ある弔辞 「早すぎやしませんか。」

あまりに早くご逝去された方の告別式に出席しました。弔辞がとても素晴らしかったのでうろ覚えで書きます。
細部は違っているかもしれませんが大意は合っていると思います。

心からお悔やみ申し上げます。

合掌

「早すぎやしませんか。」

「ただ、あなたがこんなに早く行ってしまうのには深い訳があるんだと思っています。

あなたと初めて会ったのは40年前。私は30の若者、あなたは14歳の中学生でした。

あまり注目もされない金八先生というテレビ番組でした。

非常にタイトなスケジュールでシビアな演技を求められる番組で、高校入試を控えた中学三年生も多い中、みんなには、とても苦労をかけたんじゃ無いかと思っています。
当時、同級生役の多くが受験に備えている時期でしたが、あなたは中学二年生でした。
年が明けてだんだんと番組のクラスがバラバラになり、雰囲気が悪くなり、ふくれっ面の生徒が増えて行きました。

中学二年生で受験生でなかったあなたは、そんな雰囲気を感じたのか、番組の収録を抜け出して、番組では同級生を演じている中学三年生のみんなの為に、合格祈願のお守りを買って、一人一人に渡して励ましてくれたのです。

あなたは誰よりも人と人とを結びつける特別な才能を持っていました。

そこからドンドンとクラスの雰囲気は良くなり、一致団結してゆきました。
番組の中の卒業式そして謝恩会では生徒たちの演技を超えた涙の姿が話題になり、視聴率も40%に迫り、本当の中学生と先生のドキュメンタリーのようだとの評価を得ました。

それはどんなプロデューサーでも脚本家でもなく、先生役の僕でもなく、あなたの人と人とを結びつける特別な才能がもたらしたもの、これは事実です。

僕はあなたはどんな事をしても成功する、そういう人だと確信をしていました。

あなたは余りに先に早く高い次元に行ってしまいましたが、それにはきっと素晴らしい理由があるんだと思います。

私もいずれ、そちらの次元に参りますので、待っていてください。

また、共演しましょう。」

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