【デュエプレ】Nエクス調整録【バトルアリーナ9th負け語り】
9回目のバトルアリーナは5-2でドロップ。
使用したのは《ガロウズ・極楽・カイザー》入りのNエクス。
通常のNエクスの動きにプラスして、極楽を絡めた1ターン覚醒リンクによるフィニッシュプランをゲームプランに組み込んだ。
Nエクスについては既に色んな人が解説しているだろうし、極楽についても、シンプルなギミックゆえに解説不要だと感じているので、今回はこのリストに至るまでの調整や思考過程についてまとめる。
前提: Nエクスを学ぶ
「環境初期にめちゃくちゃ流行したけど、その後どんどん立ち位置が悪くなっていったデッキ」というのが、Nエクスに対する筆者の第一印象だった。
Nエクスを調整するにあたって、筆者はまずメタゲーム上でのNエクスの立ち位置とその変遷をちゃんと理解するところから始めた。
Nエクスというデッキは16弾の頃から存在するデッキタイプだったが、17弾環境直後に白入りの4C型が大流行した。
しかし、環境が進むにつれて徐々に使用率が低下していき、最終的にはシータ型の使用率が4C型のそれをやや上回る形で環境内3〜4番手くらいのポジションに落ち着いてしまった。
Nエクスの使用率が下がった要因について、調整メンバーの森忍さんなどに教えてもらいながら、筆者はまず以下のように理解を整理した。
4C型の問題点
鬼流院刃に不利
素早くリーサルを決めないといけない対面であるにもかかわらず、序盤のクロックの要である《超次元ホワイトグリーン・ホール》が刃側の《堀師の銀》や《ドンドン吸い込むナウ》に弱い
エイリアンに不利
打点がサイキックに依存しているため、《聖隷王ガガ・アルカディアス》が重い
5Cに不利
「少しだけマナカーブの重い方が有利」というカードゲームの原則
シータ型の問題点
4CNエクスに不利
スパークを埋め続けられるだけで負ける
プレーの柔軟性がない
マナ回収や盾追加といった選択肢がとれなくなり、攻めが単調
天門への相性認識が抜けていると思うかもしれないが、調整当初は現在ほどルドルフ天門が流行していなかったため、そこまで考えていなかった。
調整初期: 《超次元ガイアール・ホール》の発見
以上の認識の妥当性を確かめる目的に加え、シータ型と4C型どちらが良いのかを検討するために、実際にNエクスを回してみた。
筆者は4C型の経験は少しあれど、シータ型についての知見は全くない。
そこで知人からサンプルリストを借りてシータ型を試運転することにした。
何戦か回すうちに、Nエクスへの認識が大きく間違っていたことに気づく。
《超次元ガイアール・ホール》が想定の3倍くらい強かったのだ。
《熱湯グレンニャー》がなくとも刃には有利
シータ型の強みは《熱湯グレンニャー》によるビート戦術にあり、このおかげで刃に勝てるようになっているのだと思っていたが違った。
《青銅の鎧》と《超次元ガイアール・ホール》だけで事足りるのである。
まず《青銅の鎧》は、吸い込まれても出し直せる、《堀師の銀》を出されてもテンポ損しないといった理由で、初動兼打点として非常に優秀である。
《超次元ガイアール・ホール》は刃側が大量ブーストするタイミングでキャストするため場への定着率が高く、ひとたびキルが覚醒すると刃側の防御トリガーの1/2を機能不全にしながらセツダン+フォーエバーで簡単に4打点を生成できる。
結果的に《青銅の鎧》の1打点と《超次元ガイアール・ホール》の4打点、あとは《ボルバルザーク・エクス》や《勝利のガイアール・カイザー》を添えれば、条件の良いリーサルを簡単に組むことができてしまうため、刃対面は《熱湯グレンニャー》を入れずとも有利だということに気づいた。
ガイアールホール=赤いホワグリ
シータ型は防御札が無いから4C型のNエクスに対して絶望的な相性、というのは間違いだった。
《超次元ガイアール・ホール》がミラーにおいて強固な防御札として機能するからである。
《流星のフォーエバー・カイザー》はサイキック・クリーチャーによるプレイヤーへの攻撃を防ぐ効果があるが、《超次元ガイアール・ホール》から繰り出される《時空の喧嘩屋キル》+《流星のフォーエバー・カイザー》のパッケージをNエクスが除去するのは実は難しい。
まずキルを除去するために《超次元リュウセイ・ホール》をプレーする必要があるし、それだけではフォーエバーを除去できないので、そこから追加で《ドンドン吸い込むナウ》を撃つ必要がある。
上記のアクションをするには9マナ必要なので、《超次元ガイアール・ホール》が適正にプレーされる6マナ域の返しにこれらを除去しようと思うと、約2ターンかかってしまうのである。
こうして稼いだテンポを活かしてシータ側が先に攻める構図を作ってしまえば、4C側は早期に《超次元ホワイトグリーン・ホール》をプレーして遅延していく他ない。
こうなると4C側は毎ターン4マナを縛られる展開が続いてしまうだけでなく、スパークを仕込んで盾を詰めようにも《流星のフォーエバー・カイザー》のせいで攻撃ができないという状況に陥り、ズルズルと敗北する。
《超次元ホワイトグリーン・ホール》は受けの手番から徐々に攻めの手番へと立場を入れ替えるカードだが、《超次元ガイアール・ホール》は攻めの姿勢をとりながら守りを固めることで、相手に攻防の手番を入れ替えさせることを許さないカードである。
その意味において、《超次元ガイアール・ホール》は赤い《超次元ホワイトグリーン・ホール》である。
もちろん、序盤〜中盤にかけてシータ側がマウントをとれなかった場合は、4C側の勝ちパターンに嵌められて負けるため、シータが4Cに有利だとは言い難い。
しかしこの程度の差であれば練度でカバーできる範囲だと筆者は判断した。
事実、ランクマッチで当たった4C型のNエクスに筆者はシータ型で負けたことがほとんどない。
この時点で、Nエクスに白を足す理由は無いと筆者は判断した。
調整中期: 天門に蹂躙される日々
Nエクスのデッキの基盤が固まったお正月ごろ。
デッキ提出期限まで1週間を切ったタイミングで新たな問題が浮上した。
ルドルフ天門である。
このデッキ、刃に対して絶望的に勝たない点だけ除けば最強クラスのデッキパワーがある。
Nエクスにしてみれば、ハンデスもバウンス除去も天門も致命的、かつ盾から踏む天門をケアする手段がほぼ存在しないため絶望的なマッチである。
当時はプレイングも定まっていなかったため、調整グループ内のルームマッチでの勝率は体感2割を下回っていた。
そこからの調整はデッキ提出締切との戦いであった。
幸いにも、Nエクスの基盤32枚で天門以外の全ての対面と戦える自信があったので、自由枠は十分な枚数確保できた。
この8枚を活用して、十分なトリガー枚数と色基盤を確保しながら天門への回答を積まなければならない。
色んなカードを試した。
作ったNエクスのデッキ数は10を超えていたと思う。
調整末期: 《ガロウズ・極楽・カイザー》の発見
色んなカードを試すうちに、段々と自分の理解を整理することができた。
Nエクスは天門に構造上不利。ミッドレンジのゲームスピードだと、手打ち天門の速度にリーサルが間に合わない。「少しだけマナカーブの重い方が有利」というカードゲームの原則的にもこの理解は正しい。
天門の返しに2面除去できないとキツい。一方だけの除去では徐々にこちらのリソースが絞られてしまう。(≒GENJIやシューティングが回答になっていない)
以上の点から、Nエクスにコンボギミックを搭載することが必要。天門が刃に不利なのはコンボへの干渉ができないからである。ビートで勝たないならコンボで勝て。
「Nエクスにコンボギミックを組み込めないかなあ」と考えていると、1ヶ月前に投稿されていたあるツイートを思い出した。
ルドルフ天門は序盤の除去をバウンスに依存しており、デッキに含まれる除去らしい除去は《地獄門デス・ゲート》しかない。
そう考えると確かにシステムクリーチャー系のコンボは通りやすそうだ。
幸いにも今のNエクスには1枚でサイキックリンクまで繋がる《超次元ガイアール・ホール》まである。
いけるのでは……?
このアイデアをルームマッチで試したところ、確かに勝てるようになっている……
デッキ提出締切1日半前のことであった。
ありがとう後攻5割さん。
後日談: デッキ提出後
デッキ提出まで本当に時間がなかったので、数戦のルームマッチを経て極楽が有効だと判断した後は、大急ぎでリストの微調整を行い、提出した。
このとき筆者は自身のやらかした重大なミスにまだ気づいていなかった。
リスト提出後のルームマッチ。
なぜかルドルフ天門に全然勝たない……
確かに極楽がすんなり着地するとそのままゲームに勝つため、そこについてはリスト提出前に実施した練習通りなのだが、どうもなかなかそういう展開にならない。
そう、筆者は天門対Nエクスのゲームの要点を見誤っていた。
より具体的に言うと、どういうフィニッシュプランを用意しても《サイバー・N・ワールド》をキャストできない限りゲームにならないのである。
実はこのマッチアップ、とにかく《サイバー・N・ワールド》を何度もキャストすることが重要である。
ルドルフ天門から飛んでくるハンデスを凌ぎ、手札リソース上では互角の状態を維持しながら徐々にマナや盤面で優位を築くことが勝ち筋となる。
筆者が提案した極楽による1ターンサイキックリンクは、あくまでこのお膳立てのうえに成り立つギミックであった。
フィニッシュプランだけを重視した頭でっかちのチューニングの結果、何が起きたかというと…………
《サイバー・N・ワールド》に辿り着くまでに手札をスカスカにされて負けることが多発した。
このことに気づいた筆者たちは、とにかく《サイバー・N・ワールド》を大事にするプレーを心がけることで勝率の改善を図った。
例えばNエクス側が後攻のときは《ドンドン吸い込むナウ》よりも山札を掘る枚数の少ない《超次元リュウセイ・ホール》を優先してマナに埋める。
その甲斐あって勝率はかなり改善したが、この観点に立つと実は《ガロウズ・極楽・カイザー》は必須ではないということに気付かされた。
《サイバー・N・ワールド》にアクセスすることの方が、フィニッシュの確実性よりも大事だからである。
《ガロウズ・極楽・カイザー》の枠は、例えば盾天門のブロッカーがタップインして出てくる《永遠のリュウセイ・カイザー》、あるいは《サイバー・N・ワールド》にアクセスするためのリソース札でも良かったのかもしれない。
ともあれ、これでめでたくルドルフ天門への対策は万全となった。
大会直前に潜ったランクマッチでも、ルドルフ天門相手に思い通りのゲーム展開をして勝つことができた。いける。
そんな気持ちで臨んだ大会本番。
ルドルフ天門には一度も当たらなかった。
総括
今回のNエクスの調整は、以下のような思考を辿った。
ステージ1: 《超次元ガイアール・ホール》が攻守ともにNエクスの対応力を1段高めている。《青銅の鎧》も優秀であることから、色を抑えてシータ型にすることを積極的に肯定してくれる。
ステージ2: ルドルフ天門への相性がデッキ構造上不利。「生物を出す→次ターン攻撃」というオーソドックスなビートプランではまず勝てない。
ステージ3: ルドルフ天門が刃にガン不利なことから、Nエクスにコンボギミックを取り入れれば勝率が改善するという仮説を立てる。《超次元ガイアール・ホール》軸というデッキの基盤を崩すことなく取り入れられるコンボギミックとして、《ガロウズ・極楽・カイザー》を採用。
ステージ4: コンボギミックを取り入れただけでは不十分なことに気づく。ゲームの要点は《サイバー・N・ワールド》にあり、このカードを何度もプレーして継続的にリソースを確保することが勝つための大前提。
デッキをチューニングする際は、ゲームの要点を正しく理解した上で妥当な仮説を立てることが肝要だと筆者は考えている。
要点を理解しないまま闇雲にカードを探していては時間を無駄にするだけである。
今回のリストはステージ3の思考で止まったものになっており、対ルドルフ天門のゲームの要点を見誤っていたため、恐らく最適なチューニングではなかったと思う。
もう少し早くステージ4の思考まで辿り着いていれば、別のデッキリストになったかもしれない。
ただし大会本番ではルドルフ天門にこそ当たらなかったものの、《ガロウズ・極楽・カイザー》は大活躍だった。
極楽のコンボギミックは別にルドルフ天門専用というわけではないため、除去を《ドンドン吸い込むナウ》《勝利のガイアール・カイザー》《陰謀と計略の手》などに依存している現環境での刺さりはかなり良かった。
また、初見殺し性能が高いのもリスト非公開制というルールにマッチしていた。
より良いリストの可能性こそあったものの、極楽Nエクスのリストには概ね満足している。
以上がNエクス調整の過程である。
デッキの解説記事は多くあれど、デッキを調整するときの思考過程を整理した記事はあんまり無いような気がしたので、良い機会だと思ってまとめた。
今後も機会があればこういう記事を書こうかな。
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