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「デジタル看護入門」看護のDXに必要な100のポイント

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数年前から、「看護教育のDX」を研究テーマとして活動している筆者が、できるだけわかりやすく「看護とICT」について解説していきます。実際の看護学校で活用できるようなさらにポイント… もっと読む
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#訪問看護

「デジタル看護入門」第18回 〜在宅における点滴管理とICT〜

 前に中心静脈栄養の点滴についてお話ししましたが、今回は輸液ポンプの説明をします。輸液ポンプは人工呼吸器と同様に、ほぼ病院などで使用されますが、在宅療養で決められた量や速度で点滴を行う場合、在宅でも輸液ポンプを使用することがあります。  輸液ポンプは、ひと昔前までは、機械も大きく、音もうるさく、きちんと点滴のルートを機械につなげても、すぐに「気泡」や「閉塞」などでアラームが鳴ったり、再確認しても、アラームが鳴り続けたりと、なかなか管理が大変でした。いまでは、さまざまなセンサ

「デジタル看護入門」第17回 〜在宅での吸引処置とICT〜

 在宅療養で人工呼吸器を使用している場合、同時に必要な医療機器として、痰を排出させるための「吸引器」があります。「吸引」の頻度は、個人差はありますが、基本的に体位交換と一緒で、2時間おきには行うケアのひとつです。介護者の負担もあり、患者さんの苦痛も大きい医療ケアとなります。  そこで、まだあまりメジャーではありませんが、低定量持続吸引が可能な「自動吸引システム」が、少しずつ実用化に向けて、開発がされています。今のところ、ALSや筋ジストロフィーなどの神経難病の患者さんのよう

「デジタル看護入門」第16回 〜在宅での栄養管理とICT〜

 前回までは「呼吸器」関連の話でしたが、今回からは「栄養」関連の話をします。人工呼吸器と同様に、ひと昔前までは、点滴いわゆる「持続的静脈内注射」をしている状態で、在宅療養することは、非常に困難でした。今でも、一般の方々は、点滴や人工呼吸器を使用している状況で、自宅に帰ることができるなんて、あまりイメージができないのではないでしょうか。在宅療養における、いわゆる「点滴」による栄養管理を行う場合、少し特殊な中心静脈栄養法(Total Parenteral Nutrition:TP

「デジタル看護入門」第15回 〜在宅医療とICT その2〜

 前回に続いて、在宅における酸素療法について、お話しします。 ★HMV(Home Mechanical Ventilation:在宅人工呼吸療法) 在宅人工呼吸療法とは、呼吸器の慢性疾患や、難病などにより、神経・筋疾患など障害があり、呼吸の補助が必要な患者さんに対して、在宅で人工呼吸器を使用する治療法です。前回、説明しましたが、HOT(在宅酸素療法)は、自分で呼吸ができるが、ガス交換が不十分のため、酸素を補う治療法で、このHMVは、呼吸そのものが自身では難しいため、その補

「デジタル看護入門」第14回 〜在宅医療とICT その1〜

 前回の最後に、在宅療養をしている患者さんにも人工呼吸器が使用されているというお話をしましたが、今回は、在宅医療における医療機器、とくに呼吸器系の解説をします。いくつか種類がありますので、簡単にご紹介します。 ★HOT(Home Oxygen Therapy:在宅酸素療法) おそらく呼吸器系の疾患の患者さんの在宅療養で、一番歴史のある療法かと思います。昔は、機械ではなく、直接、あの大きな酸素ボンベから直接、酸素吸入を行っていましたが、現在では、空気中から酸素を取り出す、吸着

「デジタル看護入門」第10回 〜聴診器とICT〜

 聴診器は、日常的に医師や看護師さんが医療現場で用いられている、ごく身近な医療機器です。聴診器は、開発されてから、約200年ほどの歴史がありますが、実は今まで、あまり進化してこなかった、ある意味、めずらしい医療器具でもあります。といいますのも、おおくが患者さんの呼吸音や心音を直接、聴診器で聴診する方法に、あまり不便を感じていなかった部分もあり、聴診器を使用する医療従事者もある程度、限られていたため、あまり新しい技術の投入や、聴診器の改良などが行われなかったという背景があります

「デジタル看護入門」第8回 〜脈拍測定とICT〜

 今回は、バイタルサインのひとつであり、循環器系などでは重要な「脈拍」です。おおよそ看護師さんは、患者さんの手首にある橈骨動脈に直接触れて、脈拍を測定していることでしょう。自動血圧計や酸素飽和度測定器(サチュレーションモニター)などでも脈拍数が表示されますが、ほとんどの場合は、直接、いまでのアナログで測定しているのが、この「脈拍」かと思います。  最近、流行しているウエアラブル関連では、腕時計タイプのもので脈拍が測定できるものがあります。「心拍数」と表記しているウエアラブル

「デジタル看護入門」第7回 〜体温計とICT〜

 今回は、主流の電子式体温計と、コロナ禍で一躍有名になった非接触式体温計の2種類の体温計のメカニズムを解説します。  電子式体温計には、おもに「サーミスタ」という、温度が変わると電気抵抗が変化する電子部品が使用されています。この温度変化で抵抗値が変わる作用を電子回路により数値化して、体温測定時に、測定値を表示します。  測定方法としては、予測式と実測式の両方ができる電子式体温計がほとんどであり、実際の体温を測定する「実測式」の場合、ある程度の時間を必要であり、おおよそ数分