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湖を割る神と呪いと愛に狂う人

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ネコ・パブリッシングEAシリーズ『LEGEND OF ガイキング』絶賛発売中。

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 さらにほんの少しお手伝いさせていただきました、CINEMA-KANレーベル『犬神の悪霊(たたり)オリジナル・サウンドトラック』も発売中!

 本当にほんの少しのお手伝いですが、初めてのCD仕事でした。前回、映画館で見て、おどろおどろしい和製オカルト映画にマッチングした怪奇サウンドに魅入られたところでしたが、ナイスタイミングで発売となりました。

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 さて、今回も京都みなみ会館・妖怪特撮映画祭へ。日替わり4本上映の週替わりなので、全部見れないけど、できるだけ見たいものは見ておこうと思ったのです。金曜日は『大魔神怒る英語吹替日本語字幕版』を。結局大魔神シリーズ三本とも見てしまった。しかも今回は英語吹替版という珍しいバージョンなのでこれは見ておかないと。

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 チョンマゲのキャラクターが流暢な英語を話すのに違和感を感じてしまいますが、こっちだって日本語吹き替えの西部劇を見ているわけで、向こうではこんな感じで日本映画を見ているのかな、と。湖のほとりの小藩を責める隣国の軍勢、その傍若無人なふるまいは小島に祀られた武人像をも破壊してしまう。そして乙女の涙が落ちるとき、湖を割って神が姿を見せる。『十戒』からヒントを得た湖を割って出現する大魔神という有名なシーンに、悪城主を追い詰めるクライマックスでの見事なミニチュア、違和感のない合成……と『大魔神逆襲』と同じことを書いてしまいそうになる。湖割りや湖底から鐘の音がする等シリーズ中ファンタジックな要素が一番強いと思われる。武人像が祀られた神ノ島の巨大なセットが圧巻。セットというよりもスタジオに島を丸ごと作った印象。

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 翌日は『四谷怪談お岩の亡霊』『牡丹灯籠』の古典怪談を二本。全部ではないけど、これまで作られてきた数々の『四谷怪談』映画を見てきたが、今回の佐藤慶扮する田宮伊右衛門のヒールっぷりが群を抜いている。他の作品だと、伊右衛門にも事情が……とかそれでもお岩さんのことが……と、フォローされがちなんですが、今回の伊右衛門は徹底的に悪役、大悪獣です。病身のお岩さんを気遣うことなく毒殺。赤ん坊は庭に埋めておけ、という非常っぷり。お岩さんが化けて出てもあれは女の業だ、ならば男は悪だ! と開き直るし、最後まで怖気ることなくお化けに斬りつけるし、そこまで行くと清々しいです。もっともこの映画に出てくる男たちは色と欲に狂った悪党だらけです。もちろんお岩さんのやりすぎなぐらいのメイクとか、髪の毛がぶち、ぶちっと抜けていく様子とか、怖いシーンももちろんあります。黒髪が蠢くオープニングから怖い。

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『牡丹灯籠』は幽霊と人間との悲恋を描くお話ですが、これはこれで怖い。下駄の音を響かせながらやってくるお露とお袖の幽霊。これが、ふとした瞬間、スーッと滑りながら移動しているのが不気味。これ以上彼女に会うと生気を抜かれ、自分も幽霊になってしまう。家の周りのお札を張って裏盆が終わるまで閉じこもる旗本新三郎。お札をはがすためにお露がとった手段が、人の欲望を狂わせて、悲劇を生んでいく。しかし悲劇だろうか、新三郎もお露に惹かれていたし、あの世でめでたく添い遂げられるならハッピーエンドかもしれない。ここでも人の欲望が悲劇を生んでしまうことになるのです。長屋のオープンセット、灯篭流しの池のセット、美術が豪華、そこで暮らす江戸の庶民の暮らしもリアル。山本薩夫、森一生といったエース監督にゲテモノといわれた怪談映画を撮らせるので、怪談だからといって安く仕上げない、普通の時代劇と何ら変わらない力の入れっぷりなのです。お化けでも座頭市でもその作り方は全く変わらない。日本映画の全盛期はどこの会社もこうして数々のヒット作や名作を生んでいて、それが当たり前だった時代があったのです。


そして来週は『釈迦』上映前のトークに参加することになりました。お時間のある方は是非。


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