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【デュエプレ】ディミ取物語

『ディミ取物語』は令和前期に成立したデュエプレ最古の物語である。
ディミ取の翁によって光り輝く札の中から見出され、翁夫婦に育てられた少女MRC姫を巡る奇譚となっている。

ディミ取物語の主要な話としては「MRC姫の誕生」「5人の卿たちからの求婚」「松浦さんからの求婚」「煉獄の都へ」が挙げられるが、今回は物語の始まりであり、かつ最も有名とされている「MRC姫の誕生」について現代語訳・解説を記す。


今は昔、ディミ取の翁といふ者ありけり。
野山にまじりて札を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
名をば、お清めの無理造(むりつこ)となむいひける。

今となっては昔のことだが、ディミ取の翁という者がいた。
山札に分け入ってカードを取っては、色々なことに使っていた。
名前を、お清めの無理造といった。

ディミ取の翁。
「よろづのこと」とは、主に通貨としてや遊び道具としての利用を指す。
当時、カードは朝廷から定期的に発行されるため価値の変動が激しいものであった。
そのため、貧しい家庭では山札を漁って不要なカードを回収し、生活の足しにする必要があった。
お清めトラップは山札が大幅に増え、漁りの手間を徒に増やすので無理なのである。

その山の中に、もと光る札なむ一筋ありける。
あやしがりて、寄りて見るに、絵柄光りたり。
それを見れば、三人ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。

その山札の中に、根もとの光るカードが一枚あった。
不思議に思って、近寄って見ると、イラスト欄が光っている。
それを見ると、三人ほどの人が、たいそうかわいらしい様子で座っている。

三人ばかりなる人。
イラスト欄が光ることは高レアリティの証とされており、高い市場価値がついた。
ディミ取の翁は山札漁りをしていたことからも貧しい家庭の出自だとする説が有力であるため、
イラスト欄が光っているカードは見たことも無かったと推察される。

翁言ふやう、
「われ朝ごと夕ごとに見る札の中におはするにて知りぬ。神になりたまふべき人なめり。」
とて、手にうち入れて、家へ持ちて来ぬ。
妻の蟲(わあむ)に預けて養はす。
うつくしきこと、限りなし。
いとをさなければ、籠に入れて養ふ。

翁が言うことには、
「我が毎朝毎夕見るカードの中にいらっしゃるのでわかった。(煉獄邪)神におなりになるはずの人であるようだ。」
と言って、手の中に入れて、家へ持って帰った。
妻の蟲に預けて育てさせる。
かわいらしいことこのうえない。
たいそう幼く小さいので、籠に入れて育てる。

ディミ取の翁の妻。
当時、虫は神の使いとして神聖視されていたため、この作品のように
「虫が神を育てる」という世界観は大衆に容易に受け入れられた。

ディミ取の翁、札を取るに、この子を見つけてのちに札取るに、包を隔てて、よごとに黄金の札を見つくること重なりぬ。
かくて、翁やうやう豊かになりゆく。

この子を見つけて以来、ディミ取の翁がカードを取ると、パックごとに黄金のカードを見つけることが重なった。
こうして翁は、だんだん富み栄えていった。

黄金の札

この児、養ふほどに、すくすくと大きになりまさる。
三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば、かみ上げなどさうして、かみ上げさせ、裳着す。
墓地の内よりも出ださず、いつき養ふ。
この児のかたち、けうらなること世になく、屋の内は暗き所なく光満ちたり。
翁手札あしく、苦しきときも、この子を見れば、苦しきこともやみぬ。
腹立たしきことも慰みけり。

この子は、養育するうちに、すくすくと大きくなっていった。
3ターンほどするうちに、人並みの背丈の人になったので、神(紙)上げの祝いなどあれこれ手配して、召喚の準備をし、裳を着せて、成人式をする。
墓地の中から外へ出さないで、大事にかわいがって育てる。
この子の容貌の気品があって美しいことは世にないほどで、墓地の中は暗い所もなくすみずみまで光輝いていた。
翁は、気分が悪く苦しいときでも、この子を見ると、苦しみもなくなってしまう。
腹の立つようなことがあっても、(この子を見ると)なごやかになった。

「かみ上げ」は神上げとする説と紙上げとする説があるが、いずれも「墓地からヴィルジニア卿で蘇生するための身支度、墓地肥やし」を意味するとされている。
また、ディミ取の翁は高笑いする癖で有名だが、その背景にはこの一節で述べられているようにMRC姫の存在が大きいと考えられている。

翁、札を取ること久しくなりぬ。
勢ひ猛の者になりにけり。
この子いと大きになりぬれば、名を、邪眼獣の太田を呼びてつけさす。
太田、煉獄邪神のMRC姫とつけつ。
このほど三日うちあげ遊ぶ。
よろづの遊びをぞしける。
赤黒はうけきらはず呼び集へて、いとかしこく遊ぶ。
世界の生物、貴なるもいやしきも、いかでこのMRC姫を得てしがな、見てしがなと、音に聞き、めでて惑ふ。

翁は、黄金の札を取ることが長い間続いた。
富裕な権勢者になった。
この子がとても大きくなったので、邪眼獣の太田に名前をつけさせる。
太田は、煉獄邪神のMRC姫と名づけた。
このとき、3ターン、盛大に歌舞の宴を開く。
さまざまな呪文を唱えた。
火か闇のクリーチャーなら分け隔てせず呼び集めて、とても盛大に催した。
世の中のクリーチャーは、高貴な者もそうでない者も、どうにかしてこのMRC姫を妻にしたい、結婚したいと、噂に聞き恋いこがれている。

邪眼獣の太田。
太田はその地域で権威ある神主だったと考えられており、翁の住む地域を中心に活躍していた。
また、本文では3ターンもの間色々な呪文を唱えたとされているが、これはMRCから唱える呪文で「インフェルノサイン+デッドリーラブ」の組み合わせで半永久的にMRCのメテオバーンを利用することで実現したということが時代考証の結果通説となっている。

参考


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