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「夏の陽炎」(後)


急に降り出した 夕立に

橋の下で 肩を寄せあう僕ら

雨に濡れた肩越しに 触れる温度



「いっぱい ぬれちゃったね」

僕を見る君の頬に 濡れた前髪からひと雫

「マオ、、、」

僕は思わず 抱きしめたくなった

大人たちがする そのように



僕の左の手が 君の肩に

「、、、だめだよ、リョウ」

「どうして?、、、マオをすきになっちゃいけないの?」

ひと時とじられた 長い睫毛に光る水滴



「リョウ、ボクは、、、ほんとうはおとこのこなんだよ?」

きれいな弧を描く 眉が悲しげに

「、、、ぼくだって、、、ほんとうはおんなのこなんだ」

「ぇ、、、」

「だから、、、なにもわるいことないじゃないか!」



激しい雨の音が 僕の叫びを消してゆく


激しい雨の水が 僕の叫びを流してゆく


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