お祭り×マーケティングを考えてみる

日本は30万件もの祭りがあるお祭り大国です。
その中には資金面で課題を抱えているものもあります。
地域の祭りは金儲けのためにやっているわけではありませんが、赤字を垂れ流し続けていても続けることが難しくなり、大事な文化が失われてしまいます。
祭りを持続可能なものにするために、お祭りをマーケティングの観点から考える必要があると考えました。
祭りは、マーケティングの観点から、このような価値を持っているのではないかと考えました。

★企業や商品のプロモーションの場として祭りを活用することで、機能的な価値ではなく情緒的な価値に影響を与えることができそう。
★人の感情が動く「祭り」でプロモーションを行うことで、商品やブランドの記憶の定着を図ることができそう。
★差別化ではなく幅広い層へのリーチを重視する最近のマーケティングの考え方においては、幅広い層が訪れる祭りの場は相性が良さそう。

今回は、マーケティングの基本的な知識を学びながら、祭りとマーケティングについて考えてみたいと思います。

今回の教材

NewsPicksアカデミア
すべての「商売人」のためのマーケティング講座(ヤフー・井上大輔氏)
https://newspicks.com/academia/moocs/30

そもそもマーケティングとは

マーケティングとは、以下の4つの手順のことを言います。
・市場を定義する(誰に語りかけるか)
・価値を定義する(どんな価値を提供するのか)
・価値を創造する(価値をどう作るか)
・価値を伝達する(価値をどう伝えるか)

価値の伝達とは

マーケティングの最後のフェーズである、「価値の伝達」とは、以下のプロセスを上手に設計することをいいます。
1、気づいてもらう
2、覚えてもらう
3、好きになってもらう
4、深く知ってもらう(車など特に高額なものは必要度が高い)
5、選んでもらう(セールスプロモーション)
特に1〜3が顧客の意思決定のベースになっています。

市場の定義

市場の定義とは、「誰に気づいてもらうのか」ということ。どこまでがお客様でどこからがお客様ではないのか、線を引くことです。
別の切り口で考えるなら、誰が競合なのか?を考えることになります。
例)オンライン英会話ビジネスを行う場合
 ー(小範囲)英会話スクール
 ー(中範囲)社会人向け資格講座
 ー(広範囲)ビジネス本、ニュースサイトなども?

なお、市場を定義する際に考慮すべき点として、以下の5つが挙げられます。
1、市場の規模
2、市場の成長性
3、競合環境
4、自社の能力との親和性
5、既存事業とのシナジー
これらを各項目ごとに評価して、市場を定義していきます。

価値の定義

続いて、価値の定義です。どのような価値を提供していくのかを考えます。
具体的には、「将来的なあるべき姿」と、それにつながる「語るべき今」の2つを考えることになります。
この時考えるのは顧客にとっての価値であって、企業理念ではありません。
(例)
×(企業にとっての価値)世界一の英会話教室になる
○(顧客にとっての価値)友達感覚で講師と話せてストレス解消にもなる
価値は、以下の2軸の4象限で考える
(軸①)機能的ー情緒的
(軸②)実態があるー実態がない
ー機能的/実態がある(実利価値) 
 ー例)馬力がある車
ー機能的/実態がない(保証価値)
 ー例)壊れない車
ー情緒的/実態がある(評判価値)
 ー例)ベンツに乗っているとお金持ちだと思われる
ー情緒的/実態がない(共感価値)
 ー例)アップルは挑戦的なブランドである

★祭りが商品のプロモーションに関わることで、機能的ではなく情緒的な価値に影響を与えることができそう。

価値の創造

上記で定義した価値を、具体的な商品や広告コミュニケーションのコンセプトでどう表現していくのかを考えます。
例)友達感覚で講師と話せてストレス解消にもなる英会話スクール
ーストレス解消になる(実利価値)
ー人と人との関係を作る会社という企業イメージ(共感価値)
・商品設計、サービス設計に落とし込む
 ー講師の子供の頃の写真も載せる
 ーお酒を飲みながらでもOKな教室
 ーメッセージアプリでも予約できる
 ーカジュアルな口調で応対する
・広告コミュニケーションのコンセプトで実現
 ーCMのパターン、キャラクター

価値の伝達

最後に、これらの価値を伝達するステップは以下の5つになります。
1、気づいてもらう
2、覚えてもらう
3、好きになってもらう
4、深く知ってもらう(車など特に高額なものは必要度が高い)
5、選んでもらう(セールスプロモーション)
伝達手法は「広告(paid)」「自社メディア(owned)」「PR(earned)」。俗に言うトリプルメディアを組み合わせていく。

各工程で大事なポイントをコメントします。
1、気づいてもらう
 ーきょう雑物をかき分けて際立つ。時には奇をてらう。
2、覚えてもらう
3、好きになってもらう
 ー「人の記憶の構造を書き換える」ということ。並大抵のことではない。
 ー一方で、人の記憶は「感情の動き」を伴うと書き換わりやすい。
 ー人の心を動かすコミュニケーションを行うことで記憶の定着を図る。
★人の感情が動く「祭り」でプロモーションを行うことで、商品やブランドの記憶の定着を図ることができそう。
4、深く知ってもらう
 ー伝えたい「内容」「方法」に応じて、カタログを渡す、人づてに伝える、など様々な打ち手を整える
5、選んでもらう
 ー割引などで最後の一押し。

効果測定

価値の伝達の5項目は、そのまま効果測定に使うことができます。
1、気づいてもらう→〇〇を知っていますか?
2、覚えてもらう→英会話教室といえば?
3、好きになってもらう→どのくらい好きか?
4、深く知ってもらう→息抜きができるサービスである(5段階)
5、選んでもらう→使いたい、買いたいか?
効果測定は完璧ではありませんが、これらの調査結果をもとにマーケティング施策を調整していきます。

伝統的な理論と新しい理論

伝統的なマーケティングでは、「差別化」が重視されてきました。
差別化→独自のイメージが造成される→コアなファンがつく→ファンが増えることでブランド力アップ
伝統的なマーケティングでは、ブランドの差を、近くに寄って差を大きく見ていることが特徴です。
一方で、新しいマーケティングでは、ブランドの差を、遠くに離れて差を小さく見ます。(ベンツもBMWもカッコいい車だよね!)
いかにブランドを強くしてロイヤリティーを高めても、ブランド間のスイッチが避けがたく発生するものだ、という考え方です。このため、差別化に力を入れるのではなく、新しいライトユーザーをとることや、離脱しそうなユーザーを取り戻すことを重視します。(携帯メーカー各社のCMもそれを目的にしているのでは)

新理論に基づくと、マーケティング施策にも違いが出てきます。
・市場を広く定義する。
・1、気づいてもらう2、覚えてもらう3、好きになってもらう、の工程をより重視する。
→できるだけ広いターゲットに気づき、覚え、好きになってもらうことが重視される。
★価値伝達の初期フェーズを重視する新たなマーケティングの考え方においては、幅広い層が訪れる祭りの場は価値を発揮できそう。

まとめ

★祭りが商品のプロモーションに関わることで、機能的ではなく情緒的な価値に影響を与えることができそう。
★人の感情が動く「祭り」でプロモーションを行うことで、商品やブランドの記憶の定着を図ることができそう。
★価値伝達の初期フェーズを重視する新たなマーケティングの考え方においては、幅広い層が訪れる祭りの場は価値を発揮できそう。

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