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純白

自分を持ってる人ってカッコイイなって思う。自分を持ってるっていうそれは、信念やこだわりといった人として譲ることのできないその人の生き様みたいなものだ。

僕の周りにも人としてカッコイイなって思う人が沢山いるが先日また一人、そんな存在の男性と出会った。場所はセブンイレブン。

仕事の日の朝、その日のお昼に食べるおにぎりをセブンで選んでいた。おにぎりをはじめ、巻き寿司や一膳ご飯などお米商品の棚は色とりどりの商品が並んでいる。何十種類もある商品の中から今日のご飯に頭を悩ませる時間は小さな幸せだ。

ヘッドホンから流れる音楽に足の指だけリズムに乗せ「んー、、、」と悩んでいると、横からスーツ姿の男性がスッとやってきて『すいません』と軽く会釈をしながらおにぎりを手に取った。こちらも軽く会釈をして少し横にズレたその時、僕はその男性に衝撃を受けた。

その男性が手に取ったのは“塩おむすび”だったのだ。

「嘘だろ、、、」
もしかしたら声が漏れてたかもしれない。

数あるレパートリーのおにぎりの中から純白の塩おむすび。具は?味付けは?僕は30年生きてきて塩おむすびを買ったことは記憶の限りおそらく無い。衝撃の瞬間を目の当たりにしてざわ..ざわ..ざわ..と伊藤カイジみたいに額に汗が垂れる感覚がした(実際は垂れてない)。

カッコ良すぎる。。。

数あるおにぎりの中から混じりっ気無く光り輝く純白の塩おむすびを手に取る。これこそ真の男だ。具入りを選ぶ僕なんてクールポコのネタで『モテようとして〜』とフリに使われる方の男だ。完全にやっちまってる。『男は黙って、塩おむすび!』だ。

僕は結局その日、いつものように炒飯のおにぎりとネギとろの巻き寿司を手に取った。完全に僕の負けだ(何が?)。レジに並ぶと目の前でその男性がお会計を済ませていた。スッとコンビニを後にするスーツの後ろ姿に拍手を送りたい気分だ。

この男性はきっと心も綺麗なことだろう。汚れのない透き通った心。そう、おにぎりコーナーで煌々と光り輝く純白の塩おむすびのような。真っ直ぐな信念を持ったカッコいい生き様。

全て勝手な妄想に過ぎないが。

僕も迷いなく真っ先に塩おむすびを手に取るカッコいい男になりたい。ただ塩おむすびを手に取る、こんな簡単なことなのにそれ以降未だに買えていない。結局具入り。ありのままで勝負できないダサい具入り男だ。

拝啓、スーツ姿の純白の男性。
直ぐにとは言えません。来月、いや来年。もしかしたら5年くらいかかるかもしれませんがきっとあなたに追いついてみせます。あなたのように塩おむすびに迷わず手を伸ばす純白の男に。カッコいい大人になってみせます。

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