初めての単身赴任で、隣の家からの差し入れ

私は金融機関に勤めるサラリーマン。
3年くらいのスパンで異動があり、引っ越しも当然のようにあります。そんな会社に勤めていますので、各地に寮があります。

これは、家族寮で家族4人で住んでいた頃の話です。
平穏に暮らしていましたが、ある時トラブルが発生しました。

下の階の部屋に住む人から、うちの子供がバタバタする音がうるさいと苦情が入ったのです。

防音マットも敷いていたし、うちの子供は入園前の女の子でそんなに騒がしくないのです。それなのに、苦情が入りました。下の階の部屋に住む人は社内でも有名な変人クレーマーだったので、それからは今まで以上に音に気を付けて生活するようにしていました。

それなのに、またうるさいと苦情が入りました。

クレーマーに嫌気がさしたので、妻子を地元に帰し自分は初めての単身赴任をすることにしました。

次の勤務地は地元だろうし、子供が転園しないで済むようにしようとも算段したのです。

さて、妻子を地元に帰した私ですが、単身寮がいっぱいでしたので、そのまま家族寮に一人で暮らすことになりました。あの変人クレーマーと同じ寮で…。

しばらくしてから、隣の部屋の奥様がやってきて「単身赴任大変ね、今度晩御飯を作るわ。」と言ってくださいました。

そして、実際に晩御飯を作ってくれる日がやってきました。

出来立ての温かいカレーとサラダを私の部屋に運んでいただきました。

一人では広すぎる部屋に大きすぎるダイニングテーブル。そこで一人寂しく食事すると、何を食べても何も感じないのです、いつもは。

しかし、この日は感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。

その後、電話で妻から「どうだった?」と聞かれ、
私は「にんじんが少し固いカレーだったけど、嬉しかったよ。」と答えました。
すると、妻が「忙しい中、慌てて作ったんじゃない?予定時刻に間に合わせるために。」と言いました。

私は、隣の部屋の奥様が慌てながらも一生懸命作ってくれている姿を想像して微笑ましくなりました。

料理は、食材や味も大事ですが、どんな思いが込められているかが大事なのですね。どんな高級食材であっても、人の思いを超えることは無いでしょう。



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