JOKER

1時間半後に高校の後輩とバレーボールをする予定が入っているので、お腹の上あたりに溜まっているものを一気に噴射して身軽にしていきたい。そんな文章です。

めっきり文章という文章を書く機会が激減した。理由は明白で、仕事というものがおれの生活の大部分を圧迫しているからである。前回のnoteを見るとおそらく夏休み中に書いているようなのだが、例に漏れず今日は冬季休暇中なのだ。時間と精神の余暇が取れている時しか、文章を排泄する意欲すら湧かないことが大変悔しい限りだ。ここまでの言葉で分かる通り、おれの語彙と作文能力は著しく衰えてしまった。これは元来ハイスペックだったという意味ではなく、おれ自身が自分を寵愛できない代わりに自分の好みの作文をしていたのだが、そのような文章が自分の中からうまれなくなってきたという意味の方、である。しかし変わったのは好む対象物である私の文章だけではなく、好む側の私の思考も嗜好もおそらく変わってきている。一日ベッドから悶々と一歩として動くことができない日々からは抜け出した代わりに、その行為によって作動させられていた思考回路とその仕方をめっきり忘れてしまったようだ。おれの手元に残っているのは、安定した生活と、過去の思考による大量で気持ちの悪い成果物たちだけである。

安定した生活

なのかもしれない。彼女と同棲している。仕事で評価されて本部に抜擢された。給料もそこそこ貰えている。日経平均最高値の恩恵もモロに受けている。一年間一人暮らししていたので生活力も全く問題がなく、きっと一人でも問題なく生きていける土台の上に彼女と暮らせている。これこそがベッドのおれが望んでいた生活であり、自分の行動が作り上げた成果なのだ。
でもやはり違う。とははっきりとは言いたくない気持ちもあるのだが、でもただの現状への天邪鬼を考慮したとしてもやっぱり少し、違う。文章は書けなくなったし、思考はできなくなったし、飲み会での話題がほとんど仕事の話になってしまったし、小説は読まなくなってしまったし、時間があれば株価と仮想通貨をチェックするようになってしまったし、突然思い立って北海道とか行かなくなったし、こんなおれはおれじゃない。苦しすぎる。まったくをもってこんな自分に魅力を感じない。おれは常に「見せたい自分」を作り上げてそれを再現して顕在させてきた。だから引っ越しを手伝った友達の家でトイレットペーパーは三角に折ってたし、相手の分も靴は揃えてたし、そういう自分になりたかったから、見られたかったからそうしてきたのだ。その中の巡り合わせで極々稀に起きる、見せる自分ではなく、自分の殻を全て剥いた一番内側の自分をさらけ出し合うことに、これをおれというか五彩緋夏がそう呼び始めたのだが、その「魂の会話」に全ての快楽を求めていた。
それをしている中で相手の目線の動きで察してティッシュを取ったりその場にはいない会話場の人物の思考と発言を言い当てたり、病的なまでに察する能力が高くなっていたおれを、それは才能だよしがくん、私にはできないからほんとすごいよと言った人がいて、おれはその人を間違いなく好きだったので、いつまで経ってもこの頃の自分に魅力を感じてしまうのかもしれない。もう三年前のことである。
それからは狂ったように魂の会話を吹っかけまくった。幸いにもおれは狭く深くの交友関係なので、みんな優しくそれに付き合ってくれた。これは個人的に忘れられないのだがnoteで知り合って一回しかあったことないのに、一晩LINEで事象に対する客観的事実とそれぞれの主観を一切の遠慮なくぶつけ合えたこともあった。あの時期は気持ち悪い言い方をすれば生を実感できた。気持ち悪いね、いやマジで。これが性癖というものなのかもしれない。

毎日嫌な真実に気づいて絶望したり、布団を被って自分の世界で戦うことがほとんどなくなった。会う友達にも姉にも、なんか強くなったねとか言われてしまう。これを大人になるということと呼ぶのなら、ある種の納得感はあるのだけれど、現実のスピードに思考が追いついていない状況はやっぱり嬉しくなくて、おれの最高値は三年前の出来事から止まってしまっていて、まるでそれが寄り道であったかのように大きな軌道修正を強いられてしまった。安定した路に戻り、おれは今年中にプロポーズをするよう迫られているし職を変えてそこに一生ついていけるか見極めなければならないらしい。今年の選択が今後の方向性を決めるというと聞こえは良いが、おれからしてみればそれは手持ちの魅力的なカードを捨てる行為に他ならない。人生を遡れば遡るほど無限の可能性に満ち溢れていた。ある程度正しい取捨選択をしてきたつもりではあったのだが、ここにきてどうしても捨てたくないカードができてしまっている。しかしもうカードを使って上がることは絶対にできないのだ。ここにきて故人との記憶は更新できないことの重大さを受けとめているのかもしれない。

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