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カラテとオカルトとパニックで70年代かよ! な7月の暑い日

 見ないときは全く見ないけど、今月は避暑も兼ねて映画館に飛び込むことが多かったのですよ。今回もまた、Twitter改めXの呟きを再編集、という手抜き工事。しかし、映画の感想を改めて構築し直すって大変な作業よ、映画評論家の人ってすごいなぁと思う次第。

7・19 ヴァチカンのエクソシスト

 悪魔の存在よりもなぜあのプロデューサーは日本マット界に詳しいのか? それが気になって『ヴァチカンのエクソシスト』を見た。ひげ面で暴れる高齢者は全部リーアム・ニーソンだと思っていたけど、これはラッセル・クロウだったよ。しかし、いつの間にか恰幅がよくなったな、ラッセル。

 『ヴァチカンのエクソシスト』はホラーというよりもお祈りアクション映画。暴力や銃撃並みにお祈りが効果的な映画もあまり見たことがない。あの『エクソシスト』はお祈り→暴力だった。いささか誇張されてるかもしれないけど、実話ベース。ヴェスパを駆って颯爽とやってくるラッセルクロウがかっこいいメジャーだけど小粒でピリリと辛い、Aのふりして実はBな映画、大好物。『ミーガン』とか。古城の地下に眠った悪魔を相手に神父バディが七転八倒、ラッセル苦労、そしてラッセル狂う! 悪魔憑きの大半は精神疾患等が原因で、100%悪魔の仕業ではない、という点もリアル。そしてラッセルの上司、どこかで見た人だと思ったらフランコ・ネロだった。おぉジャンゴ、いつまでも昔の名前で呼ばれるのは心外かもしれないけど、マカロニの立役者がいまだ健在だと嬉しくなる。『ジャンゴ灼熱の戦場』ではガンマンやめて修道士になってたなジャンゴ。ジャンゴがトップのヴァチカンなら悪魔も怖くない。続編がありそうな予感。余談ですけど、私の叔父は神父でしたが悪魔祓いはやってません。ただ、信州の山中でUFOを目撃し、ジープで追っかけたことがありました。

7・20『死亡の塔』『ドラゴンへの道』

 ブルース・リーの命日に、WBLC『死亡の塔』を見る。噂に聞いていたけど、ここまでリーさんがいないリーさん映画だったとは! お茶の出がらしを使い続けてたらいつの間にかコーヒーになっていた、ぐらいに別のものだと思えばいい。発掘された当時の日本公開版をそのままデジタル化、シネコンでフィルム傷だらけのデジタル上映を見るという、不思議な経験。

 『死亡の塔』はビリーローを演じるブルース・リーさんが途中で違う人になったりするからややこしく、さらに彼の死因を突き止めるために、弟のタンロンが日本に来る時点で、これはタンロンの主演映画だと思えばいい。フィルム流用、コロコロ変わる主役の顔、ブルース・リー界におけるオール怪獣大進撃。日本版主題歌『アローンイン・ザ・ナイト』がかっこいいのですが、世界一♪イッツオールライトを連呼している歌かもしれない。あと見どころは『ドクターモローの島』の看板の前に立つに立つリーさん、のそっくりさん。

 もうこれはブルース・リーのフィルムを流用したタン・ロン主演のカンフー映画だと思えばいいのだけど、当時『ブルース・リーの未使用フィルムがまだあった!』と欣喜雀躍したファンは複雑な気持ちだったでしょうね。

『死亡の塔』に続いて『ドラゴンへの道』を。これでWBLC全作鑑賞終了。あぁ、やっと本物がでた!  昨日はヴァチカン、今日はローマ。口角いっぱい吊り上げたリーさんのスマイル連発! コミカルさも増して、一番好きな作品かも。冒頭のレストランのくだりなんかカットせずに見せる、それはたぶん、コメディもできるよ、というリーさんの自信の表れかもしれない。スープ飲むだけで喜怒哀楽全てを出す俳優もそうそういないよ。吉本新喜劇的地上げ騒動にリーさんのカンフーが炸裂し、最後にチャック・ノリスとのコロシアムでの一騎打ち! これまでのチンピラではないチャックの登場に、リーさんは武人として向かい合う。準備運動から猫が見守る中での激闘は、何度見てもしびれるよ。何度も見てるのに『ドラゴンへの道』は終盤で『あんたが黒幕なの?』ってなるね。どんな技を繰り出して戦っても、リーさん映画は最後にちゃんと警察が来てくれる。香港版『死亡遊戯』も最後はリーさん逮捕されてたし。なんだか夏休み終わった気分スヨ。

7・23 超大怪獣大特撮大全集・電光超人グリッドマン30周年上映会。

 金かゴールド、まばゆい光のスクリーンに立つ電光超人。『復活!恐竜帝王』『もうひとりの武史』の二本に翔直人役小尾昌也さんをゲストにお迎えしてのトーク&サイン会終了。まさにいつの日も電光超人、大盛況でした。

 外では近所の神社でお祭りが催され、ヌーヴォでは30年の電光超人祭り。次元を超えて活躍するハイパーエージェント。ファンの熱意に外気温よりヒートアップする会場で繰り出されるトーク、そしてラフ。トークタイムはあっという間に過ぎていき、夢のヒーローはその痕跡をひっそり残し、去っていったのでした。

 今回は次男とその友人も臨時バイトとして参加。映画館のイベントで働くことの面白さを、うっすらと感じていた様子。

 そして、シネ・ヌーヴォでは

「シネ・ヌーヴォFROM NOW ONプロジェクト2023」

 を実施中。


 コロナがいったん収まり、その揺り返しが各地で起こっています、シネ・ヌーヴォもそのあおりを食らい、経済的に困窮しているとのことで、支援活動が行われております。詳細は

こちら

で。支援グッズじゃないけど、シネ・ヌーヴォの灰皿はずしりと重くていい感じですよ、超合金みたいです。

7・24 午前十時の映画祭・タワーリング・インフェルノ

 平日朝イチの映画館、やたらと人が多い。夏休みだから子供連れがよく来ているものの、慣れない自動券売機にてこずって時間がかかり、列ができている様子。ちびっこのお目当ては人魚姫か。そして珍しく連休がとれたので、グリッド疲れもさておき、まずは一番に見たいもの、とタワーリングインフェルノへ。先週はレッド・ペッパー・タワー、今週はグラスタワーに登る映画。脚本のシリファントも主演のマックィーンもブルース・リーのツレだから『タワーリング・インフェルノ』もだいたいリーさん映画

 もうこれはポール・ニューマンが『俺の言うたとおりに作らへんかったからや!』と怒鳴っていいぐらいで経費ピンハネして欠陥建築にしたらとんでもないことになる、という典型的作品。現実にもよくある話ですね。久しぶりに見たけど、火事になるのが早い! ビルオーナーのエゴを押し通したら死屍累々、今見ても迫力のある火事エフェクトと、もはやミニとは言えないグラスタワーの大ミニチュアによる大特撮等々、イヤというほど火事の恐ろしさを体験できる映画ですが、あのビルからビルへ椅子に乗って移動するシーン、あれも怖い。高所恐怖症でなくてもあれで脱出するのに躊躇してしまう。安全だと思っていた展望エレベーターが結局焔に巻かれるのも嫌だなあ。墜落死か焼死か、である。またホッとしたところに追い打ちをかけるように惨事が待っているのも嫌だなぁ。パニック映画はいかに人々がひどい目に遭って死んでいくか、どれだけ意地悪な演出ができるかにかかってるんですよ。だからポールニューマンとマックィーンの二大ヒーローが光り輝くのです。マックィーンの役名、オハラハンって日本人かと思ったよ。思い違いも甚だしく、最後はポールニーマンが貯水タンクに特攻すると記憶していたけど『地震列島』とごちゃ混ぜになってた。あと、ビルの窓からカーテンを結んだテーブルで外に出るシーンもあったような、いやそれは漫画版ゲッターロボだった。

7・26 アイスクリーム・フィーバー・山女・ぼくたちの哲学教室

 仕事上がりに映画を観よう。たまにはワルモノをやっつけたり、ビルが燃えたり、チャック・ノリスとコロシアムで戦わない映画でも見ましょう、となんばで『アイスクリーム・フィーバー』。バトルフィーバーではないよ。



 ポップでキュートでおしゃれで観念的で、文学的な会話が飛び交うふわふわした女子会映画、とでもいうべきか。それぞれに仕事と悩みを抱えた女子の群像劇で、ヤンキー漫画の教師並みに男子の登場人物が少ない、のはいいとして。この決めきめの画角に手持ちカメラに、予想外の行動に、文学的台詞回しは、なんだか90年代の自主映画、ミニシアター映画を観ているような懐かしさ。あれだ、しずるの映画コントだ、ジャルジャル後藤が出てたけど、しずるのコントだ。意味ありげでなさそうな台詞回しにキメキメのセット。二組の女子たちの行動を追いかけながら、最後にちょっとした仕掛けがあってびっくり、なるほどねぇ。パンフにも90年代について言及されてる。もう30年前だからね。いいところ住んで、いいもの食って、いい服着て、バブルの雰囲気もそうか、これだ、パンフの裏に書かれた文言が全てだったか。そういわれるとしっくりくる。

 しかしなぜこの映画を観たかといえば、職場に来ているパートさんの友達の娘婿がこの映画の監督さんなのでした。だからぜひ見に行ってあげてほしい、と。プチゴージャスな世界、悪くないですよ。おしゃれ映画に見せかけ、途中から銭湯映画になるのもよかった。そしてそこの主人、片桐はいりさんが来ていたのが、ブルース・リーのセーター! 先週から、ずっとリーさん映画づいておりますよ。そうだ、90年代はリーさんもオシャレアイコンだったよ、このぉ! でも本当のこと言えば、このパルコ出資のタイアップアイテムがそこそこにちりばめられたオシャレな雰囲気と本題に行きそうでなかなか行かない展開、あざとい演出の数々、意味ありげでなさそうな撮影効果の数々、PVかよ! な音楽の挿入に、初監督の瑞々しさ、遊び心を越えた憤りが体内を駆け巡り『グギギ、これは俺には合わんタイプの映画や!』と両サイドの手すりをぎゅぅと掴んでいました。

 ヒロインの一人がいつも持ってるオバQポーチと銭湯がなかったら、辛かった。あと、アイスクリーム屋のバイトリーダーがアイスクリームをないがしろに扱うな!  

 

 今日の二本目。信じあえる力と心をクロスさせて、父の叫びは波の音、近頃世間に流行るもの、X、X、ヌーヴォX! なんばで映画が終了13:25、果たして30分で九条につけるか? とバイク飛ばしたら10分で着いた。オシャレな渋谷の女子会映画から、今度は東北の寒村へ180度内容が違う『山女』を。

 18世紀後半、作物が採れず、貧困にあえぐ山村。村の汚れ仕事を一手に担う、村八分家族。さっきまで見ていたシャレオツ世界から一転、重く暗い世界だけど、こっちの方がしっくり来てます。間引いて流して、親に裏切られた少女の行く先は禁忌の山、そこにいたのは山男! タイトルは山女だけど、山男も出る、とは言ってもひげもじゃの森山未來ですが。改造人間の次は山男ですよ。村社会の恐ろしさ、貧困が生む集団の暴力、いっそ村から出ればいい。人扱いされないなら、いっそ人を捨てればいいだけのこと。ほぼ自然光のみで撮られたと思しき重い画面、少女は物の怪にすがる。

 『山女』は遠野物語に着想を得たそうだけど、魔神様のでない『大魔神』にも見えた。山男、あるいは山に愛された女と、それを生贄にささげんとする村人のお話。『神隠し』が悲劇ではなく神様に気に入られること、という解釈も面白い。山の神様との共存、神隠し等々、ジブリのアニメとはまた違ったアプローチ。人間のエゴのままに、生贄をささげたところで神様がいうことを聞くはずがないよ。『アイスクリームフィーバー』と続けて見ると、純粋な映画畑ではない異分野の監督が手掛けているという点が面白い。もう、そういう時期なのね。現代日本で悩みつつも生を謳歌する女子の姿を見た後、山女を見ると落差がすごいよ、アイス食えるだけましじゃないか! あと森山未來の山男は結構強い、さすが仮面ライダー0号。あれは浮浪者ではなく、やはり山の怪だったのでしょう。不思議なファンタジーでした。

 続いてシネ・ヌーヴォX『ぼくたちの哲学教室』。

 東北から現代アイルランドへ。小学校での哲学の授業をメインに置いたドキュメンタリー。小学生とはいえ、あっちのお子達はきちんと発言するし、ディスカッション慣れしてるなあ。哲学を教える校長先生もエルヴィス好きで、キャラが立っている。殴られたら殴り返すの? 学校生活の些細な出来事、生徒の悩みをくみ取り、ユーモラスに哲学の教えにつなげていく。ドキュメンタリーに大事なものは編集だと思うのだが、この作品は要点を押さえて、無駄を省いたカッティングが心地よい。子供たちのために奮闘する校長や教師たちが愉快で頼もしい。学校の外は紛争がいまだ残る世界。ストレスを抱え生きる人たち、ドラッグ、そしてコロナ。決して重くならずに哲学というものを観客にもわかりやすく伝えいていて、ぐいぐいと引き込まれる。しかし、今日見た三本、ジャンルがバラバラやなぁ。次は怪獣の出る映画を観よう。ゲームがトラウマだという子供に、自分はジョーズを見てからトイレいけなくなったという教師。しかしアイルランドの女性はみんなふくよか、で男性はもれなくステイサムな頭になっていくのか。これを見て、自分もアンガーコントロールしてやっていこ。いったん客観的になり、相手のことも考える。でも、それでも理不尽な目に遭った時は怒りの鉄拳を握るのさ、アカンやん。


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