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IT出身の老舗ハンコ屋が語る「ハンコ不要論」

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IT業界(デジタル)とハンコ業界(アナログ)の事を一定程度、理解した上で語る今回の「ハンコ不要論」。 色々と思うところがありますし、両極端の業界を経験したからこそ、見えてきた両者…
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#ハンコ

【2-2】 ハンコはなくせるのか?(意思の確認編)

結論:社会がデジタル化のデメリットを許容する場合、撤廃することが可能!しかし一方で・・・ 第一章のハンコ文化とサイン文化の比較はあくまでもアナログ文化の比較でした。 これは一長一短があり、優劣をつけるのは困難でした。 ではデジタルとの比較ではどうでしょうか? ここでは、アナログ文化を用いた認証の仕組みと、デジタル技術を用いた認証の仕組みを簡単に比較してみたいと思います。 これまで出てきた以下の2つのハンコの使い道の内、ここでは「②意思の確認」について、電子化が可能かどう

【1-5】ハンコにも『明治維新』があった!?

前回、江戸で庶民、とりわけ町人の間でハンコが広まったとお話しました。 (まだ見られていない方はこちらからご確認ください) その後、現代に至るまでハンコは使われ続けるのですが、実はほんの少しパワーバランスが違ったら日本も欧米同様に「サイン文化」になっていたかもしれないんです。 今回はそのお話をしていこうと思います。 時は明治初頭、日本社会の大転換がはかられた後、ハンコVS署名(サイン)の大激論が巻き起こったんです。 経緯をざっくり言いますとこうです。 a.「これまで花押(

【1-4】戦国武将の”イケてるハンコ”と江戸時代での”ハンコ大爆発”!

過去の投稿でも戦国武将が印判状を用いる事でハンコが再度、使われ出したということでした。 実際の武将達のハンコを見てみましょう。 それぞれの印はそれぞれの武将の個性がその言葉や形状に出ているように思いませんか? 戦が活況だった①~④の時代では、龍や寅といった「強さ」を象徴するような印を作られています。その後、天下が統べられた⑤⑥では、実用的で比較的地味な印になっています。 このようにハンコというのは、その「時代」や「人の個性」を色濃く表した道具だと私は思います。 また、戦

【1-3】ハンコって何の目的で使っているの?

唐突ですが、問題です! 答え: … …… ……… 1.本人が( 本人 )であることを証明するため 2.本人の( 意思 )を表示するため 皆さん正解できましたでしょうか? それでは、現代の印鑑の使われ方の前に、過去の日本での使われ方を見ていきましょう。 奈良時代の官印は「内印」と「外印」に分けられ、前者が天皇の印である「天皇御璽」、後者は前々回にも示した「太政官印」でこれは政府の印となります。 そして「内印(天皇の印)」は五位以上の位記に捺し、六位以下の場合は「外印」

【1-2】戦国武将がハンコを復活させたお話

なぜ再びハンコは復活したの?結論:花押を書くのが面倒だったから!? 前回のお話の中で、日本の認証史では「サイン(花押)」に置き換わっていた時期があったというお話をしました。 でも、一度衰退したはずの「ハンコ文化」が再度、復活することになりました。今回はこちらのお話です。 このハンコ復活の背景には、日本のハンコ史でいう④の時代における、 "2つの理由"が影響しています。これを見ていきましょう。 ③と④の間の時代というのは、日本の歴史の中でも苛烈を極めた時代、そう”戦国時

【序章】ハンコは必要か否か?

今回のパンデミックにより自宅勤務を余儀なくされた方も多かったかと思います。その中で巻き起こった「ハンコ不要論(脱ハンコ)」。 勇気を出して、結論から申し上げます。 私は「ハンコは不要」だと思います。 業界人として、かなり思い切った発言ですので、当然のように反発があることを予想しています。 それでも今回の不要論について、いち「ハンコ屋」としての意見を正面からぶつけることは、現代を生きる人々にとって有意義なことではないかと考えて今回の記事を書くことに決めました。 この結論に至