当事者でも問題点は分からないという話
現在Webディレクターとして働いている私ですが、少し他の人とは違う点があります。
それは『色覚多様性』です。
人によっては『色弱』だったり、あるいは『色盲』といった方が伝わりやすいでしょうか。
簡単に言えば、『人より色の差が見えにくい、分かりにくい』、『(マジョリティにとって違う色が)同じ色に見える』という目の状態です。
特に私の場合は、赤と緑(に当たる色)が見えにくいわけです。
この記事では、そんな人と少し違う特性を持つ私が考えたこととして、『Webサイトが抱える色についての問題は、当事者も認識できない』というテーマで書いていこうと思います。
先に断っておきますが、この記事はあくまで問題提起にとどまりますので、
何か結論をお求めの方は回れ右していただければ幸いです。
また、基本的には私の話=色覚多様性を基に話を進めていきますので、ご了承ください。
1 アクセシビリティとは?
まず、『アクセシビリティ』について簡単に触れておきましょう。
『アクセシビリティ』とは、簡単に言えば『情報にアクセスできること』です。
よく言われるUXの概念の基盤になるものでもあります。そもそも情報に触れることができなければ、体験なんてできるはずがありません。
最初の自己紹介で、私は『色覚多様性』で、『赤と緑が同じ色に見える』というお話をしました。
この自己紹介とアクセシビリティの説明を合わせると、「あなたもアクセシビリティがしっかりしていないと困る人なのね。じゃあどういうことで困っているの?」という疑問が浮かぶ方もいらっしゃると思います。
とても良い疑問だと思いますし、向き合ってくださる姿勢にはとてもありがたいと思います。しかし、この質問、結構答えるのが難しい質問でもあるんですよね…。
2 よく言われること『何が困るの?』
このような質問の何が困るか。それは『そもそも問題からして認識できていない』から、答えようもないということです。色覚多様性のマイノリティは、先ほど説明している通り、『同じ色に見える』という状態ですので、色分けされているのは分かるけれど見えないのではなく、色分けしているという事実から認識ができません。
特定の製品で説明してみると分かりやすいと思いますので、一つの製品を例にとって考えてみましょう。ここで取り扱うのは「Nintendo DS」です。任天堂の名作ゲーム機ですね。私も小学生の頃よく遊んでました(年齢がバレそうな記述)。
この製品の充電ランプは、充電があるときは緑、無くなってくると赤、そこからさらに充電が減ると赤点滅と変化していきます[1]。この色分けでは、色覚多様性のうち、赤と緑の認識が苦手な人は、充電があるのかないのか認識することができません。
そのため、私は親に言われるまで、充電ランプが『緑→赤』に変化していることに気が付いておらず、『点滅=充電のないサイン』と思っていた時期があります。ここから分かるとおり、『そもそも色による機能を認識していない』ということが、実例として存在しています。
この時の、充電ランプの色の違いを理解していない頃の私に話を聞いても、「充電ランプの色が見えにくい」という話は出てこないと思います。出てくるとしたら「充電ランプが光りだしてから充電が完全になくなるまでが早い」というところでしょうか。問題を認識していない結果、出てくるフィードバックも全く違ったことになることが想像できます。
3 どうすればよいの?
この後出てくる当然の疑問として、「聞いても問題点が分からないなら、どうすればよいのか?」というものがあると思います。
私から出せるアンサーとしては…
何にもありません。
冒頭に記載した通り、この記事は問題提起にとどまります。私は『どうやって問題を見つけるか』に明確なアンサーを持っていない以上、それを中途半端に出すべきではないと考えています。もしアンサーを持っていたとしても、適切な方法は場合によって違う気と思いますので、あまり単一の正解として出すべきではないかと思っています。
ですが、何も書かないのもそれはそれで無責任な気がしますので、あくまで私の考えとして、書いておきます。
私の考えとして、このような『色覚多様性当事者にも見えていないこと』は結局当事者に聞くのが一番と考えています。なぜなら、まず聞かなければ情報が何もないからです。
先ほどのDSの例で考えてみましょう。不満として出てきそうな内容は「充電ランプが光りだしてから充電が完全になくなるまでが早い」と予想しましたが、これは当事者に聞いたことで出てきた情報ですので、『その周りに問題があるかもしれない』とアタリを付けることに使うことができます。
一方、何も聞かずに始めた場合、ヒントが何もない状況で、色で困りそうなことを探す羽目になります。
基本的には、後者の方が楽ではないでしょうか。
結局は、「問題の根はヒアリングで出てくる」と思わずに聞くという対策が良いのではないかと(私個人の意見ですが)思います。
4 応用
『色覚多様性当事者は問題に気が付けない』というテーマでここまで書いてきましたが、このことは他のことにも応用できると思います。
例えば、音声読み上げなどを使用している人が、『情報を過不足なく受け取っているか』ということは、自分では判断ができないと考えられます。
上記はとりあえずで出したものですが、他にもさまざま考えられるのではないでしょうか。
少々長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。
[1] 任天堂さんの名誉のために記述しておきますが、DSi以降の充電ランプは青→赤に変化するように変更されています。めっちゃ見やすいです。