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note版 落語見聞録 by 竹書房 2023年6月20日 三遊亭兼好独演会 『人形町噺し問屋 その102』日本橋社会教育会館

①『あいさつ』


 弊社で出版したまくら集『三遊亭兼好 立ち噺』で記述した通り、兼好師の独演会は、兼好師のスタンダップトークの「あいさつ」で幕をあける。前座さんの開口一番は、このあとの出番になるので、先に20分近く会場を爆笑させるトークを披露する兼好師匠のスタイルは前座さんにとっては厳しい修業の場となるようだ。
 今の様にお弟子さんが5人もいる前は、他の師匠や、団体から、前座さんに応援に来てもらっていた。思えば、2009年9月25日の人形町噺し問屋その6で、今では真打に昇進して『笑点』のレギュラーメンバーになった桂宮治師匠が、前座さんで応援に来ていたのが懐かしい。
 このころの兼好師匠は、こちらの変則的なスタイルではなく、開口一番はその名の通り一番に高座を勤め、この日の宮治師匠の演目は『初天神』だった。
 やがて、兼好師匠ははじめにトークで会場を湧かせるようになり、2010年12月17日の会では、開口一番の宮治師匠より先に兼好師匠は、「今年の十大ニュース」と括ったトークでドッカンドッカン会場を笑わせてから、当時前座の宮治師匠が開口一番で上がることになった。そのときの宮治師匠の第一声が、
「開口一番よりも先に上がって、20分近く爆笑をとるなんて、……演り難いったらしょうがない」
 と、高座でボヤいていたのを今でも思い出します。
 この日のネタは、『線香は、湿気をとる迷信」、『スシローペロペロ事件の少年の処遇について」など、季節ネタと時事ネタで、いつものように20分近く会場を爆笑させた。

立ち噺なので、所作が大きくて楽しい兼好師匠

②『九日十日』三遊亭げんき

最近入門した兼好師匠の五番弟子の”げんき”さん。前回から、開口一番は前座さんの二人体制になった。この一ヶ月で口調が成長していることが分かるので、本当に将来が楽しみだ。

五番弟子となった”げんき”さん

③『孝行糖』三遊亭けろよん

元々、フラがあって落ち着いている印象の若者だから、元気さんのあとに上がるとベテランの域に感じる。演った演目は『孝行糖』で、これも実に楽しい雰囲気だった。前座でこの出来栄えだから、二つ目になったらと思うと楽しみでしょうがない。


『孝行糖』を好演する三遊亭けろよんさん

④『もぐら泥』三遊亭兼好

この演目を兼好師匠で聴くのは、わたしは、はじめて。真面目に演れば演る程、泥棒が気の毒になってしまう噺だが、兼好師匠の手にかかれば、泥棒が追い込まれていく陰湿さはみじんも無く、高圧的になったり、懇願したり、態度がころころ変わる泥棒のキャラクターに引き込まれていく。サゲた後に爽快な感動があるほどの高座でした。元々高座にかける人が少ない演目なので、この日のお客様は幸せだと思いました。

この体制での熱演は、すごく大変そうだが、そんなことは感じさせない。珍しい演目『もぐら泥』

⑤ゲスト『コント』コント青年団

写真をノート掲載の許可をとる時間がとれなかったので、大事をとって写真抜きで紹介。刑務所帰りの組員と、先輩組員の爆笑ネタのコント。エンターテイメントの分野で、ヤクザものがドンドン扱いにくくなっているご時世の中、このネタは貴重で懐かしいです。

⑥『寝床』三遊亭兼好

やっぱり兼好師匠の落語は進化していると思わざる得ない好演。元々、兼好師匠が演る『寝床』が大好きなのですが、この日の『寝床』は噺の枝葉のマイナーチェンジや、順番の入れ替えなどが、すべてハマっていて、よく知っている噺なのに既視感が薄く、新鮮に聴くことが出来た。で、やっぱりこのセリフ「敵に背中を見せませんでした」は、最高のフレーズ!

旦那の義太夫をめぐる長屋の住人と使用人の右往左往が実に愉快。

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