見出し画像

新年を覗く時新年もまたこちらを覗いて覗いているのだ

 新年あけましておめでとうございます。まだ四日しか経ってないのに、もう半年分ぐらいのあれこれが起こったような気がします。今年も元旦から映画館。まずは『映画窓ぎわのトットちゃん』を。なぜ今これを? と思ったら、ものすごい評判がいいので、見に行ってきました。

 正月はテレビに負けてはいけない、テレビを見るとだらだら居座り続けそうになる。自分の時間を作るんだ、と映画館。元旦の初映画は『窓ぎわのトットちゃん』。映画館は親子連れや高齢のお客様も多数。ちょうど今朝の新聞に黒柳徹子さんが『君は本当はいい子なんだよ』の『本当は』について語られていた。

 『ほんとうは』というと、実はよくない子だったのかな、というような意味の文章だった。子供目線の戦争は、いいも悪いも判別できず、フラットな視線で描かれるから、今の目で見るとぞっとするものがある。かわいい絵柄の裏側には、あの時の暗い何かがべったりと張り付いて、それを映像にしているような

 戦争以外にも悲しいことや楽しいことがある。映画はそれを生き生きと描いている。食わず嫌いはよろしくないね、と元日から思った次第。論評はよそでたくさんやられていると思うので、冒頭トットちゃんがチンドン屋さんに『ねえ、何か演奏してちょうだい』というシーンに後の芸人キラーの片鱗を見た! 

 『トットちゃん』見終わって、なんだか無償に『じゃりン子チエ』が見たくなった。まったくタイプも時代も違う親子のお話。冒頭だけ見ようと思ったけど、するすると全編見てしまった。テンポいいなぁ。あれか、露天商の物売りの口上が一緒(寅さんのあれ)だったからか。そして部屋が揺れた。

1・4『奴が殺人者だ』『切腹』

 今年初シネ・ヌーヴォ。橋本忍映画祭2024『奴が殺人者だ』。30年近く前、伊丹映画祭で天本英世氏がゲストの際、覆面上映されて以来の鑑賞。天本さんは本当に背が高くて、スペインのことばかり話してました。佐藤允さん、土屋嘉男さんが出ていたことをすっかり忘れていた。真面目な暗黒街シリーズ。

 ガス人間と電送人間がドクターフーを追う話。と書くとかなり乱暴ですが、土屋刑事と中丸刑事が殺人事件を追っていると、麻薬組織にぶち当たり、そこにはチンピラ佐藤さんがいたんですが実は……。そして中盤から登場、ヤク中の殺し屋、天本さんの禁断症状演技がものすごい。

『奴が殺人者だ』のタイトルロールであり『ヤクの殺人者だ』な、天本さん。最後はヤク切れで町をふらつく……と記憶していたけど、無関係なものが結びつく悲しい結末だった。一度事件を見せてから説明的に回想シーンを入れる手法は橋本脚本の定番なんですかね。

 シネ・ヌーヴォ橋本忍映画祭、新年から『切腹』。スタッフさんに『切腹!』と言わないと見れない。劇場で見るのはこれが初めて。昨年の大河ドラマ見ていたので舞台となる井伊家がどんな所かよくわかった。天下泰平の世は武名の誉れ高き名家だろうが、武士の面目をうわべだけのものにしてしまった。

 井伊家老三國連太郎と尾羽打ち枯らした浪人仲代達矢の切腹問答から徐々に真相が浮き彫りになり、ここでも回想シーンが効果を上げる。ガチガチで窮屈な武家社会の歪と虚飾を浮き出させ、真実が明らかになった時、浪人は静かに怒りを燃やす。狙う仇が実は……な、回想を応用した作劇が痛快。

 今回『切腹』を見て、これは江戸初期の話であること、仲代達矢は関ケ原や大坂の陣といった戦場を知っている人間であることをいまさら確認。なので、いくら武名の誉高く腕の立つ井伊家の家臣でも所詮道場剣法であり、実践剣術には勝てないということなんでしょうね。クライマックスの対丹波哲郎戦で仲代達矢が何度か見せた両腕をクロスさせる構え。あれはたぶんおそらく、自分に気合を入れる、仮面ライダー2号の『ライダーファイト!』のようなものだったのではないかと思われます。今年も貧しくても笑いの絶えない生活をしたいですね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?