2022年9月①

みなさんは、「めちゃくちゃ大きい」と「めちゃくちゃ小さい」では、どちらの方が面白いと思いますか?
或る対象物のサイズが、規格外に「めちゃくちゃ大きい」状態と、規格外に「めちゃくちゃ小さい」状態では、どちらの方がより面白いと感じるか、という話です。

「ものによる」と言ってしまうと元も子もなく、そもそも面白さというものは対象そのものの状態がどうであるかだけでなくその状態に至る文脈や受け手側の状態、解釈等によって如何様にも変わるものであり、一概に判別できるようなものではいので、こっちが面白くてこっちは面白くないと選別すること自体が意味の無い行為であると言われれば、僕は何も言い返すことができません。僕自身が面白いということに対してこう思っているから。

なのですみません、「どちらの方が面白いですか?」というのはあくまでも文章の導入とするための言い回しでしかなく、「どちら」というのを議論して結論を出したいわけでは特段ありません。ただ、単純に、あるものが、想定の範囲外にめちゃくちゃ大きいことで面白く感じられる場合と、めちゃくちゃ小さいことで面白く感じられる場合は、どちらの方がより高頻度で起こり得るのか、その面白さの程度がより高大になり得るのか、というのは、僕自身昔からぼんやりずっと考えてることであり、それぞれにどういう性質の面白さが内包されているのかというのを突き詰めていくことで、100%の結論づけはできなくとも、どちらの面白さがより多く、強く響かせられるか、という真理に、少しずつ近づいていけると思っています。


とは言いつつ、強いてどっちかっていえば、「めちゃくちゃ大きい」のが面白いという人が、多いのかもしれない、というのが、今のところの僕の何となくのイメージです。もしかしたら僕の思い込みもあると思いますが、何となくそっちの風潮が主流をはしっているような印象が漠然とあります。

たしかに「めちゃくちゃ大きい」というのは、そのビジュアル的派手さから、それ自体に強いパワーをもっている場合が多く、受け手側の経験値の大小に関係なく、非日常というか非常識というか、とにかく尋常でない有様である印象を与えられるので、面白いと感じさせる力を強くもっているように思います。本来の大きさと比較してということだけじゃなくて、めちゃくちゃ大きいのが正規の状態であるものだとしても、見た目のインパクトだけで十分異常で面白いですから。そういう意味で、受け手の知識や経験の多寡によらず単純にそれだけを見て面白いと感じられるのが、「めちゃくちゃ大きい」であるように思います。そういう意味で、「めちゃくちゃ大きい」はより広範囲に、そしてより高頻度で、面白さを発揮できる力を兼ね備えていると言えるでしょう。

この時点でもうかなり「めちゃくちゃ大きい」に分があるような気がしてきました。が、僕は敢えてここで、実は「めちゃくちゃ小さい」こそ、とんでもない面白さのポテンシャルを秘めているのではないか、ということを、標榜していきたいと思っております。


「めちゃくちゃ小さい」のもつ性質として、特に人為的に小さく作られたものである場合、それは製作物としてめちゃくちゃ手が込んでいる、というのがあると思います。実物の何百何千何万分の1のミニチュアとか、ちょっとズレるかもしれないけどお米に写経するヤツとか、めちゃくちゃ小さいものは、小さければ小さいほど、とてつもない細かな作業だったり精巧な技術によって生み出されていると言えます。それでいて、めちゃくちゃ小さくなってしまってはもう本来の機能を果たすことができるものは少なく、ただ、めちゃくちゃ小さいものを作れるという技術の証明の代物でしかなく、実用性はほぼ皆無であると言えると思います。僕はこの、本来の機能を果たせなくなって完全に無駄な存在となることに、「めちゃくちゃ小さい」の面白さが詰まっていると思うのです。

この論拠に関しては僕自身の好みによるところも少なからずあり、お笑いの種類もそれに対する好みもいろいろある中で僕はいわゆる「スカし」というか、フリを余裕で下回ってくるお笑い、がっかりボケみたいなのがかなり好きな方で、この「めちゃくちゃ小さい」ことにおける製品としての無駄な感じ、とてつもない技術と時間と労力をかけて作られた割に実用性皆無という拍子抜けな感じが、めちゃくちゃ「スカし」の笑いを地でいってる感じがして、その意味のなさに何ともいえない愛しさと切なさがあり、心強さは全く無く、めちゃくちゃ面白く感じてしまいます。

勿論実用性という意味ではめちゃくちゃ大きいものも全然ないってこともあると思いますが、やっぱり「めちゃくちゃ大きい」ことの存在感のありまくる感じ、ビジュアル的な派手さがひとつの存在意義として成立している感があるに対し、「めちゃくちゃ小さい」ことの地味さ、こっちが意図的に見に行かないと詳しく認知できないのに知ったところで特に役には立たないという感じに、とてつもない哀愁を見出して、面白さをじんわり感じてしまいます。


以上の独断をもって、現状僕としては、敢えて立ち位置をはっきりさせるとしたら「めちゃくちゃ小さい」のが面白いと思う側に身を置くことになります。ただ、冒頭述べているように、面白い・面白くないという感覚は不変ではなく、そのときどきの感情や立場、前後の繋がり如何で全然変わるもので、一様に決めてしまうのは正しくないので、今後スタンスが変わる可能性は大いにあるという点を、再度ご留意いただければ幸甚です。
僕が今ここまで「めちゃくちゃ小さい」の面白さを熱弁してるのだって、今月初めに観たデレマスのライブで演者の方が首から下げてたカメラがめちゃくちゃ小さかったのがめちゃくちゃおもろかったっていう直近の印象によるところがデカいだけな気もしてますので。

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