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それは遠い海の向こう

ワンテンポ遅れる電話の向こうから「香港にいるぞ」と父親の言葉が聞こえる。それはもう20年前のこと、まだ国際電話に数百円払っていた時代の話だ。私の父親は香港に赴任しており、時折届く絵葉書で見る街の景色が何より楽しみだった。

いつか行ってみたい。

自分のお金で旅行ができるようになった最近でも、海外旅行というのはとても手続きが難しいものだと思っていた。だから私は大学や会社の手配する研修でしか海の向こうへ行ったことがなかった。それがちょっとした勢いで、憧れの土地を訪れることができた。とある友人のおかげだ。生きているとよいことがある。

なんだかんだとヤケクソになりながらも、学生も仕事も続けてきた。それはひとつの成果なのだろう。だから、これは自分へのご褒美旅行だ。こうして海際に立っていると、自分は街の夜景と海が好きなのだとよくわかる。そういうことに改めて気づく機会も、あの狭い日常にはなかなかない。

また来たいなぁ、と後ろ髪をひかれつつ。私は香港を後にする。またいつか来よう。できれば年越しをここで迎えるとか、そういうのがいいなぁ…。

頂いたご厚意は、今後の撮影・取材に活用させて頂きます。 どうぞよろしくお願いいたします。