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拳と剣が交わす、哀しき邂逅

 先週のこと。またまた京都へ。『少林寺』で中国武術映画を堪能し、今度は香港カンフーへ。京都文化博物館『旅する時代劇』特集の一本『新座頭市破れ!唐人剣』である。久しぶりのぶんぱくには、九条から地下鉄へ。


ついてみると、翌日から開催の『鈴木敏夫とジブリ展』の内覧で長蛇の列が。


 それには目もくれず、三階のフィルムシアターへ。九条界隈は何となくわかるが、いまだに三条、四条といわれると地理がよくわからない。地図で見て、ああ、この近くか、となる。その日も上映前に寺町通りを歩いて中古レコード屋をめぐって時間をつぶす。

 劇場は年配の方で七割がた埋まっている。500円で過去の名作が見れるということもあり、博物館とうたいつつも隠れた名画座という雰囲気。

 久しぶりにスクリーンで見る座頭市映画である。いや、去年『座頭市物語』を4kで見ていた。今回は22作目であり、いささか手詰まり気味になってきた座頭市シリーズに新風を吹かせようと起用されたのが香港のスタージミー・ウォング。『片腕ドラゴン』も、ましてや『燃えよドラゴン』に始まる空手映画ブームが巻き起こる以前に、香港のカンフースターは日本の剣客と対決していたのだ。海外のスターと日本のスターの競演、いわば時代劇版『キングコング対ゴジラ』である。

 中国から渡ってきた隻腕の剣士と座頭市、二人の友情と、言葉が通じないことによって起こる誤解と対立を描く悲しいお話でもある。しかしそこは座頭市映画、ジミーさんはひょいひょいと宙を舞いつつ剣を振るって役人どもを切り倒し、座頭市は地を這うようにやくざ者をたたっ切る。二人の活躍を存分に見せた後で、最終対決へ。剣術とはまた違う、勝手の違う唐人殺法に翻弄される座頭市だが。いつものように善人だけが生き残るラスト、本来なら善人であるはずの彼を斬って、座頭市は一人寂しく去ってく。剣術対カンフーという異種格闘技は当時としても画期的な試みだったのでは。これがあったから『ドラゴン怒りの鉄拳』に大映の俳優、橋本力氏が香港に招かれた、かどうかは定かではない。今だったらドニーイェンVS座頭市になるのかな、見てみた。問題は座頭市を誰がするのか、なのですが、今度は市さんが中国にわたって、向こうの資本で撮ってみても面白いかも。

 冨田勲のバビョーンなシンセサウンドに、意外にも活躍場面が多いてんぷくトリオと、活劇シーン以外にも見せ場多し。

 そして寺町通りの中古レコード屋で購入した古本たち。また、ファンコレのゴジラを買ってしまった。安かったもので、つい。レコード屋の古本とは、蕎麦屋のカレーみたいなものである、意味はないけど。

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