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ハンブルクでの自作演奏会

2023年12月12日、ハンブルクのエルプフィルハーモニーにて、拙作のクラリネット協奏曲「鳥たちの対話 De Avibus Dialogum 」(2017年作曲)の改訂初演があった。リカルド・アッチャリーノ(クラリネット)、ヤルダ・ザマニ指揮、カンマーオルケスター・エルベによる演奏。この演奏団体はこのたび結成した新団体で、その第1回演奏会の1曲目が拙作ということになる。
指揮者ヤルダ・ザマニは、2017年に拙作の別の曲をヴィッテン音楽祭にてアンサンブルモデルン・アカデミーで演奏した。それで今回声がかかったのだが、コンタクトがあったのが4月で、こちらもいくつか候補曲を提示してクラリネット協奏曲が良いということになったのだが、弦楽の編成を変えてほしいというので、元の2 vn, 1 vla, 1 vc から 1 vn, 1 vla, 1 vc, 1 cb に書き換えた。2週間くらいで終わるかと思ったが、6年前と今とでは浄書家としてのスキルが段違いに上がっているので(それを可能にしたのがスリーシェルズ/オーケストラ・トリプティークのアニソンコンサートの編曲浄書であり感謝している)、今の目で見ると全パート譜やり直し、スコアも綺麗に書き直し、木管の四分音の指遣いを書いてないのは全部書き込み、それで結局2ヶ月かかった。それを仕上げた翌日の6月11日梅雨の最中、自転車が雨で滑って右肩を骨折し入院手術の憂き目にあい、現在に至るまでリハビリしているが右手が90度より上がらない。だから今回のハンブルクの道中も右手が不自由なままで行った。年明けに抜錨で再手術の予定である。

それはともかくとして、この曲は元々ローマ国立アカデミア・サンタチェチーリアの修了試験で書いたものである。担当教員はイヴァン・フェデーレだったが、ローマに限らずヨーロッパの音楽院や音楽大学は一般的に修了試験には担当教員ではなく外部の審査員が来るもので、この時はサルヴァトーレ・シャリーノが来てぶったまげたのだが口頭諮問ではえらく褒められた。その時以来の再演ということになる。
編成は cl solo, fl, ob, bsn, hr, trp, 2 perc, pf, vn, vla, vc, cb. 他に3管編成オーケストラ版もあるが、そちらは未初演である。


練習はハンブルク音大の練習場で2回行われ、あとは当日ゲネプロと本番である。初演も今回の再演(改訂初演)もソリストはイタリア人(別人)だが、今回のソリストは初演とはえらい違いで、実によく勉強してきていて感心した。昨日までヨーロッパツアーでオランダから飛んできたとか言っていたが、そうとはとても思えないしっかりとした準備ぶりだ。メンバーは多国籍でヨーロッパ中から集まったようであるが、指揮者のザマニはイラン人女性であり、他の作曲家もイラン人が2人いて2人とも女性、メインプログラムのイギリス人作曲家カーペンターのチェンバロ協奏曲のソリストもイラン人男性である。どうもその作曲家と兄妹らしい。一人だけ地元ハンブルク音大の教授の打楽器の女性がいてドイツ語だったが、あとは全て英語でリハーサルした。



エルプフィルハーモニーは2017年にできたばかりの新しいホールで、立派な建物であった。今回は小ホールしか入る機会がなく、大ホールには滞在期間中に適当な演奏会がなかったので大ホールを見られなかったのが残念だが、小ホールは壁が細かい木の板を波状に切り抜いており、音響効果は抜群であった。改訂初演は無事に終了し、良い演奏であった。自分で言うのもなんだがこの曲良い盛り上がり方をしてると思う。

プライヴェートとしては、初日9日は中央駅付近のクリスマスマーケットを歩いて湖と市庁舎を眺めてから移動し、ブラームス博物館を見学した。土曜日の夜で、翌日曜朝はリハーサルでミサに出られないので土曜夜ミサに参列した。この日しかまともに座って食べる機会は無い予定だったので、中央駅向かいの大衆食堂的なレストランでアイスバインに齧り付いたが


後から考えてみればハンブルクはハンバーグ(ラプスカウス)発祥の地だったのでハンバーグを食べれば良かった、と思っていたが、これはコンサート直前にエルプフィルハーモニーの楽団員食堂で食べることができた。
翌10日はハンブルク音大で午前中リハーサルの後、午後から州立美術館を見て、夜は州立オペラ劇場でワーグナー「さまよえるオランダ人」を観劇した。指揮はアダム・フィッシャー。
11日はまずエルプフィルハーモニーの外観を眺めに行って、写真を撮っていたら川沿いにちょうど連絡船が来て、市内交通一日券を買っていたのでそれで乗れるというので乗って思いがけず船遊びを楽しみ、


着いたところでアルトナ博物館で船の模型を見て、それからまた川辺に出て魚のサンドウィッチ(凄いボリューム)を頬張る。そのあとホテルに戻って夕方また出て楽譜屋を覗いてからバスで音大まで移動し、夜からリハーサル。さすがに疲れたので自分の番が終わったら残りを聴く体力はなく退散した。夜中にホテルに帰ったら何も食べる気力がなく、ホテルの自動販売機で即席スープを飲んだだけでバタンキューで寝た。
12日は本番当日で、午前中はホテル近くのスーパーで飲み水や土産を調達するに留めて体力温存し、お昼にエルプフィルハーモニー最寄駅のスタンドで普通のサンドウィッチを食べて会場入りし、あとはゲネプロと本番をぶっ通した。その合間に英語のインタビューのビデオ撮影があったりして、終わった後で打ち上げに行ったのだが、魚スープくらいしか食べる余裕がなく、白のグラスワイン1杯しか飲んでいない。今回ほとんど酒を飲まなかった。



13日は自分の本番が終わって自由行動日で、当初の計画では他の街も見たいからブレーメンにでも日帰り遠征しようかと思っていたが、完全に風邪をひいてしまいとても無理だったので、市内ホテルから空港前ホテルに移動するのが精一杯で、夕方まで寝て体力回復に努め、夕方からオペラ座までなんとか這って行ってプッチーニ「ラ・ボエーム」を観た。オペラ座の隣にハンバーガー屋があって、若者向けアメリカンな雰囲気だが、オペラの前に軽食を食べてコーヒー飲んで目を覚ますには都合が良い。
14日は5時起き6時ホテルチェックアウトで目の前の空港にチェックインし、そのまま飛行機に乗ってアムステルダム経由で帰った。



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