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【観劇note#1】遊劇舞台二月病 本公演『sandglass』

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次世代応援企画 break a leg 参加作品
遊劇舞台二月病 本公演
『sandglass』

@AI・HALL 伊丹市立演劇ホール
作・演出 中川真一
7月4日(日) 12:00回

出演者の高橋絋介さんのお誘いで観てきました。
(絋介さんありがとうございました🙇‍♀️)

感染対策に気をつけながら、久しぶりに伊丹AI・HALLに行きました。
ニットキャップシアターの『チェーホフも鳥の名前』以来だったのでは、、?てことは2年ぶり?
学生だった自分と今その劇団に所属している自分が再会したようで、とても不思議な気持ちでした。

さて、そろそろ作品のお話を。

ネタバレ含む、また、把握出来た限りの内容なので、配信を観る予定の方、まだ観ていない方はご注意ください!!

日本の戦時中〜戦後時代が舞台のお話。
実際に起こった事件と、スタインベックの『二十日鼠と人間』という作品がモチーフとなっているとの事でした。

登場するのは、ある一家と街の人々。
上演後のアフタートークで、お話されていましたが、実際の事件の内容が一家のストーリーに反映され、街の人々のストーリーに『二十日鼠と人間』が反映されていたそうです。

ストーリーはとても悲劇的で、誰も全く救われないお話でした。
一家の中では、兄が一向に認めて貰えないストレスと、天井が映るほど薄い粥ばかり与えられるストレスで主人夫婦にあたっていたり、妹の方は、主人と身体的関係を持たされていました。
街の人々は、人買いがいたり、妹と生き別れた復員兵が妹を探していて、実は人買いに買われて遊郭に入ったが、病にかかり酷い扱いを受けていたり。
(関係性がややこしいので、おおざっぱに…)

冒頭では、それぞれが、現状を何とか打破しようと立ち上がり動くのですが、どんどん苦しい状況に陥って、終盤にはどうにもならなくなってしまう。
まるで蟻地獄に飲み込まれていくように、足掻いても足掻いても地上に帰れないようでした。

次は空間のお話。

私は劇場に入ったら、まずチラシや当日パンフレットを読み、その後は舞台を眺める時間にしています。
舞台美術や沢山の照明の吊込を眺めて、
ここにどんな物語が立ち上がってくるんだろう。
どんな光が差してくるんだろう。
と想像するのがとても好きです。

今回の美術は、一家の部屋の間取り(ちゃぶ台がある1部屋と周囲に玄関や裏口のような段差)があり、
その周囲を二重の円が囲んでいて、さらに外側に街のバラックに見立てた?ボロボロの小屋の枠組みのような美術がぐるりと囲んでいるといった様子でした。
奥には、真っ直ぐに伸びた塔が大きな存在感を放っていて、開演前の薄く照らされた様子が何とも不気味でした。

私は最初二重の円が、水面を打つ波紋のように見えていました。
何か静かな場所で、大きな物語が起こって波を起こすような、そういったイメージがありました。
しかし、物語が進むにつれ、その解釈はだんだん変わっていきました。
まずは、登場人物が二重の円にそって舞台上を移動したり、進んでいくのを見て、円形にデザインされた舞台上でいう道になったり、先の見えない未来に進んでいく「人生のレール」のように見えていったのでした。

あと、最後の場面で、高さのある演出があって、
まるで砂が落ちて溜まってきた『砂時計』のようだと感じた瞬間がありました。
円形で囲まれた舞台で奥に高さのある塔が存在する。
これは、砂時計の中で再生されている「いつかあった話」なんだと体感した瞬間がありました。

『sandglass』の持つ意味、テーマ

今話した中にも少し出てきましたが、
今回の作品のタイトルは『sandglass』。
日本語に訳すと、『砂時計』

砂時計の砂が落ちていく時、まるで蟻地獄のように逆円錐形に砂が落ちていきますよね?
連想される「蟻地獄」が、登場人物たちの足掻いても足掻いても良い方向に帰ることが出来ず、より深みに嵌ってしまう様子を表していたような気がしました。

ただ、この救いのない話の中に私は希望も見出すことが出来たんです。

ラストシーンで、
戦火をくぐりぬけた塔を壊す事になった。
まぁ周りは焼け野原でボロボロだし悪目立ちするわなぁ。
という雰囲気になったあと、
全員が無言で塔を見つめる。その塔の先からたくさんの光がすーっと差してくる場面がありました。
まるで夜明けのように暗闇から光が差してくるのを見て、なんだか希望を感じました。

そして、妹のモノローグで(うろ覚えで申し訳ないのですが、)「ひっくり返すことは出来る。」という言葉が出てきたと思うんです、(確か。)
私はそれを聞いて、あ。砂時計だ。砂時計はひっくり返せばまた砂が落ちるのは続いていく。時間は続いていくんだ。と感じました。

なんだかそのふたつのシーンがすごく胸に刺さりました。

まとめ

今回の作品私はとても面白く観させていただきました。
どうしようもない悲劇性が、まるでギリシャ神話のようで、でもこれは昭和戦中戦後のお話。
毎度思うことですが、人間は変わらず不条理に巻き込まれてきたんだなぁと思います。

また、この作品にはあまり関係ないかもしれませんが、最近映画のようにシーンとシーンが隔離されている作品を見る機会が多いことを感じています。
この作品では、兄や主人が映画作家という設定だったからか、歌舞伎でよくある拍子木?的なものでシーンとシーンが「カンッ」と区切られている演出でした。
別の作品ですが、それも映画をモチーフにしたお話で、シーンとシーンの間にゆとりがある作品を見まして。

私はなんだかこういったシーンとシーンが明確に区切られている演出苦手だなぁということに気づきました。集中力が切れてしまってストーリーが掴めなくなってしまうというか、なんというか、、。

決して演出への文句とかではありません!!

作品は本当に心から楽しみました。
ワハハハと笑える作品では無いけれど、
そこに生きて足掻いている人々を見たというか、とても切ない作品でした。

あと、アルカディアでご一緒してる高橋さんのオールバック、荒々しい語気が新鮮でドキドキしました。
めちゃめちゃかっこよかったです。

まだまだ書きたいところですが、
これ以上は本出せちゃいそうなので、
また言葉が纏まってきたら整理してつぶやいたりしようかな。

長々と書き連ねましたが、
最後まで読んでくださった方、
本当にありがとうございました。

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