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Yahoo!ニュースに掲載された件

取材依頼はとつぜんに

2月4日、知る人ぞ知る広島のディープスポット、ソーシャルカフェ ハチドリ舎の安彦さんから久しぶりの連絡があった。中国新聞から電気料金の事について取材がきていて、電気の契約先であるテラエナジーにも取材したいと言われたので対応してもらえないかとの事だった。

そもそもテラエナジーは、情報をできるだけオープンにしたいと思っているので、記者さんが不誠実な態度でない限り取材にはできるだけ応えている。ただし、条件が1つだけある。それは「何故、関心を持っているのか」という事を記者さんにお尋ねして、その答えが納得できるものであるかどうかというものだ。

記者さんの取材対応は誠実だった

いつもの通り、記者さんに取材の意図をお聞きすると、「電気料金が高くなった背景について知りたい。その上で電力市場や電力業界の課題を記事にしたい。電力自由化で再生可能エネルギーが増える事を応援しているが、今回の高騰がブレーキになってしまわないか心配している」とのこと。その様な内容であれば、ぜひ記事にしていただきたいと思い、取材を受け、おおよそ、次の様にお答えした。(以下、電力市場の高騰についての説明はややこしいので読み飛ばしてもOK。詳しく知りたい方はお読みください。)

〇テラエナジーの電気料金は、電力市場の30分毎の価格をそのまま反映させる【市場連動】プランである。そのため、電力市場が異様な高騰をしてしまったことがダイレクトに影響してしまった。(※現在、テラエナジーの電気料金は【市場連動プラン】と【固定単価プラン】の2つから選択する事ができる。)
〇厳冬による電力需要の増加の影響を強く受け、さらに、液化天然ガスの安定的な調達ができなくなった大手電力会社などが燃料を節約するために出力を低下することで、電力がひっ迫してしまった。
〇電力のひっ迫状況を受けて、電力市場に卸される電気の量が減ってしまう懸念が強まったことで、不安に駆られた事業者が買い争うことでとんでもない高値で取引される様になり、電力市場が異常な高騰を続けてしまった。背景にあるのは不安であり、非常に人間らしいふるまいの結果だと思う。実際に、1月11日以降は電気は十分に市場へ卸されていたにも関わらず、高値を更新し続けていた。
〇株式市場のようなストップ高になるような制度もないため、青天井に上がってしまい、はじめての経験ということもあるのか監視機関などの関係各所の対応が遅れに遅れ、実に3週間も異常な状態が続いてしまった。
〇1月19日に取引情報が公開されたとたん、市場は落ち着きを取り戻し、一気に例年並みの市場価格へと下がった。

詳しくは、気候ネットワークの豊田さんに聞く②「電力市場価格の高騰の原因と、再生可能エネルギーへの影響」をご参照。


記者さんは熱心に取材してくださった。記事にする際にも、電力市場がまだ5年目の未成熟であることが大きな課題である事、再生可能エネルギーを普及する目的であるFIT制度が市場の高騰を想定できていなかった事など、課題について取り上げたいとの事であった。

Yahoo!ニュース、こわっ。

3月3日、友人からYahoo!ニュースにテラエナジーが出ているとの知らせを受けた。記事のタイトルを見てギョッとした。【「電気代8万円、ぎゃー」利用者衝撃 新電力料金急騰、想定外 背景にLNG不足】とあったのだ。いやいや、、、このタイトルだとどう見ても新電力はヤバいという意図に見える、、、。実際、コメント欄を見ると明らかに電力自由化への批判と大手電力会社の方が安心だとの意見が大勢を占めていた。

またかと思った。過去に、意図や事実を曲げて報道されたことが何度かあり残念な思いをさせられてきた。もちろん、そうした報道をした記者さんには直接のクレームを入れ、具体的な対応を依頼するようにしている。今回もすぐに記者さんへ電話して、記事のタイトルと内容についてその意図をお尋ねした。

記者さんいわく「内容は取材時の意図通りに書いたつもりだ。しかし、タイトルには確かに違和感を感じる」との事だった。Yahoo!ニュースのタイトルは記者さんが付ける事はできないそうだ。Yahoo!ニュースが記事を読んでキャッチ―なタイトルを付けているのだという。実際、中国新聞の紙面では全く別のタイトルを付けているそうだ。

記事の内容は確かに応援の気持ちを感じるけど、、、

確かに、記事を丁寧に読めば、記者さんの思いが表現された内容になっている。それにしても、タイトルが煽りすぎだ。そこで、記者さんの「電力自由化で再生可能エネルギーが増える事を応援しているが、今回の高騰がブレーキになってしまわないか心配している」との思いを持って書いた記事が、全く逆の影響が出ているのではないかと指摘させていただいた。特にタイトルがミスリーディングになっているとお伝えすると、意をくんでくださって、タイトルを変更できないか交渉していただける事になった。

今回も痛感したが、Yahoo!コメント欄における新電力への風当たりはなかなかに厳しい。反対に大手電力会社への絶大な信頼は凄い。今回の電力のひっ迫と電力市場の高騰は、大手電力会社に有利なルールが大きく影響している。それにも関わらず、新電力や電力自由化への批判ばかりが集まり、大手電力会社への批判はほとんど起こっていない。

みんなでより良いエネルギーの仕組を作っていきたい

わたしたちの生活の基盤である電気の事だから、皆さんにも本気で考えて欲しい。

大手電力会社をあたかも公的な機関の様に扱い、そこに任せておけば安心だというコメントが散見された。しかしながら、大手電力会社は、水道局などとは違い、もちろん公的機関ではない。1950年に国策として地域独占を許され優遇され続けてきたとはいえ、あくまでも民間の営利目的の会社である。もしも、本当に大手電力会社にだけ任せておけばいいという見解が国民の総意であるならば、電力事業は国営化へと向かうべきだろう。

ご存知の通り、日本はすでに電力自由化へと舵を切っている。これにより期待されている事は、サービスの多様化、公正な取引による電気料金の適正化、自然災害に柔軟に対応できる分散型の電力システムによる電気の安定供給などである。

今回は、電力市場の異様な高騰という電力自由化による課題が浮き彫りになった。電力市場は、まだまだ5年目のよちよち歩きの未成熟な状態といえる。今こそ、今回の異常事態を起こした制度の不備を丁寧に分析して、同じような事が起こることがない様に、適正なルールを作っていかねばなならいと強く感じている。

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