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忍者殺戦、さっそく参戦!

 珍しく日曜日に夜勤、明けて学校。いつものようにのんびり語らい、台風の影響におびえつつも帰り道なので、今日しかないと新世界東映で『影の軍団服部半蔵』『風の武士』の東映忍者映画二本立てを。

 『影の軍団』は6年ぶりの上映ではないだろうか。

 三代将軍家光没後、世継ぎを利用し政権を掌握する松平伊豆守の暗躍に巻き込まれる上と下、二人の服部半蔵。下の半蔵(渡瀬恒彦)は先代を利用するだけ利用した挙句、用済みとばかりにお家取り潰しにした幕府を恨み、大名専門の強盗となっていた。盗んだ物品は長屋で売りさばく、まるで『必殺仕置人』の泥棒市である。見回りに来た同心に半蔵が袖の下を渡すのも似ているが、ここでは真面目同心にぶん殴られる。

 忍びというより、強盗専門の愚連隊になっていた下の半蔵が、上の半蔵(西郷輝彦)と手を組んで、伊豆守の陰謀と甲賀忍者に立ち向かう。
 この映画の見どころといえば、アメフトのプロテクターとヘルメットに身を包んだ忍び同士のアメフト風の立ち回りである。伊賀と甲賀、両陣営に分かれ、激突しては自陣に戻り、そして再び激突、を繰り返す。集団の立ち回りにアメフトやラグビーを地理入れたのは岡本喜八監督『侍』や木枯し紋次郎の立ち回りでも試みられたが、そのまんまアメフトというのはこれぐらいかも。

 逆光でスモークの中現れるアメフト忍者軍団は『ザ・フォッグ』の亡霊軍団みたいでした。

 そしてもう一方の見せ場は、クライマックスの甲賀忍軍との最終決戦で崩れ落ちる鬼門櫓のシーンではないかと思うのです。決戦場そのものを崩壊させ、敵味方もろともその下敷きになるという捨て身の戦法で、精巧に作られたミニチュアの屋根瓦が波打ち、櫓が内側からぐにゃりと崩れ、そして石垣が崩壊していく。先日見た『夜叉ヶ池』と並ぶ矢島信男特撮監督の一般映画で発揮されるリアルな特撮シーンではないかと思います。

 1980年、時代劇映画の本数がめっきり減った中で公開された斬新な殺陣と特撮のコラボによる新機軸時代劇。

 黒塗り姿から脱皮する緒形拳の甲賀忍者とか、服部半蔵二人体制とか、謎な部分が多いものの、これがあって後の『魔界転生』『里見八犬伝』へとつながっていくのではないかと思うのです。80年代はこれに、アイドルという要素を加えないと時代劇も盛り上がらなかったのです。

 『風の武士』はシネ・ヌーヴォで見た『日本侠花伝』で気になった加藤泰監督。

 紀州の山中にあるという隠里の秘密を探る紀州藩の陰謀を砕く隠密のお話。平家の落人が作った隠れ里には、豊富な金が採れるということで、幕府も紀州藩も、そして大阪商人も陰謀を巡ららせるその渦中、主人公の公儀隠密は隠れ里の姫君に惚れてしまい………。伝奇冒険活劇かと思ったら、男女の欲望が交差するウェットな仕上がり。主人公の大川橋蔵はよくモテるし、殺陣も様になっていて、さすが、と思うのですが何せ登場キャラが多い上に敵と味方の立場が二転三転するので、あまり見せ場がないのが残念。

 『日本侠花伝』でも見られた、足場の悪い岩場での横移動の立ち回りはかっこよかったのですが、スローテンポの上に男女の惚れた晴れたがから満ちてるな、という印象。

 映画の後は、串カツや射的が目立つ、すっかり『大阪のふり』をするようになった新世界の町の外れの立ち食いうどんへ。通天閣は工事中で光ってませんでした。

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