ルードヴィヒとネコの話

子どものころ、ほんの一時期だけピアノを習っていた事があった。
そう広くない部屋にピアノが4台と暖炉と4-5匹のネコがいる個人教室。
元々は姉のピアノレッスンに一緒に連れられていき、僕はそこで姉のレッスンが終わるまで入り口横のベンチに座って、たまにすり寄ってくるネコを撫でたりしていた。
多分母さんはその間買い物か何かに行っていたんじゃないかと。
アメリカは子供を1人家や車に置いていくとネグレクトと通報されたり、最悪誘拐されるとかでそうしていたんだと思う。(今思えばそんな犯罪が起こるような街ではないのだけど。スーパーに買い物に行った時、一緒に周るのがめんどくさくて姉と2人車の後部座席の足のスペースに隠れたりしていた。)

とにかく、流石にレッスンが終わるのをただ静かに待つだけの時間が何回もあると僕もいい加減飽きてきて、目の前にある事と言えばピアノしかないから僕も弾きたいと習う事にした。

そこで初めて自分で弾けた!弾けて楽しいと思ったのがベートーベンの曲だった。(初心者の子供でも弾けるものすごく簡単にアレンジされたもの)
それと共に、当時家に手塚治虫の【ルードウィヒ・B】という漫画の単行本があって、それも凄く好きで何回も繰り返し読んでいた。
この作品、ベートーベンを主人公とした創作伝記物の体裁をとりながらもう1人、フランツという男を軸にフランス革命戦争の話も絡んできたりかなり面白い。ベートーベンが聴力を失うきっかけとなったのが子供時代、このフランツという男に耳を酷く殴られたからというぶっ飛んだ解釈からはじまり、二人の人生が幾度となく交差してさあこれからどうなる!という所で未完で終わってしまい(手塚治虫が死の間際まで執筆していた)本当に残念。漫画だけどハードカバーでまるで重厚な辞書のような装丁も、子どもの頃から好きだった。
てなわけでベートーベンには幼いころから他のクラシック作家より少し特別な気持ちがあったりして。時計仕掛けのオレンジのアレックスよろしく。

結局2-3年くらい、日本に帰国するまでピアノは習った。(年に数度進級試験みたいなのがあり、そこでアラジンのア・ホール・ニュー・ワールドが弾けるようになってピアノ人生は終わった。)

ピアノ教室であと覚えているのは、バスルームに水槽があって大きめの出目金ばかりを大量に飼っていてそれがなんか怖くてトイレを借りたくてもあんまし借りたくなかった事。(今でこそ出目金かわいいと思うけど当時は目ん玉飛び出てる〜!て)
あと僕も姉もネコアレルギーを発症して涙鼻水垂らしながらレッスンを受けてたなあ。
2人ともネコは大好きだけど、その後も姉はネコとは暮らせず、僕は今涙鼻水と格闘しながらネコと暮らしている。

ここで得た教訓は【ネコアレルギーを憎んでネコを憎まず】。

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