見出し画像

16本の首が繋ぐメロディは

 恒例、大阪九条の映画館シネ・ヌーヴォの超大怪獣大特撮大全集、新年一発目は『日本誕生』『わんぱく王子の大蛇退治』の、実写とアニメという差はあれどどちらも日本の神話に題材をとった二本立て、どちらにもヤマタノオロチが登場するからその首合わせて16本、そして音楽担当はどちらも伊福部昭氏という共通項があります。

 

 『日本誕生』はこの上映会では二度目。短縮版での上映だけど、二時間というボリューム。オリジナルを熱心に見ているわけでもないので、どこがカットされたのかわからないぐらいに自然な編集がされております。

 神話時代のエピソードを挟みつつ描かれる英雄ヤマトタケルの物語。父親に疎んじられながらも国の平和のために西へ東へ行軍するヤマトタケル。東宝千本記念作品ということで、豪華オールスターキャストに、巨大セット、ミュージカルに大特撮、東宝が得意とするジャンル、見せ場が次々と繰り出されていく。

 スサノオノミコトのヤマタノオロチ退治は中盤の見せ場。重厚な音楽に乗って、鎌首をもたげるオロチに、身長差も何のその、果敢に向かっていくスサノオ。この物語を語るのが三船敏郎扮するヤマトタケルで、スサノオも三船。ミフネがミフネの活躍を語って聞かせる不思議な構成。そして後半のクライマックスは『ラドン』でも用いられた、本物の溶鉄をセットに流し込んだ火山噴火に大洪水の天変地異のスペクタクル。

 続いて『わんぱく王子の大蛇退治』は東映6本目の長編動画。

 緻密で流麗な作画で動き回るかわいらしいキャラクターたち。クライマックス、長居8本の首をうねらせ、時に絡ませながらスサノオを襲うオロチの作画は半年かかったらしく、気の遠くなるような作業だったのでは、と思われる。
 

 こちらもバックに流れる音楽は伊福部メロディ。『日本誕生』よりも音が厚く、前面に出ている気がするのは、ディズニー映画のようにある種音楽劇のような演出を心掛けていたからではないか、と思われる。

 クライマックスは伊福部メドレーの赴き、途切れることのない伊福部音楽に乗ってスサノオが天馬に跨り、オロチを討つ! かつて、なぜSF映画のサントラにアニメである本作の楽曲が収録されていたのか? と疑問に思っていたが、それは伊福部昭が音楽を担当していたからという至極単純な理由だけでなく、この映画が大人も子供も楽しめる一級のアニメ映画だったからということもあったんだろう、と見ながら再確認、そして実写でもアニメでも面白いものは劇場で見ると楽しさが倍増するな、と改めて思った。お客さんのリアクション、上映前のざわざわした雰囲気、休憩時間のトイレ行列、これら全部ひっくるめての映画体験、なのです。その雰囲気がたまらなく好きなんです。

 

 次回の超大怪獣は3月だけど、その間シネ・ヌーヴォでは大映4K映画祭で大魔神シリーズ、追悼大森一樹特集でゴジラVSビオランテ、ゴジラVSキングギドラが上映されるとのこと。怪獣・特撮映画が途切れないのです。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?