2022年11月①

先日、職場の人数名と話をしているとき、何の気なしに僕が言った「へたしぃ」という言葉に引っ掛かられてしまい、どうやらその場にいた人らの中で誰もこの言葉を知らなかったらしく、文脈で言わんとしてることは伝わったものの確実に標準の日本語ではないということで、審議の結果この「へたしぃ」という言葉は関西弁である、と処理されました。

僕は大阪でこそないけど関西で生まれ育ち、上京してもう10年以上経ちますが、基本的には今なお関西弁を話す生活を続けています。決して珍しいことじゃなく、関西弁に関しては寧ろどの地域に移住しても直さない方がスタンダードになっていると思います。よく、上京しても方言を直そうとしないのは関西人くらいだと、それだけ関西人は我が強い、悪く言うと傲慢な人種であると揶揄するときの好例として取り沙汰されることもあったように思います。最近は多様性の時代だからなのか、ただ単にあるあるとしての鮮度が落ちているからなのか、あまりこういうことも言われなくなってるかもしれませんが。

関西人は自分が関西人であることが好きで誇りに思っているから関西弁を貫き通す、というのは、所謂県民性のひとつとしてはあるんだと思います。ただ、これは決して必要十分条件というわけではなく、関西弁を直さないからといって、自分が関西人であることの優位性を主張したがるようなイタい奴ではない、ということは、ご理解いただきたいところです。こう言っているということは、僕自身、関西人であることの自己主張で関西弁を直していないわけではないんです、ということなので、それも含めてご理解いただきたいところでもあります。

じゃあ、そういう自己主張ではないんだとして、何で関西弁を直さないのか。その理由は完全にひとつで、「通じるから」です。マジでこれでしかないです。

いくら語尾とかイントネーションが違ったとしても、同じ日本語だし通じるんだったらわざわざ矯正する必要ないというのが僕の思いで、そういう意味では、関西弁に限らずどの地方であっても、わざわざ標準語に矯正する必要はないと思っています。ただ、それこそ沖縄とか、東北の奥の方とか、マジで何て言ってるのかわからない方言も存在するので、関西弁だから通じるという点は大いにあり、これに関してはこれまで関西人のレジェンドたちが全国に関西弁を浸透させてくれたことに他ならず、感謝しかないです。

とにかく、僕の中で関西弁は「通じるからわざわざ直す必要のないもの」という認識なので、逆に言うと、通じない関西弁については、直した方がよいと思っています。いくら関西弁が全国的に浸透しているといっても、実は伝わらない関西弁というのは幾つもあり、そういうものは、なるべく直していくべきという考えももってはおります。
伝わらない関西弁の個人的最たる例が「ほかす」という言葉で、今となっては最早伝わらないことで逆に有名になって伝わるのかもしれないですが、僕はあるときを境に意識して使わないように気をつけています。これはもう結構前の話なんですが、僕が会社で電池用のゴミ箱がどこにあるか分からなくて、総務の担当の人に「電池ほかす場所ってどこですか?」て聞いたら「電池保管する場所ですか?」と聞き返されてしまったということがあり、あまりにも真逆の意味で伝わりすぎて、「ほかす」は通じないと肝に銘じ、以降積極的に使わないように気をつけています。
こういうエピソードもあるくらい、ふとした拍子に、関西弁って方言だったなということを思い知らされ、通じないと気づいたらなるべく修正するようにはしています。関西弁を意識して矯正しないといけないとは思わないけど、通じない関西弁を話すのは本意ではないので。

そこで冒頭の話に戻ると、「へたしぃ」という言葉が、通じない関西弁なのであれば、僕はこれを機に直さないといけないのですが、僕の中でまだちょっと疑義がありまして、「へたしぃ」って本当に関西弁なんですかね?
実は僕の中ではまだ、方言じゃなくて、単なるスラングみたいな感じのヤツなんじゃないかって思ってます。ここにきて「へたしぃ」の説明をしますが、きちんとした言葉に言い直すと「下手したら」となります。もしかしたら・ひょっとするとの意味の「下手したら」が崩れて「下手しぃ」となっているだけなので、どちらかと言えば、古より特定の地域にのみ根付く方言というよりは、若者言葉的なスラングって言われた方が、しっくりくる感じありませんか?たまたまその場にいた人たちが知らなかっただけで、僕が関西弁だから、関西弁ってことで処理されただけなんじゃないかって、僕はまだ疑ってる部分があります。

もしこれを読んでいただいた関西以外の出身の方の中に、「へたしぃ」という言葉を使ったことある方がいらっしゃれば、関西弁ではない可能性が高いので、僕自身も今後とも意識せず自然に使っていきたいところです。もし関西人しか使わない、まっすぐに関西弁なんだとしたら、今後僕が「へたしぃ」を使ったときは全力で非難してください。これ以上僕が、通じない関西弁を使い続けるタイプのイタ関西人になってしまわないように。


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