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脳内混乱、珍ニンジャと真面目サムライ

 週の真ん中のド平日の休日。そんな時は映画をハシゴするぐらしかやることがない、わけではなけど、見たいものがあればふらふらと映画館に足が向いてしまう。バイクで10分ほど行けばシネコンがあるのでなおのこと。しかし、ハシゴするときはできるだけ違うジャンルのものを見たほうがいいかも、と昨日はニンジャとサムライの映画を見て頭がぐちゃぐちゃになりました。

 

『G.I.ジョー漆黒のスネークアイズ』はおもちゃからアニメ、そして映画へと『トランスフォーマー』のように拡張していった人気シリーズ『GIジョー』の最新作。とはいえ前作から10年近く経ってるし、『トランスフォーマー』ほど知名度が薄いかも。シリーズの人気キャラ黒忍者スネークアイズの誕生を描いた作品。なので正統のシリーズというよりもスピンオフなのです。

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 父の復讐のため地下格闘技界を流れる主人公が、日本人ヤクザに飼われ、さらに、日本の忍者組織にスカウトされるも……。今年の『燃えよデブゴン』『モータルコンバット』に続く珍日本紀行映画であり、最もヘンテコ度が高い作品。しかも地味顔の主人公が地下格闘技界で活躍していて、という冒頭は『モータルコンバット』と一緒だから後年混乱しそう。富士山がそびえる東京の空港に降り立ち、リムジンで向かった先はニンジャの屋敷、岸和田城。という描写から、もうこれは変な日本を楽しむものなんだと納得させられる。しかもところどころ本当に日本ロケを敢行しているから、余計おかしい、忍者屋敷を出た先は大阪京橋方面だったりとか、そりゃ編集のマジックでいろんな所でロケして違和感なく見せるのが映画ってものなんですが、現地を知っているから余計おかしく感じてしまう。渋谷を抜けたら岸和田、あぁ、これは東京都岸和田市という架空の街なんだなと思うことにしました。正義の忍者トミさんの下でニンジャ修行をする主人公、でもそれはヤクザの依頼によるスパイ活動だった。忍者組織にスパイってのがややこしいけど、嘘を見抜く能力を持ってる忍者マスターがそれに気づかないというのがおかしい、とか、もう脚本の粗を探す映画でもないので、めくるめく珍日本の忍者大戦を堪能することに徹する。寺社仏閣や大掛かりなセットを組んだ日本の描写にハイテクなニンジャ対決という違和感もまた心地よい。ハイテクとはいっても忍法火遁の術とか石垣が描かれた紙を持って隠れ身の術とか、やってることが昭和の忍者漫画センスなのも楽しい。忍者屋敷で巨大アナコンダを飼っているのは『なぜ?』と思ったけど、あれは児雷也とか大蛇丸がガマや蛇に化ける変身忍術のオマージュなのかな、と思ったりした。

 スネークアイズだけでなくGIジョーのオリジナルメンバーも登場するのだけど、一番強いのはニンジャ組織の頭領、石田えりだった。あんなにアクションをこなす石田えりを初めて見た。

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 続いて『燃えよ剣』こっちは本格的な時代劇大作、司馬遼太郎の原作をもとに、新選組結成から崩壊までを描く内容。こちらもロケとセットが素晴らしい。新選組副長土方歳三が過去を振り返るという構成で、百姓の悪ガキから武士へと変化していく様子を、池田屋事件や戊辰戦争といった見せ場を盛り込みつつ駆け足で見せていく。土方役の岡田准一のアクションは剣殺陣においても抜群の凄まじさであるが、素手の方が強いかもと思ったりもする。実際、岡田以蔵を見事なサブミッションで締め落としたり、後半で官軍相手に拳法っぽい動きを見せている。エンドクレジットを見ると岡田氏は自身の殺陣は地震でつけていたそうだ。なぜこんな人が今までアイドルやっていたのだろうか、岡田さんには早いところハリウッドや香港映画でその身体能力の凄まじさを披露してもらいたい。派手な斬り合いではなく、いかに確実に相手を落とせるかに絞った立ち回りが生々しい。チャンバラの華麗さとは程遠い、団子状態で息を切らせながら切り合う池田屋の描写は手持ちカメラの効果もあって、リアルに見えた。でもちょっとガチャガチャしている感じはする。パンフにあったけど、これ、原作と同じく二部構成だったら、もっとじっくりと見れたのかなと思ったりもした。水木しげる版『近藤勇』や『俺の新選組』を読んでいたので、知ってるシチュエーションがたくさん出てきた、そりゃ史実をもとにしているからね。新選組がいまだに人気なのがちょっとわかった気がする。前例のない、大混乱の幕末だからこそ生まれた異端分子の集団だから。

 国を変えようとかそんなことよりも武士としてケンカ屋として散っていった新撰組。彼らの理念は正しかったのか、結局官軍の天下が今でも続いているわけだけど、本当はどうなのかな。そのあとDVDで見た岡本喜八監督『赤毛』のセリフ『葵が菊に変わっただけ』なのかな、そんなことを思いつつ、映画の後に期日前投票に行くのでした


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