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ある日の帰り道

ボーイングB787のエンジンがうなりをあげて、滑走路から飛び立った。瀬戸内海の夕焼けを機窓から眺めつつ、iPhoneで写真を撮る。いつも変わらない習慣で、そのために窓側座席を取っている。

帰省するたびに、次第に地元の感覚が鈍くなってきているように思う。離れて10年を超えた。上京後から四年間は年3回帰省していたが、コロナ禍から急激に帰省回数が減った。その頃を境に結婚や転職で県外へ出る人も増えた。

風景も変わる。全国的に都市開発が進んでいるのは日々の全国出張で体感しているが、そのなかでも突出しているように感じる。帰るたびに変わりゆくターミナル駅前、気がつけばできている大きなスタジアム、タワーマンション。

自分の見知った景色や知人はどんどん減っている。帰省してもどこに行けば良いのか、今一つわからなくなってきた。離れてわかる良さもたくさんあるけれど、帰省してもぼんやりと街を歩くくらいになっている。

その場を離れた以上、維持しなければ自分の居場所はなくなるのだ。

昔の知人の中には、30歳前後に自分で事業を起こした人が何人もいる。立ち上げに加えてコロナ禍での地獄を見てでも、そういう人たちに続いた方が良かったのかもしれない。不自由でも自由だったかもしれない。

水平飛行に移ると、台風が近いからか積乱雲が。ラピュタみたい。
今回はJALでの帰省(マイルがあったので)。スカイタイムというブドウジュースがとてもおいしかった。
雲ですねぇ。

1時間もすれば着陸体制のアナウンスが来る。千葉の房総半島を周り、ゲートブリッジを眼下に羽田への着陸コースに入る。JALは着陸前に消灯してくれるので機窓からの景色が撮りやすい。スカイツリー、ゲートブリッジ。見慣れた東京の景色が広がっていた。

個人的には、東部のほうが東京感ある。いつものドライブコース。

思えば3年前に思い切って転居して、それから人生は割と好転した。あっという間の3年だった。そろそろ環境を変える頃合いなのかもしれない。

慣れない1タミの景色。

着陸後、なんとなくすぐ帰る気にならず、2タミの展望デッキにあるHUBへ。外でビール飲みながら、ぼーっと飛行機を眺められる。周りも1人のお客さんがちらほらおり、HUBは注文も気楽なので好き。

最近はフィッシュ&チップスのフィッシュがシュリンプになっており、ちょっと時間がかかる。

帰るとき、電車に乗るのがちょっと億劫。それで一休みする習慣が着いてしまった。空港まで車で来てしまえばいいのだが、今はマイカーもない。

なんなんだろう、この10年。失ったものの方が多くないか。それとも得たものへの実感がないのか。

自分の欲しいものと、目指したものがミスマッチしていた。それに気がつくのが遅すぎたのだと思う。

モヤモヤとしながら街へ戻る列車に乗る。ないものばかり追っている気がするけれど、どうしようもない。


頂いたご厚意は、今後の撮影・取材に活用させて頂きます。 どうぞよろしくお願いいたします。