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午前十一時の怪談映画祭

 一週間ぶりのシネ・ヌーヴォ。いよいよ始まった『大映4K映画祭』いや、まずはその連動企画『ROAD TO THE MASTERPIECES』からスタート。あれも見たい、これも見たい、でも仕事とバッティングして見れない。何とか時間が空いていれば九条まで飛んでいきたい。そして今日出勤前に『四谷怪談』を。

 ご存じ怪談映画の定番、『四谷怪談』今回は1959年公開の三隈研次監督版。怪談映画の定番であり名作として各社で何度も映画化され、そのたびに微妙に解釈が違っているのも『御存じもの』ならでは。今回は下級武士伊右衛門と妻との関係を掘り下げた内容になっており、世を拗ねてニヒルな伊右衛門だけど、本当は岩のことを案じているという、いわゆるツンデレな性格に。他作品のような根っからの極悪人ではないというのがミソ。

 士官もままならず、内職の傘張りも下男に任せて同じ境遇のゴロツキ武士に、チンピラ直助と放蕩三昧の伊右衛門だが、たまにお岩さんを釣りに誘ったりと心根の優しいところを見せる。そんな伊右衛門が良家の息女に見初められて、一方的に好意を抱かれ、この娘と一緒になればスムーズにし感ができる、それならばいっそ妻である岩を亡き者に……というのがいつものパターンですが、今回は、娘の身勝手な想いにその父、乳母にゴロツキ、直助が次々と悪事に手を染めていき、伊右衛門はそれに巻き込まれてしまう、という構成。これは主演が当時の大スター長谷川一夫だったから極悪人にできなかった配慮だろうか。お岩さんの死の真相を知った伊右衛門が、その怨霊にとり憑かれつつも悪人を切る(お岩さんと夫婦タッグ)、という今までと違ったクライマックスがまたこの映画を異色なものにしてくれており、違和感はない。

 そして大映時代劇の特色、ロケと見まがうほどの大セット、雨、池といった水を基調とした撮影も印象的。

 もちろん怪談映画だから、怖い場面は徹底的に怖い、池から恐ろしい形相で這い上がってくるお岩さんや、桶から伸びる腕、とか。怯える伊右衛門の背後にぼやけつつもふっと現れるお岩さんとか。

 蛍が一転、鬼火に代わる幻想的な怪奇譚、これを4kの高画質で見れるとは……と思ったら、今回の特集は4Kではなくデジタル上映だったんですな。よほどでない限り画質を気にしない人間なのです。それよりもお話が、撮影が気になるのですよ。

 大映バッジとパンフ、シールセットを購入。また時間を作って見に行きたい。大映は名作ぞろいですが、中でも時代劇は格別だと思うのですよ。


 

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