率を調整ができるため、客が勝ちやすくすることもできる。これにより、特別な日と印象づけるような広告を打ち出すことで、払い戻し率が多い人認識させることも可能である。これらがギャンブル依存率を挙げてしまう要因になっていると述べている。
続いてギャンブル依存症とパチンコのゲーム性について考察している。パチンコに限らずギャンブルには報酬効果があるため繰り返されるといわれている。これがパチンコ規制の根拠となる射幸性をそそると呼ばれる現象である。パチンコ宣伝広告が報酬効果を著しく刺激するので規制するというのである。宝くじは高額当選確率が低く、現実的に高額当選を期待することはできない。しかしパチンコは高額ではないが、払い戻しの調整をできることで現実的な価値を期待するのである。めったに当たらないが当たると大きい宝くじと、一回で獲得できる金額は少ないが状況を見極めれば勝率を高められるパチンコでは射幸性の種類が異なると述べた。ギャンブル依存症の大きな問題点は、ギャンブルによる借金などの問題行動に結びついてしまうことであるとしており、研究によると、ギャンブルが原因で借金をしてしまった総額は570万円で、そのうち90%はパチンコ、パチスロであることが分かった。まとめると、パチンコの依存率を高めてしまう要因として射幸性がそそられることにあり、それらを引き起こすのは主に、露骨な広告の打ち出し方である。またこれらが要因になって借金などの問題を引き起こしている。

〈総評〉
 今回、文献の選択理由として挙げた「パチンコ再興によるデメリットについて知識を深める」についてだが、デメリットを知るだけでなく、そこに至るまでの原因のようなものも同時に知ることができた。パチンコ再興の裏にあるデメリット、そのメカニズムを知ることで、それらを緩和しながらの再興策を練ることができると感じたため、とても参考になったと考える。今後は現実的な再興策を練るために、再興につながるようなイベント、企画についての知識を得ていきたいと考えている。

2024年5月2日分


鍛冶博之「パチンコホール業界における経営改革の抑制要因」The Social Science(The Social Sciences)号 80, p. 59-84

〈内容総括・選択理由〉
取り上げた文献は、パチンコホール業界における経営改革の抑制要因についてである。前回は広告によるパチンコ店の制限について取り上げたため、今回はパチンコ店の経営改革が全国に浸透していない現状を研究した論文を選択した。この問題の諸要因を探ることで、それらを改善した策を作っていく知識をつけることが文献の主な選択理由である。

〈内容〉
この論文では初めにパチンコホール業界において経営改革が十分に実行されていないという事実に着目している。ここでいう経営改革とは、客がパチンコにのめりこみすぎ、借金を抱えて生活破綻するような現状を解決するために、遊戯機の射幸性に依存した経営方針を改善するというものである。現在でのホール企業では従来のホールの主要顧客であった中高年男性だけでなく女性や若年者も視野に入れ, 低射幸性を追求した遊技機の設置をはじめとするホール内設備環境の拡充、また社員やアルバイトへの人材教育による人的サービスの向上などに力を注いでいるとしており、これはパチンコ業界全体の健全化を進めるための行動である。このようなホール企業による経営改革は、株式会社マルハン、株式会社ダイナム、株式会社ピーアークなど、改革推進の先進的企業が本格的に取組み始め、これらは結果として営業業績を向上させることに結びついた。しかし、経営改革の重要性を認識しそれを実行しているのは一部のホール企業に限られているという。
続いて、経営改革が浸透していない諸要因について、ホール企業、業界全般、遊技者の三つの視点から論じている。まず初めにホールからの視点である。先ほど述べた三社には、経営改革の初期段階において、パチンコ業界全体に対する社会的評価を向上させるという目標がみられたという。それによって社員との改革意識の共有を実現し、実行に至っているとした。しかし、ホール企業経営者がすべて同じ考えを持っているとはいえず、遊技機、釘調整、換金さえあれば営業ができることから、業界全体の健全化に注視することなく今も営業しているという。
続いてパチンコ業界の改革意識の問題がある。ホール業界だけにとどまらず、パチンコ業界全体を健全化させていくためには、ホール企業によって展開される個別企業による経営改革だけでは不充分であるとしている。 ホール企業が単独で経営改革を展開し続けたとしても、その効果は限定的なものにならざるを得ない。 経営改革の枠を超え、「業界改革」 にまで拡大させていくためには、ホール企業間だけでなく、パチンコ業界を構成するあらゆる諸組織との結束を強化させ, 健全化に向けて共同で取組む必要がある。 さらにホール経営が風俗営業適正化法の下で風俗営業に位置付けられていることから、警察や行政を含めたパチンコ業界の外部組織との連携を深め、パチンコ業界の内部と外部の両方からの働きかけによって業界改革を推進していかなくてはならないし、そうでなければこれらが実現されることはないという。しかし, これらの連携が必ずしもうまくなされているわけではなく、 そのことがホール業界の経営改革、さらにはパチンコ業界における業界改革を妨げる一要因になっているとした。最後に遊技者の要因である。遊技者にはホールに求めるサービスという点で課題があるとしている。昨今のホール企業では、経営改革のもとで付随的サービスの充実に尽力し, パチンコという遊技の付加価値を高めるためのさまざまなマーケティングを模索している。 しかし問題となるのは、こうしたホール企業の取組みが遊技者のニーズを充足して顧客満足度を高めることに結びついているのかということであるという。この問題に対し論文では、遊技者にとっての一番のニーズとは、どれだけ勝てるのかということに尽きるとしている。遊技者の中にはこの換金という中核サービスさえ達成できているのであれば、経営改革に付随する業界の健全化を必要としないというものもいるといっており、これを考慮した結果、ホール経営において必ずしも経営改革が必要であるとはいえないと考えるホール企業が存在しているという。

〈総評〉
 今回、文献の選択理由として経営改革が浸透していない原因を知るということを言ったが、主に遊技者の求めるニーズが業界を健全化して満たせるものでないというギャップがこの問題を生み出していると考えた。業界全体の健全化は自分が考える策では切っても切れない関係にあると考えているので、ここで遊技者の視点の考えは参考になったと考える。今後は再興策のほかに、パチンコ業界に対しての社会認識を向上させるための、業界の健全化を押し進められるような策も考えていきたいと考えた。


2024年5月16日分


金 紀彦(2019)パチンコホール経営会社による社会的提供価値についての考察〜パチンコ産業の将来像とその展望〜

〈内容総括・選択理由〉
取り上げた文献は、パチンコホール経営会社による社会的提供価値についての考察である。今まではパチンコ店が社会にどのような影響を与えてきたのかを研究してきた。今回は、現在のパチンコ店が経営によってどのような価値を提供しているのかということを知るためにこの文献を選択した。

〈内容〉
この論文では最初にパチンコ業界の現状について説明している。パチンコの参加人数は年々減少しており、1995 年に 2900 万人であったパチンコ参加人数は、上下の推移はあるものの、全体的には継続的に減少し、2017 年には 900 万人に減少したという。これについて、機械の射幸性が上昇し、手軽に遊技できなくなる状況の中、インターネットや携帯電話も含めた娯楽の多様化が進んだため、パチンコへの依存度が低下したことが最大の要因であると思われるとした。一方、年間平均活動回数は、上下はあるものの、微増しているという。これらの結果をもって、一定数のパチンコファンは存在しており、むしろ、パチンコ産業は、定期的に一定回数以上、遊技を楽しむヘビーユーザーに支えられている状況がわかるとした。
続いて、パチンコホールの経営会社の経営課題について触れられている。パチンコは、戦後、各地域に多くの中小ホールが誕生し、発展していった。ギャンブル性を有する風俗営業であり、店舗側も顧客も荒っぽい言動をとる者が多かったこともあり、パチンコ業界に対するイメージは決して良くなかったという。そのような状況の中で、経営理念といった点に注目するような会社は、ほとんど見られなかった。しかし、大手および中規模のパチンコホール会社が現れるにつれて、経営理念が注目され、その策定を行う企業が増えていった。例として株式会社マルハンについて挙げている。株式会社マルハンは、1997 年、パチンコ業界を変えるという取組を継続し、さらに進めるためには従業員の意識や考え方、目指すべき方向を一つにして共有することが必要であるとして、マルハンイズムを策定したという。マルハンイズムは、(1)経営理念:基本的な経営指針や存在価値を示す。(2)ビジョン:経営理念に基づいて目指す企業像を示す。(3)企業姿勢:社会に対する企業全体の取り組み方を表す。(4)提供価値:事業活動を通して顧客に届けるものを示す。(5)組織理念:チームとして成果を出すために重要な考え方を示す。(6)行動指針:従業員の行動規範を記す。(7)社訓:心構えを示す。以上7項目で構成されているという。経営理念の改善のほかに、人材教育という面からも課題解決に取り組んでいるとしている。以前までは先ほど述べたような気性の荒さであったり遊技機の音であったりで環境がいいと言えないことから優れた人材を確保することが難しかった。しかしながら、パチンコ産業が巨大化し、また、パチンコホール経営会社の間の差別化要因も少なくなっていったところ、1990 年代前半頃から、株式会社マルハンや株式会社ダイナムなどは、顧客満足度を重視し、パチンコホールをサービス業として位置付け、人材確保および人材教育に力を入れた。顧客の趣向としても、単に出玉を期待できる店舗に行くよりは、快適な環境や優れたサービスを受けられる店舗を選択するようになり、パチンコホール経営会社における人材確保および人材教育の重要性が高まったという。現在、いずれのパチンコホール経営会社においても人材確保および人材教育の重要性が認識されており、様々な取組を行っている。また、大手パチンコホール経営会社を中心に、他業種との比較においても遜色ない労働条件を提示しており、一流大学を卒業した新卒者を採用するなどしている。また、社員に対する人材教育を継続的に行い、経営理念の浸透と社員の能力向上を図っているパチンコホール経営企業も多く存在する。もっとも、業界に対するマイナスイメージは根強く、人材確保および人材教育は、引き続き、パチンコ業界の課題であるとした。
続いてパチンコホール経営会社による地方経済の活性化について触れている。現状、パチンコ店では、風俗営業適正化法の規制の下、新業態が生まれにくい。しかし、施設を複合することでその改善が見込めるのではないかとしている。親和性がある業種として、ホームセンターが挙げられる。ホームセンターは、30 歳代から 50 歳代くらいの顧客が多く、この層は、パチンコの顧客も重なる部分がある。また、都道府県の各都市計画に基づく指導によって、パチンコホールは一定の駐車場数を確保する必要があるところ、ホームセンターも広い駐車場を設置して大きな商品を買う買い物客の利便性を高める必要があることから、両者を併存させる取組が見られる。また、地方において、広い駐車場を持ち、交通の便が良い複合施設は、人々の娯楽の場や集いの場になっている。そこで、映画館やボウリング場、ゲームセンター、入浴施設、小売量販店、飲食店などと同じ建物または同じ敷地にパチンコホールを併設することが見られる。娯楽の少ない地方において、複合商業施設を設けることによって、楽しさを求める顧客を誘引し、集客の相乗効果を生むことができるとした。しかしパチンコ施設へのマイナスイメージから事業の展開が限られるということである。
最後に、パチンコ店の社会的意義である。本研究の仮説として身近な消費レジャーとしての社会的価値を提供できるというものと、経営資源の転用によって、パチンコホール経営会社は新業態または新規事業を創造し、地方経済の活性化に寄与することができる。という二つを挙げていたが、先行研究が乏しいこと、インタビュー中心の分析になってしまっていることから仮説が立証できているかわからないとのことだった。

〈総評〉
 今回、文献の選択理由として挙げた「パチンコ店の社会的価値について知る」ということついて、説の立証は断言できていなかったが、レジャー施設としての提供価値、地方経済活性化という社会的価値があるという観点は自分の考えに非常に近い仮説であると考えた。これらの仮説をもとに政策を提言できるように研究を進めていきたいと考える。


2024年5月23日分


「ゲーム」としてのパチンコに関する検討 : 演出の変遷を中心に

福井 弘教 REPLAYING JAPAN 巻 5, p. 161-172, 発行日 2023-03

〈内容総括・選択理由〉
今回取り上げた文献はゲームとしてのパチンコに関する検討である。中間発表でもらった感想を踏まえ、ギャンブル要素を減らした形での活性化案について研究しようと考えた。また、活性化についてより具体的に定義するべきだと考えたため、現段階で活性化とは「パチンコが世間に浸透していくこと」とする。つまり、パチンコホールの業績を上げるための研究ではなく、パチンコそのものが世間に認められていくために何ができるかという方向で研究していくことにする。ギャンブルとしてのパチンコではなく、遊びとしてのパチンコがどのようなものであるかを理解することがこの文献の選択理由である。

〈内容〉
冒頭では、パチンコにおけるゲーム性がどこにあるのかについてカジノとの違いについて触れながら分析されている。カジノにおけるゲーム性はトランプを介したブラックジャックやポーカーなど、ディーラーとの駆け引きを通じて参加者自身が結果に直接関与するところにゲーム性があるとしている。対してパチンコにおけるゲーム性は時代ごとに変容しているとした。
次に筆者は昭和後期から平成初期の機種動向について考察している。昭和後期の段階ですでに現代のパチンコの基礎となるような仕組みができており、大きく分けて「羽モノ」と「デジパチ」の二つがあるとした。羽モノのゲームフローは、打ち出した玉がチャッカー入ることでVゾーンが開く。その開いたVゾーンに規定回数玉を入れることで規定量の玉が支払いだされるというものである。対してデジパチのゲームフローは羽モノと全く違うゲームフローとなっている。チャッカーに玉を入れるところまでは同じだが、玉が払い出されるまでの流れが違う。デジパチには大当たり確率というものがあり、チャッカーに玉が入ることで抽選され、絵柄や数字がそろえば当選となる。当選していた場合のみVゾーンが開き、規定時間たつとVゾーンは閉じてしまう。その間に玉を入れることができなければ当たりが終了してしまう。Vゾーンに玉を入れ続けないと当たりが終了してしまう点や大当たりに確率を採用した点が羽モノとは異なっているとした。絵柄や数字がそろうと大当たりという概念は、現代パチンコの礎を築いたとしている。しかし、この時代におけるゲーム性は玉そのものの動きにあり、チャッカーに玉が入るか、Vゾーンに玉を入れ続けることができるかということが重要視されていたといえる。
続いて現代の機種動向について筆者は分析している。現代のパチンコ台では、昭和で主流だったアナログな絵柄、数字の表示の仕方(絵柄や数字を印字してそれを回転させることで揃ったり揃わなかったりなどの演出をしていた)から、液晶を通じて絵柄、数字を表示するようになっていたり、アニメ、漫画、ゲーム、歌手や俳優などの芸能人、韓流ドラマなどいろいろなコンテンツとのタイアップが実現しているとした。ゲームフローは昭和後期のデジパチと大きな差はなく、チャッカーに玉を入れることで抽選され、その抽選結果が液晶に反映される。当選した場合は絵柄、数字が揃ってVゾーンが開き、玉を通すことで大当たりとなる。変わった要素はVゾーンに玉がほぼ確実に入るようになったことである。またゲーム性も大きく変わっている。昭和後期のゲーム性は玉がチャッカーやVゾーンに入るかにあったが、現代は抽選の演出にあるとした。抽選の演出とは、絵柄や数字が揃うまでの過程を指す。アニメとタイアップしたパチンコ台で例えると、アニメの主人公が敵を倒すと絵柄、数字がそろうといったものなどである。チャッカーに玉が入った段階で内部的には抽選は終了し、当落も決定している。しかし、それを告知するまでにパチンコ台に備わったボタンを押させたり、タイアップした作品のストーリーを使ったりすることで抽選がゲーム性を持つようになったとした。

〈総評〉
今回、文献の選択理由として上げたパチンコの遊びとしての側面を知るということについて、考えを深められたと感じている。また、ギャンブル要素を抜いたとしても現代におけるパチンコのゲーム性というのは面白いものであると考えた。今後は、パチンコがどのようにすれば世間に浸透していくか考えていこうと思う。現段階では、若年層に興味を持ってもらう、外国人に遊んでもらうなどがカギになってくると考えているが、根本がギャンブルである以上社会的意義が見つけづらいため、これも課題にしたい。

2024年5月30日分


余 湘萍(2023)  「ソーシャルメディア時代におけるクールジャパンの展開」──中国におけるアニメツーリズムの受容とインバウンド観光発展の可能性── 国研紀要161:79‒109

〈内容総括・選択理由〉
取り上げた文献は、ソーシャルメディア時代におけるクールジャパンの展開についてである。2010年ごろから日本の国家戦略へと変身するようになったクールジャパンについて、中国における展開、および中国人観光客のインバウンド観光発展の可能性を明らかにしている。クールジャパン戦略はコンテンツの輸出を通して海外で収益をあげ、インバウンド観光客の誘致で日本の経済成長を目指している。かつて世界中で日本文化ブームを巻き起こしたクールジャパンは、日本政府の主導のもとで海外でどう展開しているのか。また、クールジャパンをもとに、日本のパチンコ産業がインバウンドにいい影響を与える余地があるのかを推しはかるためにこの文献を選んだ。

〈内容〉
本文では初めにクールジャパン戦略の概要を説明している。クールジャパンの戦略は主に①情報発信(日本ブーム創出)②海外展開(海外で稼ぐ)③インバウンド振興(国内で稼ぐ)の3つの領域で展開されているという。政府主導による政策として力点を置いているのは海外への販路開拓と、それをレバレッジにしたインバウンド観光である。この成功事例となるのが2016年に上映されたアニメ映画、「君の名は。」であるという。この映画の最終興行収入は250.3億円、全世界で414.4億円に達し、世界規模でヒットとなった。これをはじめとするアニメ作品のヒットによりアニメの「聖地巡礼」(アニメツーリズム)が盛んになったという。これが熱心なアニメファン以外に浸透していくことで、日本のポップカルチャーの輸出、訪日観光誘致をゴールとするクールジャパン政策に深くつながっているとした。JNTOによると、訪日外国人旅行者数は2012年の835万人から2019年の3188万人まで増加し、3.8倍増加しているという。その中で2019年の中国人観光客者は1000万であり、約三分の一を中国人が占めているとした。

続いて中国におけるアニメツーリズムの受容に関して、アニメの受容、ソーシャルメディアの発達、アニメツーリズムの進出と展開という3つの項目で論じている。アニメの受容について、日本アニメは1980年代から徐々に中国に紹介されるようになったという。1990年代に入ると、「聖闘士星矢」をはじめとする日本の人気アニメが続々と流入し、浸透していったという。1980年代に生まれた世代は物心つく前から日本のアニメに接していたため、影響を強く受けたという。自国のアニメ産業を守るため、外国製アニメの放映を制限されるようになるが、中国内の民間翻訳グループにより違法ではあるが中国全土に日本アニメは普及されるようになる。その結果、中国において日本アニメが受容されるようになったという。ソーシャルメディアについては、先に述べた中国内の民間企業が衰退したのち、個人によってアニメに関する情報が発信されるようになり、それが日本のアニメツーリズムの推進力に変わったとした。続いてアニメツーリズムの進出と発展であるが、アニメツーリズムは最初中国国内のウェブサイトを通じて中国に紹介されたという。たとえば「けいおん!」のラッピング電車についての記事などである。これらを契機としてアニメツーリズムの情報や旅行記が掲載されるようになったという。中国アニメファンが本格的にアニメツーリズムに参加するようになったのは、2013年ごろであり、主にオンラインとオフライン二つのパターンがあり、オンラインではWeiboなどのメディアプラットフォームでのリツイートやコメント、オフラインとしてはツーリストとして実際にアニメ聖地を訪れるというものである。現在ではインターネットやデジタル技術の成長により中国のアニメ市場は念を追って拡大しているという。続いて中国インバウンドの可能性に述べられており、2020年からのコロナ渦により止まってしまった訪日観光を再び活性化させることができるのかを軸に論じられていた。まず、中国人観光客の傾向を分析している。JNTOの2015年から2019年のデータによると、個人旅行の増加、リピーターの増加、一人当たりの購買支出の減少という3つの傾向がみられるとした。これらの傾向を分析すると、ここ数年間の中国人観光客は団体ツアーより個人の興味や関心がある場所を訪れる少人数の体験型の観光を求める傾向が強まり、日本のブランド品や贅沢品より地元での文化や伝統の経験が重視される、つまり「モノ消費」から「コト消費」へシフトしているとした。アニメツーリズムにおいては、中国のアニメ産業を鑑みるにファンのニーズを満たすには至っておらず、日本でのアニメツーリズムに関心を向けていると考えられるとした。インバウンド誘致にあたっての過大についても述べられており、ソーシャルメディアの違いから情報の伝達が難しいことや地方における言語対応が未熟であることなどを挙げていた。

〈総評〉
今回、文献の選択理由として挙げた「パチンコがインバウンドにいい影響を与えるのか」について、中国におけるアニメツーリズムの現状をもとに推しはかることができると考えている。中国が日本のアニメ産業と親和性があるということ、中国人観光客の求めているものが物から経験に変わってきていることから、アニメとタイアップしているパチンコも中国人観光客に受け入れられるのではないかと考えた。また、パチンコは日本独自の文化であるため、経験という面でも中国人観光客のニーズに応えられているように感じた。課題としてはパチンコの政策において規制などが多く、日本文化として推している背景がないことがある。この状態での政策提言は難しいと感じており、インバウンドという方向で論文の執筆にしていく場合、現状の分析を主軸としたものを制作していきたいと考えている。今後はインバウンドそのものの知見を深めつつ、なぜ今までパチンコのインバウンド化が進まなかったかについても並行して分析していこうと考えている。

2024年6月6日分


鍛冶 博之 (2014)「日本におけるパチンコの誕生・普及・影響」

〈内容総括・選択理由〉
取り上げた文献は、日本におけるパチンコの誕生、普及、影響である。ここでは、日本における代表的なレジャーであるパチンコを取り上げており、日本社会で普及した背景、(海外で普及していない背景)、ランドマーク商品としての可能性を考察している。章序盤では主にパチンコの産業史の動向について考察しており、後半の章ではパチンコが日本で普及した理由、海外で普及していない理由について考察していた。パチンコが海外で普及していない理由を探り、日本でのインバウンドにも貢献できない理由なのかを精査するのがこの論文の選択理由である。

〈内容〉
まず初めに、遊技機の起源について触れられているが、そもそも、パチンコの起源や誕生に関する史実は十分に解明されていないとした。要因として、もともと四季を通じて、短期間かつ限られた場所(縁日の露店など)で遊ばれていたため記録に残りにくかったこと、このような営業にかかわっていたものはなくなっている場合が多いこと、創業当時の記録が業界に残っておらず、先駆者の過去の記憶による伝承に頼らざるを得なかったからだとしている。パチンコが日本に誕生する以前には、遊技機に類似した遊具として玉転がしがあり、明治時代に流行したとのことだった。パチンコの起源としてはヨーロッパのウォールマシンが発展したという説の可能性が高く、営業形態は欧米のコリントゲームに由来しているという。パチンコが日本で広がり始めたのは大正末期から昭和初期にかけてであるとしており、もともとは子供が楽しむレジャーとして広がりを見せた。大阪、名古屋、金沢などでは露天商が、遊技球が入賞口に入ると、駄菓子をもらえるといった商売をするものであったという。その後、1920年ごろから大阪を中心に遊技機開発が本格化していき、1930年代になると遊技機メーカーが登場し、遊技機の市場投入が進行していったという。1930年に愛知県警保安課が特定の人物にパチンコ遊技場としての営業許可を与えた。これを機にパチンコは大人の娯楽として全国に拡大していった。ただし、当時のパチンコは18歳以下でもパチンコができたため、子供の需要も少なくなかったという。鋼球式パチンコは1936年に登場し、常設店舗による営業が本格化した。1937年に日中戦争が勃発したことを機に、営業が禁止され、1945年まで産業は停滞した。終戦を迎えたのち、早い段階で再興した。終戦後から今日のパチンコは、法的管理下に置かれたレジャーとなったという。1980年代になると、不正操作が施された遊技機が出現し、各県警での取り締まりが限界に達した背景から、1985年に風営営業適正化法が施行され、パチンコ店に対する統一規則が敷かれたという。遊技機にも一定の基準が定められ、パチンコ店営業に関する諸規定の全国一律化を推進した。その後は、パチンコ業界全体が業界健全化の実現を強く意識した取り組みが進められ、規制による停滞と新規性を伴う画期的な遊技機の開発による再ブームの形成といった流れで発展している。
続いて、パチンコが普及した理由についての考察が行なわれている。主に、遊技特性、メーカーによる遊技機の開発競争、ホール企業の経営活動について述べられている。遊技特性としては、パチンコが個人で楽しめるレジャーであること、プレーに対して時間的拘束がないこと、節度をわきまえれば安価に楽しめること、景品を獲得できること、年齢や性差関係なく楽しめるということ、単純なゲーム性、生活圏内にホールが存在しているため容易に通えること、ほかのギャンブル型レジャーに比べて面白さを有することがあるとした。これらの特性を持つレジャーがパチンコ以外に存在せず、独自であることが支持されてきた要因であるとした。また、パチンコそのものの魅力だけでなく、遊技機の多種多様さにも普及した要因があるとしている。遊技メーカーも開発競争による多種多様な遊技機の市場投入が展開され、ヒット機種を生み出して他社との優位性を確立し企業間競争に勝ち残るために、新機種の製造販売を推進してきた。娯楽として満足させるための企業努力により、パチンコが発展したと述べた。最後にホール企業の経営活動について述べられている。ホールはパチンコ店というレジャー空間の演出を担っており、長年にわたって積極的な経営戦略やマーケティング戦略を展開してきたことが、遊技者のパチンコへの認知と支持を獲得する原動力になったとしている。現代では、換金といった面だけでなく、ホールスタッフの接客能力を向上させ、店舗内での人的サービスの充実を図る動きも活発である。海外に普及しなかった要因として、ホール企業、メーカーともに海外志向の低さがあるとした。ホール視点では、日本での全国展開が1985年まで困難であったという背景から、海外進出に伴う資金、ノウハウ、現地情報が足りず、模索されなかったとした。メーカー視点では、海外での市場開拓の意欲が弱いことにあるとした。要因として、遊技機の販売が国内に限定されていることがある。そもそもホール自体が海外に進出していないため、遊技機を海外向けに造る必要がないということである。そのほかには海外諸国の治安の問題があるとした。製造コストが一台当たり数十万円することから、窃盗、強奪、破壊に関するリスクをはらんでおり、そのことが遊技メーカーの海外志向を躊躇させる一因とした。

〈総評〉
 今回、文献の選択理由として挙げた「海外展開がなされていない要因がインバウンドに影響する理由なのか精査する」については十分な結果が得られたように感じる。海外展開がされていない要因としてホールが海外にないことが深く関わっていることが分かった。インバウンドを用いる場合、海外にホールがあるかどうかに関しては、直接的な影響がないと推察できるため、インバウンドを用いる余地はあると考えた。今後は、パチンコにおける海外進出の失敗例などがあれば調査していきたいと考えている。

2024年6月13日分


芦田亮 高橋光輝 国内カジノ遊技機に於ける版権利用の可能性

〈内容総括・選択理由〉
取り上げた文献は、国内カジノ遊技機における版権利用の可能性についてである。カジノ産業の発展につながる要素として、パチンコ遊技機でつかわれている版権の使用をビジネスの観点から論じているものである。パチンコの海外展開のことを重点的に考えているため、カジノとの親和性は高いと感じており、カジノや、カジノにおける版権からの視点を取り入れようと考え、この記事を選択した。

〈内容〉
初めに、カジノ、パチンコ、スロットについての説明がなされている。カジノとは、合法的に賭博行為ができる施設で、各国の政府が法に従って設置しているものである。代表的なものは、バカラ、ルーレット、スロット、ポーカーなどである。国内では、刑法185条、186条で禁止されているため、国内で金銭をやり取りするカジノが禁止されているという。体験は繁華街のバーなどでできるが、金銭のやり取りはできないという。近年では国内のオンラインサイトにアクセスしてオンラインカジノを体験するユーザーが増加しているという。一方で、パチンコ、パチスロは、風俗営業の一つで、法律では風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律の第2条第1項第7号によって店舗で運営されている。パチンコ産業の市場規模は2014年のレジャー白書によると、970万人の遊技者がおり、売上高は約19兆円である。レジャー産業で占める割合は大変高いものとなってはいるが、参加人口、売上高ともに減少傾向にあるという。国内のカジノの状況は、2011年に特定複合観光施設区域整備推進法案を公表して以降、関連企業は、海外のカジノ施設に投資を行っていたり、実際のカジノ機器を海外のカジノ施設へ納入していたりするなど、ノウハウを蓄積している状態だという。対して国内のパチンコ業界は、規制問題があるとした。国民がパチンコにのめりこみすぎないように台の性能に対して制限を設けるようにするなどすることで、ユーザー離れが加速している状況にあるとしている。また、国内のカジノに対するイメージについても触れられていた。国民のカジノに対するイメージは、なんとなく知っているという割合が65%と一番多く、カジノに行ってみたいかというアンケートにおいても半数近くが行ってみたいと回答していることが分かった。対して、行かないと回答した人で、反対の意見も回答してもらっており、主な意見として、治安や風紀の悪化、青少年に対する教育上の悪影響、ギャンブル依存症の増加が挙げられていた。続いて、パチンコにおける版権利用の効果について述べられている。現在、パチンコ、パチスロにおいて販売されている筐体の8割近くが版権を使用しており、その中でも、すでに映像化されている作品の映像を編集し、演出として台に搭載するといった使われ方が主流であるとした。これには、映像版権を所有している版権企業にもメリットがあり、すでにブームが去った作品を台にすることで新しい世代へのアピールにつながることや、新たの購買意欲を発生させるといったものがあるとした。続いて、カジノにおける版権利用について考察している。現段階で版権を最も有効的に使えるものはスロットマシンだとしている。国内におけるスロットとは違い、リールが停止した段階で、決められたライン上で揃った図柄に対して、配当が発生するといったゲーム性になっている。近年ではアナログなスロットマシンから、液晶を搭載するスロットマシンも増えてきており、アメコミを中心に版権を利用したビデオ型のスロットが登場しているとい。そのため、国内におけるカジノの筐体でもビデオスロットの分野で版権を利用する余地はあると結論づけていた。

〈総評〉
今回、文献の選択理由として挙げた「カジノにおける版権の利用を知る」について、海外でもカジノのスロットに版権を利用するということがわかってよかったと感じる。パチンコ、パチスロという文化が形を変えてカジノでも存在していると言っても過言ではないからである。今までは外国でパチンコが浸透していない原因をみつけることでパチンコを海外に広める可能性を考察していたが、カジノからも裏付けとなる情報を得られたのがよかったと考える。

2024年6月20日分


江の島のインバウンド観光と外国人観光客の観光行動 鈴木雅人 西出泰知 細江美紀 新林智典

〈内容総括・選択理由〉
取り上げた文献は、江の島のインバウンド観光と外国人観光客の観光行動についてである。この文献を取り上げた理由は、外国人観光客の観光行動について知ることで、それをパチンコにも当てはめることができるのか精査するためである。

〈内容〉
はじめに、日本は独特の文化や歴史的景観、四季折々の自然景観が外国人観光客を魅了しているとし、政府は「観光立国」を目指し、2003年に「観光立国懇談会」を発足し、外国人観光客の増加を図っているとした。2013年には目標の1,000万人を達成したが、国際旅行収入はGDPの1%未満であり、さらなる発展が期待されているとした。ここでの研究は、神奈川県藤沢市の江の島に焦点を当て、外国人観光客の行動を調査したとしている。続いて、対象地域の概観について述べられている。江の島は神奈川県藤沢市に位置し、砂州で陸と繋がった陸繋島である。江の島は古くから観光地として栄え、近年は外国人観光客の受け入れ環境が整備されているとした。江の島には新江ノ島水族館や江島神社、江の島岩屋などの観光スポットがあり、多くの観光客を惹きつけている。続いて外国人観光客の観光行動について説明されていた。2017年3月に行ったアンケート調査では、80人の外国人観光客が回答し、回答者の国籍は中国、香港、台湾が多く、欧米からの観光客も一定数存在した。訪日回数はアジア圏が多く、滞在日数は1週間程度が多かった。観光スポットとしては江島神社が最も人気で、その他のスポットも訪れる人が多かったとした。次に、江の島来訪前後の観光行動について述べられている。江の島に来る前には東京都や神奈川県、静岡県を訪れる人が多く、来訪後は東京都に向かう人が多かったという。アジア圏の観光客は静岡県から来訪し、欧米の観光客は東京から来訪する傾向があった。続いて江の島観光で期待することについて述べた。観光客は自然景観に期待する人が多く、特に欧米の観光客はショッピングにも期待を寄せていた。この研究では、江の島における外国人観光客の行動を明らかにした。観光行動は江島神社への参拝が主であり、観光ルートは双方向的であった。しかし、調査場所や期間の制約から、全体像を掴むことはできなかったとした。今後の研究では、季節による観光行動の変化を含めた詳細な調査が求められるという。

〈総評〉
今回、文献の選択理由として挙げた「外国人観光客の観光行動について知る」について、アンケートの結果から、江の島においては自然景観に期待していることがわかった。ただし、欧米ではショッピングにも期待を寄せていることがわかり、お金を使うという点では共通しているため、観光業として可能性を感じる結果になった。江の島の観光行動なので、景色観光に期待するのは当然であると考えるため、違う場所では消費行動に発展するのではないかと考察した。

2024年6月27日分

福井 弘教 日本におけるギャンブル政策に関する考察 : 日韓ギャンブル政策の比較分析を通して

〈内容総括・選択理由〉
取り上げた文献は日本におけるギャンブル政策に関する考察 : 日韓ギャンブル政策の比較分析を通してである。韓国のギャンブル政策、日本のギャンブル政策を知ることで、どの程度までギャンブルの政策を拡大することができるのかを知るためにこの論文を選んだ。

〈内容〉
この論文では、日本と韓国のギャンブル政策を比較し、日本のギャンブル政策理論を構築することを目的としている。特に、今後導入が期待されるカジノ事業についての運営方式や依存症対策に関する政策提言を行っていた。ギャンブルには正負両面があり、その政策も課題が多く、解決策を見つけるのが難しいとした。韓国との比較を通じてギャンブル政策の正負両面を明らかにし、日本のギャンブル政策理論を構築するという。
最初に日本のギャンブルの概要について書かれている。日本には多くの合法的なギャンブルが存在し、公営ギャンブルと私営ギャンブルに分類される。公営ギャンブルには競馬、競輪、オートレース、競艇があり、宝くじ・スポーツ振興くじも含まれる。公営ギャンブルは公益性を追求し、私営ギャンブルにはパチンコが含まれている。パチンコは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に基づき「賭博」ではなく「娯楽」とされ、その運用実態からグレーゾーンに位置づけられる。近年、両者共に公益性と営利の追求が求められるようになっているという。
続いて、韓国のギャンブルの概要についてである。韓国の公営ギャンブルは競馬、競輪、競艇、闘牛、宝くじ、体育振興投票券、カジノがある。韓国のギャンブル政策は、ソウルオリンピックを契機に発展し、スポーツ・文化行政と融合した政策を運用している。競馬は最も古くから行われており、競輪はソウルオリンピック自転車競技場の跡地、競艇はソウルオリンピック漕艇場施設の跡地を利用して開始された。しかし、韓国でも不法賭博が蔓延しており、状況に応じた規制緩和が必要とされている。
比較分析では、日本と韓国の公営競技のマネジメントに関しては一定の評価ができるものの、いずれも組織の肥大化を招いており、日本は依存症対策の欠如が明らかとなっている。韓国は国が主導して適切な規制を行っていますが、不法賭博の蔓延を招く要因ともなっているという。日本ではカジノ導入に向けた既存ギャンブルの総括が不十分であり、ギャンブル依存症対策も十分に行われていない状況であるとした。
続いて日本のギャンブル政策の課題について述べられている。公益性と営利のバランスについて述べた。日本のギャンブル政策は公益性を重視するものの、近年は営利の追求も不可欠となっており、売上低迷による施行者の撤退や事業廃止が目立っているという。また、カジノ導入の問題点にも触れられている。2016年のIR推進法の成立によりカジノ解禁の可能性が高まっているが、既存ギャンブルの問題点の総括が国民レベルで行われていないという。他には依存症対策の不十分さについても述べていた。ギャンブル依存症対策が十分に行われておらず、特に私営ギャンブルであるパチンコにおいて過度な依存が問題となっているとした。
次に韓国のギャンブル政策の課題についてである。依存症の増加、不法賭博の問題について触れられており、依存症の増加では江原ランドにおいて依存症状態に陥る者が増加しており、周辺の質屋が繁盛している状況であるとし、不法賭博に関しては、韓国では不法賭博の市場規模が合法賭博を上回っており、厳格な規制だけでは対応しきれない状況があるとした。2012年のデータによれば、政府公認ギャンブルの売上総額が19.5兆ウォンに対して、不法賭博の市場規模は75.1兆ウォンと4倍もの市場規模が存在するという。
日本と韓国のギャンブル政策を比較すると、韓国は政府主導でギャンブル政策を運営しており、適切な規制を行っている。韓国は文化体育観光部が中心となり、スポーツや文化行政と融合したギャンブル政策を展開している。日本は監督官庁が分散しているため、政策の硬直化が進んでいるという。韓国のギャンブル政策は、ギャンブル事業を統合的に管理し、依存症対策も充実している。日本はこれに対して、各ギャンブルに多様な組織が形成されており、依存症対策が遅れていることが分かった。
最後に、日本のギャンブル政策理論を監視・監督機関の必要性、適切な施設運営、依存症対策、法的枠組みの整備の4つの軸で評価していた。監視・監督機関の必要性では、ギャンブル政策には監視・監督や社会的要請に応える機関が不可欠であり、組織の一元化が理想的なモデルであるとした。適切な施設運営については肥大化した組織の維持には経費がかかり、各事業において本来の目的を果たせない可能性があるため、適切な施設運営が必要だと述べている。依存症対策について、ギャンブル規制や依存症対策は実効性があり、不法賭博市場の拡大を防ぐためにも国による適切な介入が必要だという。法的枠組みの整備については韓国には、国民体育振興法という法律が存在し、公営競技の振興がいわれている。日本も直接的なギャンブル根拠法のみならず、間接的な根拠法の創設が必要であるとした。

〈総評〉
日本のギャンブル政策は、韓国と比較して後れを取っている面があり、韓国の事例から学ぶべき点が多いとしていた。ギャンブル政策には監視・監督や社会的要請に応える機関が不可欠であり、組織の一元化や適切な施設運営が理想的なモデルであると筆者は語った。また、ギャンブル規制や依存症対策は反対論者の批判をかわすためだけでなく、不法賭博市場の拡大を招く恐れもあるため、国による適切な介入が必要であると結論づけていた。あまりパチンコのような私営ギャンブルの振興に関する政策は語られていなかったため、韓国の振興法を日本の私営ギャンブル用に転用出来ればいいと感じた。

2024年7月4日分

熊上 崇 大学生におけるパチンコ・スロットの頻度と意識 〜首都圏の一大学における調査から〜

〈内容総括・選択理由〉
今日選んだ論文は、大学生におけるパチンコ・スロットの頻度と意識 〜首都圏の一大学における調査から〜についてである。この論文は大学生のパチンコ・スロットの利用頻度とその意識について、首都圏の一大学を対象に調査したものである。この調査は、ギャンブル依存症が大学生年代に始まることが多いという現状を踏まえ、大学生におけるパチンコ・スロット依存症の実態とその予防について明らかにすることを目的としている。

〈内容〉
最初に、パチンコ・スロット依存症の現状について語られている。日本におけるパチンコ・スロット依存症者は536万人に達しており、これは成人人口の4.8%、男性に限ると8.7%に相当するという。依存症者のギャンブル開始年齢は20歳前後であり、平均的な負債額は500万円を超えている。これらのデータは、ギャンブル依存症が大学生年代に深刻な影響を及ぼすことを示しているとした。続いて、調査方法と結果についてである。調査は首都圏の一大学の1年生201人を対象に実施され、パチンコ・スロットの経験とそれに対する意識をアンケート形式で尋ねた。回答者のうち153人がパチンコ・スロット経験について回答し、その中で18人が経験があると答えた。月に4回以上パチンコ・スロットを利用するヘビーユーザーは全体の2.5%に当たるとした。また、意識調査では、パチンコ・スロット利用者は非利用者と比較して、パチンコ・スロットが経済的利益やコミュニケーションの手段として有用であり、精神的・経済的な危険性は少ないと考えていることが明らかになったとした。これに対して、非利用者は精神的・経済的な危険性をより高く評価している。続いて、大学生のギャンブル依存症予防の必要性について説かれている。ギャンブル依存症の予防には、大学生年代に対する啓発活動が不可欠である。一次予防として、パチンコやスロットを未経験の中高生や大学新入生に対して、ギャンブルの精神的・経済的危険性についての教育を行うことが重要である。既にギャンブルに傾倒しつつある学生には、セルフヘルプグループや依存症治療のワークブックを活用し、依存症のメカニズムや離脱の方法について指導する二次予防が求められるとした。パチンコ依存症に関する授業の実施についても説明されている。この調査を基に、筆者は授業においてパチンコ依存症の予防について学生と議論したという。具体的には、パチンコを原因とした自殺事件を題材に、予防理論を学び、グループワークで予防プランを作成させた。その結果、学生たちはギャンブル依存症の危険性を理解し、一次予防、二次予防、三次予防の重要性を認識するに至ったという。最後に、大学生のギャンブル依存症予防のあり方について述べられている。一つ目に啓発活動の強化を挙げている。パチンコやスロットの危険性について早期から教育することが重要であるとしている。具体的には、中高生や大学新入生に対して、ギャンブル依存症の精神的・経済的リスクを周知するための授業や講義を行うことが求められる。セルフヘルプグループの活用について語られている。パチンコ・スロット依存の兆候がある大学生を対象に、セルフヘルプグループを運営する。これにより、同じ悩みを持つ者同士が互いに支え合いながら依存からの脱却を図ることができるとした。依存症のメカニズムや対処法について学ぶためのテキストやワークブックを用いることも有効であるという。続いて相談窓口の設置と周知についてである。ギャンブル依存症に関する相談窓口を設置し、その存在を広く周知する。例えば、NPO法人「リカバリーサポートネットワーク」が行っているように、パチンコ店のトイレにホットラインのポスターを掲示するなど、相談しやすい環境を整えることが重要であるとした。最後に社会的な取り組みを挙げている。ギャンブル依存症の予防には、教育機関や家庭、地域社会が一体となって取り組む必要がある。国家レベルでの法規制や支援制度の整備も含め、多層的な対策を講じることが求められる。これらのアプローチにより、大学生のギャンブル依存症予防を効果的に進めることができる​​​​とした。

〈総評〉
この研究では、大学生のパチンコ・スロット利用に関する実態と意識を明らかにし、その結果を基にギャンブル依存症予防の重要性を強調したものであった。大学生に対する啓発活動やセルフヘルプグループの活用など、多角的なアプローチが必要であることを示していた。また、ギャンブル依存症の予防には、個々の努力だけでなく、教育機関や社会全体が協力して取り組むことが求められるということがわかった。

2024年10月3日分

鍛冶博之 異業種企業によるパチンコ業界への参入実態

〈内容総括・選択理由〉
取り上げた文献は異業種企業によるパチンコ業界への参入実態についてである。ビジネスコンテストの運営を通じて、パチンコ業界に様々な業種のサービスを掛け合わせることでより活性化につながるのではないかと考え、これまでに行われた異業種の参入を知る必要があると考え、この論文を選んだ。

〈内容〉
この論文は、1990年代以降に異業種の大手企業がパチンコ業界に参入したことが、パチンコホール企業の経営改革にどのような影響を与えたかを考察している。ホール業界の経営戦略に与えた変化に焦点を当てており、その背景には1980年代以降のパチンコホールにおける業界サービスの重要性の課題があった。
1980年代には、パチンコホールの競争が激化し、競争との差別化を闘うために、より多様なサービス戦略が必要とされた。 そして、1990年代には大手異業種企業が本格的に参入し、従来のホール業界の経営スタイルに新たな視点をもたらした。これらの企業の参入は、ホール業界に新たな経営手法を導入するだけでなく、顧客層の信頼の拡大や回復にもつながった。
論文では、異業種企業の参入課題を内的課題と外部的課題に分けて分析しており、主に業界間の競争激化などが挙げられている。一方、外部的制約には、日本全体のレジャー産業における変化や余暇市場の縮小、暴力団対策法施行が影響したとした。
さらに、異業種企業によるパンチ業界の具体的な事例として、流通系企業、運輸系企業、その他の企業に分類し、それぞれの事例を紹介していた。事業に乗り出したもので、運輸業ではJR北海道や東武鉄道など参入している。これらの企業は、パチンコ業界に多様な視点を取り入れ、新たな顧客層を開拓し、サービスの質向上に貢献したとした。主に、異業種が携わったサービスとしては、ホールの経営、ホール設備の開発の二つに分けられるとした。
参入時期の特徴も詳細に分析されており、1960年代から1990年代までの異業種企業の参入動向が注目されている。
これにより、パチンコ業界は健全化の方向へ進み、経営改革が促進されたとした。 異業種企業の参入は、既存のホール企業に競争圧力を考えて、業界全体の発展にも注目したと結論づけられている。

〈総評〉
 今回、文献の選択理由として挙げたこれまでに行われた異業種の参入を知るということについて、想像していたよりも参入方法が限定的でおり、各々の持つ強みをあまり発揮できていないように感じた。例えばダイエーはスーパーマーケットのイメージが強いが、その強みを生かすことなくホール経営に走っていたため、もっとバリエーションにとんだ参入方法があればよいなと感じた。今後は様々な業種を絡めたサービスがパチンコで実現可能なのか模索していきたい。

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