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紅蓮の対決、白と黒

 先日の『四谷怪談』に続き、今回も大映4K映画祭へ。たぶんこの先、三月いっぱいまでヌーヴォさんには通うと思う。回数券買ったほうがいいかもしれない。

 

 今回は『眠狂四郎無頼剣』。眠狂四郎シリーズは座頭市に比べて、それほど見ていないという印象。でも帰宅してから調べたら、結構見ていたし、今回の『無頼剣』もすでに見ていた。

 『四谷怪談』が水溜に移るお岩の姿だったように、トップシーンは地表、さる商家の石畳をなめるように捉え、移動していく。

 越後の石油精製の秘密、大阪での大塩の乱の残党が江戸で絡みあい、結び付く。草水(くそうず)とは何か? と思ったら原油のことなのです。灯油さえ生成できれば江戸の油資源もこれで賄えるがしかし、時の権力者がこれを阻んだ。かくなるうえは権力者たる老中水野忠邦を討ち、江戸の町を大火で燃やし尽くそう、というテロリストたち。そのリーダー愛染は子供には優しいが権力者には厳しい。自分の恩師の発明を奪ったばかりでなく、謀反人として処罰された恨みを抱き、テロを計る。

 愛染を演じるのは天知茂。冒頭、奪われた書類を強奪し、蔵の中に逃げ込み、子供とかくれんぼをしているように見せかけ逃げおおせるが、子供が何の警戒も抱かないところにこの人の優しさ、ジェントルな部分が出ている。でも権力者や敵対する者には悪鬼のごとき表情になる。しかし、蔵の中から
天知ボイスで『まーだだよー』とか聞こえてきたら、それはとても怖い。

 無頼の徒、と嘯く狂四郎も女子供には優しく、罪のない江戸の庶民をテロの巻き添えにすることは許さん! と立ち上がる。後で調べたら、この作品、原作者からすれば『こんなの狂四郎じゃない』と言われたそうだが、無頼かつ正義感にならざるを得ないのは、ライバルがあまりにも強力だからではないか、と思うのです。愛染は、江戸放火テロの企てだけでなく、狂四郎の円月殺法をもマスターしてしまう。黒い狂四郎に対して、白い愛染、二人が対峙する構図はまるでゴジラ対メカゴジラである。ヒーローと同等の技を使うライバルキャラという設定には燃えるものがありますが、実際江戸の町も燃えております。クライマックス、朧月夜を天に、燃える江戸の町を背景に、屋根の上で二人が向かい合うのをびしっと捉えた構図がたまらなく決まっている。そして繰り出される円月殺法対決からの剣戟! 

 眠狂四郎・市川雷蔵の佇まい、そして低音ボイスで繰り出される言葉の数々、どれもこれも決まっている。俗世にまみれながらも浮いている感じ、人であって人でない、でも人であろうとする、というか。
 
 今もなおファンが多いのも納得ですよ。

 シン

プルな大映トート購入。これで大映特撮トートと並べられるぞ、そして秘密の合言葉でミニシアターパークさんのミニシールもいただいた。
 
 次はいつ行こう、仕事のシフトと照らし合わせえT考えないと。


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