酷暑から逃げるように映画館にいた
8・26 『音のない世界で』(シネ・ヌーヴォ)『ブルドーザー少女』『アリゲーター』(シネマート心斎橋)
ドキュメンタリーは構成があっても筋書きがない、だから面白い。シネ・ヌーヴォ、夏休みの映画館『音のない世界で』。山崎支配人の御挨拶から上映開始。大人、子供、教えるもの、教わるもの、フランスの聾唖者たちの姿を描く作品。手話と口話、発声の練習等々、音のない世界は不自由か? そうじゃない。
健聴者からすれば大変だなぁ、と思ってはいるけど、彼らの世界はそれが普通。この手の題材って障害者の大変さや困難さを売りにしがち(特に日本)だけど、それが自然なんです。上映後の映像で、30年前と今ではまた状況が違うこと、聾唖の方の視点だとまた違う印象になるんだな、と。価値観はそれぞれ違うのだ。
パンフレット代わりの鑑賞ノート、これを読んでみんなであーだコーダと語るのです。ルパン上映で、普段は見られない子供の姿もちらほら。シネ・ヌーヴォ、夏休みの映画館2023は明日も上映、みんなで見よう。価値観も幸福も人それぞれだからさ。
ヌーヴォで素敵なドキュメンタリー見て、九条から心斎橋、混沌の町アメリカ村へ。シネマート心斎橋で『ブルドーザー少女』を見る。世界重機映画(最後の海底巨獣とか殺人ブルドーザーとか)に新たな一本が加わった、韓国から! もうこのタイトルでどんなハリウッド超大作よりも見たくなってしまう!
そういやオートバイ少女って映画もあったなぁ、と。日本じゃ戦艦、戦車+少女だけど、韓国は重機+少女だ! でも内容は実に真面目。ダメおやじの自動車盗難+人身事故、そして飲食店売却と雪崩式に不幸になって人生のズンドコに堕ちた少女の物語。でも徐々に真相が露わになり、ダメおやじの真意を知るや、向かうべき相手が見えてくる。そして反撃に転じるのだが、どれもうまくいかない。
もうね『こんな奴早くやられてしまえ』と思うぐらいに憎々しげなんですよ、悪人が。マドンソクなら一撃でぶっ飛ばすでしょうが、そうもいかない。気丈で喧嘩っ早い少女はどんな逆境にも反発し、技能講習で操縦を覚えた技術を駆使し、盗んだブルドーザーで走り出す、19の夜なのだ。痛快ではないが、最後はなんだか救われる。でも巨悪はまだぬくぬくと暮らしているかもしれない。それでもいい。しかし韓国映画に出てくる小学生男子はなぜまことちゃんみたいな髪型なんだろうか。あらゆるものに反発し続ける少女が唯一心を許している弟との姉弟愛にジーンとなるのです。負けられんよな、何事も。
シネマート心斎橋、ブルドーザーの次はアリゲーターだ! テレビで見て以来の巨大ワニワニパニック映画。捨てワニが下水道で巨大化! 迷い込んだ人間を喰う、そして地上にその巨体を見せる! 謎の殺人事件→誰も信じない→写真に撮られる→企業と行政の癒着→ワニ大暴れと、王道の怪獣映画でした。
巨大ワニはメカモデルと本物を併用して撮影されており、ミニチュアの中を本物のワニが歩く姿は、巨大トカゲ怪獣映画の進化系を見たような気がした。実際劇中で主人公がトカゲ怪獣版『地底探検』を見るシーンもあったりする。トラウマ刑事に企業の不正と、ドラマもある程度しっかり作られている。
『アリゲーター』は世界ワニ映画のトップであると同時に、薄毛主人公が活躍する映画のベストでもある。あそこまで薄毛を気にする主人公は見たことない、ヒロインにもいじられてるし。世界中の薄毛の人に希望を与える映画でもあった。薄毛でもワニを倒せるぞ! 入場特典はポストカードでした。
なぜ権力者も企業もヘンリ―シルバも嫌なやつなのか。それは最後にまとめてワニに喰われるから! 『ブルドーザー少女』の悪徳会長もワニに喰われてしまえ。しかし、今年に入って『死亡遊戯』に続いて4Kレストア画面のディーンジャガーを見るとは思わなかったよ。
劇場のワニ看板は、こうして撮る。
海外版はワニを全面に出してますが、日本初公開時のポスターはワニのビジュアルもうっすらと処理して、ホラーで売りたかったのかな、と。
12回飛び上がって、お尻痛いです。そもそもの原因は動物学者のヒロイン、お前かよ!
8・27 恐竜博2023(大阪市立自然史博物館)
長居公園、大阪自然史博物館の恐竜博へ。
鎧竜ズール、ゴルゴサウルス、ティラノサウルスのタイソンに様々な骨格標本。ちびっこだらけの会場、ズールの名前の由来がゴーストバスターズの門の神(ブタイヌ)でビックリした。確かに頭部は似てるね。
壁面に写るタイソンの頭部のシルエットは、アレかな。
恐竜博を堪能した後は、鯨がお出迎えする常設展へ。
ここに来るのは何年ぶりか。昨日『アリゲーター』を見た身としては、大阪のバケモノ、マチカネワニが見たかったわけですよ。
こんなのが大阪にいたのか、でかい! そりゃダイナマイトを使わないと勝てないわ。全長7メートル、浪速キラークロコダイルです。
スーパーパワーの恐竜軍団、と哺乳類軍団。
このみっちりと、見たいものが詰まった展示が素晴らしい。
でも一方で、個人的にはエリオプスとかディメトロドンのような巨大爬虫類、両生類も気になるのです。
常設展示の10倍シリーズ。巨大フンコロガシと、巨大ゴ。世の中にはアレがとても嫌いな人が多いそうなので、消しゴムマジックで消してみました。残った触覚のサイズで戦慄してください。
あと、獣人雪男を絶滅させたベニテングダケもありますゴホ。これを使えばいかなる怪獣にも勝てるかもしれない。
恐竜博のお土産は西川先生のゴジラクリアファイル。恐竜と怪獣が並ぶ昭和な感じが素晴らしい。そして常設のミュージアムショップでオレノイデス(三葉虫の仲間)のフィギュア。『君、これはね、大変なものなんだよ』と言いたくなる。恐竜を見に行ったけど、結局怪獣寄りになってしまう。
8・28『アルゴ探検隊の大冒険』(TOHOシネマズ泉北)
午前十時の映画祭、いや厳密には午前十時五十五分の映画祭。『アルゴ探検隊の大冒険』を久しぶりに見ましたよ。人形アニメで縦横に暴れまわる大怪獣貴種流離譚。ヒゲ、ムチムチ、フンドシの男たちが大挙出演。なるほど、洋画劇場でオンエアの際、解説の方が『今日は端午の節句、男の祭りです!』と紹介していたけど、なるほど、いろんな意味で男祭りですわ。
神に従い、時には背きながらも黄金の羊の毛皮を求めるジェイソンとアルゴノーツ。それを見守るゼウスとヘラの、暇をもてあました神々の遊び! 全身をきしませながら迫るティロス(タロス)、七つの首をくねらせるハイドラ(ヒドラ)、その歯から生まれた七人の骸骨剣士、うるさいハーピー(メスだった)、そしてマーメイドおじさん、ポセイドン。生きているかのように動き回る、かつては怪獣図鑑でしか見れなかった彼らをスクリーンで見れるという現代の奇跡、これもまた暇を持て余した神々の遊びなのか。帰宅してヒドラのオモチャを引っ張り出してきたら、首と尻尾が折れてたよ、コールドキャスト。
記憶ではもっと大きいかと思ってた。戦わずに勝つ、最強の骸骨剣士の意外な退治方法。食玩ハリーハウゼン、真面目に集めておけばよかった。年頭に八岐大蛇二本立てを見て、そして今日も多頭竜。来年のこの枠は『恐竜百万年』かな。
今見ても色あせない特撮、実物大の船を浮かべ、遺跡でロケをする、その時代の大作映画の雰囲気を堪能できる『アルゴ探検隊の大冒険』、実に夏休みっぽいプログラムでした。次回はエクソシスト! そしてミツバチのささやきで少女+バケモノ映画、これも見ないとだわ。
8・31『MEGザ・モンスターズ2』(ユナイテッドシネマ岸和田)
海映画は海の見える映画館で見ないと、それに割引券の有効期限が今日までだったので『MEGザ・モンスターズ2』を。先週はワニで今週はサメ! ステイサムとウー・ジンがいれば古代ザメなんか敵じゃない。ステイサムは人間も鮫も分け隔てなくぶん殴るし、サメがバクバクやるので、前作での不満点も解消。中国人多めのリゾート島にサメが来るってシチュエーションは前作と一緒ですが。
テロ対ステイサムで、序盤は『これなんの映画だった? あなたの職業は?』となるけど、しっかりした怪獣映画のロジックでありました。サメも出るし、大ダコ、両棲古代爬虫類も出る。でもステイサムは負けない、ステイサメ! ステイサムが背中のステイサムランスを引き抜く時、いちいち『シャキン!』と音が出るのがかっこいいよ。
『MEG2』の凄いところはサメ以上に魚類なステイサムよりも、絶滅した古代魚メガロドンが、割とその辺に存在する世界観である、ということ。化け物と隣り合わせの世界観、これはもう怪獣映画のテイじゃないですか。夏の最後に相応しい鮫とステイサム大暴れ映画でした。エンディングのメグラップもいいよ。
9・3『『爆竜戦隊アバレンジャー20th許されざるアバレ』
誰?キュアマジェスティ、劇場版のブルガンダーみたいなの汽車だったガッチャード、新章キングオージャーとニチアサ見て、次はニチヒル。『爆竜戦隊アバレンジャー20th許されざるアバレ』。1時間でサクッとみてサクッと帰れるいい尺ですよ。後ろのアバレ親子連れ、ちびっこがゴジラの予告で泣いてた。ええぞ、映画館って真っ暗ででかい画面にでかい人とかでかい化け物が出てきて大声出すもん、ちびっこには恐怖空間でしょ。それがゴジラだった。もう足音のドーンで、びぎゃ―って泣いてた。トラウマになるかもしれない。で、アバレンジャーが始まると泣き止んでた。そう、アバレンジャー20thのことだった。
アバレンジャーももう20年かよ。20年前って俺何してたっけ? そうアバレンジャー見てたよ、今と変わってないじゃん! うわぁ。でもアバレンジャーもいい年のヒーローになっちゃった。でもまだアバレてるから、俺もアバレよう、と思いました。あれ、ハリケンジャーも20周年だったでは? 10年はまだまだ、20年にもなると人間色々変わるし、世の中も変わるよ。爆竜戦隊の敵はエヴォリアンからインフルエンサーとSNSになっていた! 時代は変わった、ネットの悪口で相手を倒せるぞ、でもアバレンジャーにはあまり効いていなかったかも、それでこそ爆竜戦隊ですよ。あぁ、でも20年か。
オリジナルキャストは勿論ヤツデンワニも健在、見ながら20年前のことを思い出す。討論番組に出るアバレンジャー、『赤い人』と言われてギクッとなるヒーロー研究家渡洋史氏、真面目に愉快だったあの頃と同じテイスト。エンディングのアバアバダンスが物語に深く関わる、メタな展開もアバレンジャーだから許されること。
木村ひさし監督は、去年の『貞子DX』が加速度的におもろかったのさ、オチがよかった。 東映出身じゃない人が東映特撮を撮るとどうなるのか、いやそれでもいつものアバレンジャーでしたよ、爽やかな下ネタ込みで。サブタイトルから爬虫類と植物の合成怪人でも出るのかと思ったら、本当に出たよ。1時間の大ボリューム。
今度はマリオやるんかい、MOVIX堺! アリゲーターはやらないの?
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