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按摩と犬が吠える週末

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 そして今回はガイガイガイ、ならぬ怪怪怪な、いつものように京都で見た映画のことです。眠れない夜勤が明けた金曜日、家に帰って寝直したいところでもありましたが、今日でないといけないプログラムがあるので、京都みなみ会館へ。今週は日、火、金曜日と仕事の合間に京都に行ったことになります。よく京都まで遠くない? と言われますが、そんなものもうすっかり『慣れた』のです。8年前からほぼ毎月通ってるもので。バイク、車で行ったことはあるけどあだまだ電車で行ったことがないので楽しみがまだ残っているのです。

 コンビニの駐車場で昼寝して、みなみ会館へ。最近は平日でも東寺周辺の駐車場が満車なことが多いのです。

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  ここに通って8年。いろいろあったなぁ。今回もロングラン上映中の『妖怪特撮映画祭』から『怪談累が淵』『怪談蚊喰鳥』の二本を。大映怪談を映画館で見るというのも、こういう機会でもないとできないことなので、派手な特撮物もいいけど、たまにこうした怪談物も。それに伝統ある大映時代劇の一種でもあります。

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 『怪談累が淵』、館内に貼られたポスターは1970年のリメイク版、今回は1960年版でした。借金の返済に屋敷を訪ねた按摩を、旗本が斬ってその所持金を奪い、下男に処理を命じる。按摩の遺体を入れた葛籠は累が淵の渦の中に消え、下男もまた旗本の奥方と通じていた間男に殺される……。冒頭から人間の色と欲がそれこそ累が淵の世に渦巻いております。そして舞台が変わって、とある浪人と小唄の師匠が恋仲になる。浪人はかつて按摩を斬った直後に死んだ旗本の息子、そして師匠は斬られた按摩の娘だった。そうとは知らず深い仲になる二人。やがて師匠は死んだはずの父の姿を見るようになり、顔に大怪我をしてしまう。あってはならぬ二人の間を割くかのように冥土から按摩の父が帰ってきたのか? いや、娘を恨むのはお門違いでは? と思いながらも物語はごろつきやくざや美貌の芸者を巻き込んで物語の発端になった累が淵へ。お化けになった按摩さんが怖いというよりも、人間の欲望丸出しの生き方のほうが怖い。確かに仇同士かもしれないが、知らずに付き合ったんだし、按摩の父さんは実の娘を恨まなくとも、とは思う。

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 続いて『怪談蚊喰鳥』。蚊喰鳥とは蝙蝠のことで、劇中に登場する按摩のことを指すと思われる。そう、これもまた按摩の映画である。古寺の離れに住む小唄の師匠のこと思うあまり恋焦がれて死んだ按摩。その弟もまた師匠を想うようになり、二人は暮らし始めるが、そこに師匠の間男がからみ、按摩から金を奪って追い出そうと画策する。按摩さんに続いてまたもや小唄の師匠に間男登場。しかもどちらも中田康子が演じているからややこしいよ。愛憎と金が絡み、立場が上下するシーソー状態の中、舞台がほとんど師匠の家だけという設定の中、三人の出し抜きあいが続く。冒頭に死んだはずの按摩が師匠の揉み療治にやってくるシーン以外は怪談要素がほとんどないのです。これもまた『生きてる人間が一番怖い』系列のお話になるのです。金と色欲が絡みまくって、最後は落語のようなオチでした。

 前情報なしで見たら按摩映画特集のようでしたが、『四谷怪談』にも按摩は出てくるし、按摩と怪談は親和性が高いのかなと思ったりしました。盲目の彼らもまた闇の住人ということになるのか。大映はこの二本の後、按摩ピカレスク『不知火検校』を公開し、そして最強の按摩映画『座頭市物語』につながっていくのかな、と思ったりしました。モノクロの画面の中、闇からのっそり現れて仕込みを抜く、第一作の座頭市もまた按摩怪談の一種かもしれません。シリーズ20作『座頭市と用心棒』でもあの用心棒が『按摩は斬ると化けて出る』と、はじめは座頭市を討つことに躊躇しておりました。

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 そして、その日はあと一本。先週より始まった『牛首村』公開記念、午後七時の東映怪奇映画祭の一本『犬神の悪霊(たたり)』を。『散歩する霊柩車』『怪談片目の男』は以前に見ているので、未見の『犬神の悪霊』をこの日に見ることで、みなみ会館怪奇大会になるのです。『犬神の悪霊』は70年代後半、スターウォーズに『宇宙からのメッセージ』、『ジョーズ』に『恐竜怪鳥の伝説』をぶつけた東映がオカルト映画ブームに殴り込みをかけた、と言われている作品です。

 とある山村にウラン鉱脈を探しに来た技師の大和田伸也さん。見事にウランを掘り当て、村の名主の娘と結婚してハッピーなはずですが、ウラン見つける際に祠を壊したり、犬をひき殺したりしたので、その村に伝わる犬神に奥さんが取りつかれてしまいます。現代医療では歯が立たない犬神憑きを治すべく大和田さんは村に戻るのですが。ウランという現代的な要素と犬神という土着のもののミスマッチ感。一度は犬神は去るものの、映画後半では犬神筋と呼ばれる家族に被害が及ぶという村社会の恐怖が描かれ、最後に再び犬神大暴れ。という、人間も犬神もどちらも怖いというぜいたくな構成。そのためにどこかとっ散らかった感じはします。

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 『エクソシスト』や『オーメン』という洋画オカルト映画を意識したシーンはあるものの、そこにエログロ、暴走族、アクションといった東映味を振りかけることで、不思議な味わいを醸し出し、菊池俊輔の狂った祭囃子のようなテーマ曲とともに妙にひっかかる映画になっています。最後に犬神とタイマン勝負するシーンは変身ヒーローものみたいな活躍を見せますが、とにかく大和田さんが全部悪いと思います。

 大和田さんの仕事仲間を襲う犬の群れは怖い、でもシェパードかよ! ラスト唐突に現れる土蔵の君は一体何がしたかったんだよ! 室田さんが呼んだんだから室田さんの取り憑くのが筋じゃないのか、かみ殺してどうするよ犬神! ラストの大和田さんのあれは何? 

 と、いろいろ思うことが多い映画ですが、臨月の奥さんが無邪気に編んだ赤ちゃんのおくるみが、犬の形をしていたのが一番怖かったです。でもそういうのよくペットショップで見るなぁ。

 映画が終わると外は夜の闇。怖い映画三本も見たけど、どれもこれも奇妙な味わいだったなぁ、と帰路につきました。

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 ちなみにどうでもいいことですが、今回からPCが新しくなりました。パナソニックのCF-SX3。前のマシンのバッテリーの減少が激しくなったので、お店に聞いたら、中古だけど、こっちのほうがバッテリー、スペックともにはるかに上だといわれたもので。アルミボディのタフな奴、細かいことはよくわからないけど『今のよりも三倍はいいです』の『三倍』というワードに惹かれてしまいました。


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