10.救われる出会い

 2016年、前年からの最初の治療薬として服用している「ジオトリフ」を継続してましたが、その服作用として現れた指損傷等の治療で皮膚科外来への通院も同時に続けました。しかし徐々にこの薬も薬剤耐性により効果が薄くなり肺腫瘍の大きさが再び3センチ大となり、またリンパ節への転移も再度見られるようになりました。

新聞、本等の情報で得た次の薬と考えられる「タグリッソ」を要望したのですが、医師は「貴方には効果はない。」との返答でした。
そしてこの「タグリッソ」に行きつくまでに今後しばらくの時間を要することになります。

告知から一年を経過し徐々に「これで良いのだろうか」という治療方法への疑問。
決して納得しているとは言い難く押し付け的な、そして今後の進め方、方向性も見えない治療に対し医療の素人として疑問に苛まれていました。
おそらく、標準治療という教科書通りの順番での投薬だったのでしょう。
そのような時期に会社で親しくしていた同僚からの紹介、アドバイスでふじ養生クリニック福岡の藤本先生を訪ねることになりました。
その同僚は私より数カ月前に癌の告知を受けて数か所の医療機関にて治療中でした。この折の紹介が私には生きる力、知恵、そして延命の機会を与えてくれた大きな出会いとなりました。

 先生は大学病院で多くの癌患者を診てこられ、国が推奨する「標準治療」の限界を感じられ、その後大学院医学研究科において免疫学の研究に従事され、化学療法と組み合わせ、自然免疫を活性化させたり、薬と生体の相互作用である薬理を最大限に発揮させる療法など「身体にやさしい、諦めない癌治療」を提唱、実施されています。
そのため、身体に負担が少ない低用量抗がん剤と分子標的薬並びに漢方そして高濃度ビタミンCとの組み合わせ等、幅広い薬剤治療法で患者の体力等に合わせた高い治療効果をあげられています。
「余命数カ月」や「標準治療ではもうここまで」等と宣告された患者の方達も多く、「もっと早く知って出会いたかった」「私の母に生きようという力が戻り、延命することもできた。」等の称賛の声も聞かれます。
また訪れるたびに待合室の患者さんたちの笑顔には驚かされます。
私自身はこの一年程、自分の身体におきていることや治療の流れも理解できていない状態で漠然とした癌治療に対する不安を抱いていました。それが約2時間に及ぶ初めての先生との面談、説明で私の「現在の状況そして今後の治療の進め方、また私には他にもいろいろな治療法が存在している」ことを初めて聞き、「まだ私には生きられる手段、方法が存在する」との思いで沸々と希望が湧いてきました
しかし、医師には先が見えるのでしょうか。
「もう治療法はありません。」などという言葉と医師の対応は患者が「生きる」ことを諦めていないのに、医師の方が率先して諦めの言葉を言うこと自体は身勝手なことのように思えます。
藤本先生からは「まだまだ大丈夫ですよ。貴方にはいろいろな治療法があります。使えるもの(薬)を体調に合わせて使っていけば良いです。余命僅かと言われた方が数年も通われています。元気で来年も、再来年も楽しいことを一緒にしていきましょう」等と私が落ち込むたびに勇気と希望を与えてもらう言葉をかけて頂きます。

医師が話す言葉に、良くも悪くも、患者の心は揺れてしまいます。言葉の力というものは大変に強いものです。医療について全くの素人の患者として、今後どのような治療が必要であり、また可能かなどをしっかりと説明を受けること、そしてそれをある程度ではあるが理解することで不安が笑顔となり一歩前へ踏み出すこともできました。
私は医師との「相生」というものが、いかに治療効果にも大きく影響するものかと思いました。大病院に所属しているとか高名とかではなく、人間としても信頼でき、患者と同じ目線に立って、いかに病と患者に向き合ってくれるか。そこで納得できる医療が生まれるのではないでしょうか。
また藤本先生はリハビリや緩和といったケアが必要な場合には信頼のおける医師や施設等を紹介して頂き、連携もとって頂きます。また移動が困難な患者さんには在宅(訪問)診療もなさっています。望まれる限りの諦めない医療を患者の身になり丁寧に行っていただける先生と出会って凡そ7年程、何度救われた事でしょう。詳しくは後章で述べさせていただきますが、私にとってまた多くの患者さんにとって「通りゃんせ」の鬼から救い出してくれる先生であると思っています。

 藤本先生からは、放っておかれていた脳の治療についても早急に必要との提言で紹介いただいた熊本放射線外科クリニックの水上先生他技師スタッフの方達にも感謝です。
ここでも身体に負担が少ないノバリスやサイバーナイフなどの最先端の放射線治療により腫瘍の消去をして頂き、命を救われてきました。

同じく先生からの紹介で顎の骨に異変が生じたところを助けて頂いた天神の望月歯科院長並びにご子息には親身に寄り添っていただき、またその後のメンテナンス等を担っていただいた松尾歯科院長共々感謝しています。

そして友人からの紹介のカイロプラティックの西先生。私だけでなく家族の皆が身体の歪みや体調の維持管理をお願いしてきました。

またガン告知以前からお付き合い頂いている友人達。
様々な体調の異変、病変に対し気持ちのサポート、笑い、希望を、与えてくれたり、私に異変があれば毎日のように激励メールを、また病院への送迎も時にはして頂いたり、大学の同級生で見るもの聞くもの全てが新鮮な話題を提供してくれる方等々、その他支えていただき感謝している方達は他にもたくさん。彼ら彼女らに恵まれ囲まれて7年越えの延命を続けさせてもらいました。

また患者の方達の気持ち、心は不安でいっぱいです。言葉の一言で右に左にと揺れ動きます。そのような時に周囲の方達から得る力強い励まし又は癒しの言葉は清らかなせせらぎのようで一息ついて、また小さな光を生きている証として発することができる気がします。それは初夏の美しく短い期間にも精一杯に飛ぶ蛍のようです。


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