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昨日誰と遊んだ?

小さな頃は兄の後について、男の子とばかり遊んでいた。小学校ではどの学校でも男女で遊んでいた。6年生になっても馬乗りやタンドロや木登りをしていた。馬乗りは股座に頭を突っ込んだり、馬になってる子の背に乗り潰そうと左右に揺さぶったり、つまり身体と身体が密着する遊びである。乱暴で危険なところがあるので、学校で禁止され最近の子どもたちはこの遊びを知らないのではないだろうか。

脱線するが、タンドロや缶蹴りなどと共に人気の遊びがあった。番号を叫びながらボールを宙高く投げ、その番号に振り当てられた子がノーバンドでキャッチすればセーフ、また番号を言いながら投げる。落としてしまったら、その番号の子はオニとなる。すると残りの全員は一斉にできるだけ遠くに逃げるのだ。オニはボールを拾うと同時にストップをかける。そうして一番近くにいる子にボールをぶつけるのだ。拾った場所から3回ジャンプして標的に近づくことができる。当たればアウト、当たらなければセーフで3回アウトで退場である。ボールひとつとそこそこの広さの場所さえあればできるので、よく遊んだものだが、娘に聞くとそんな遊びは知らないという。他にも順番に濡れタオルを少しずつ絞って、水滴が出なくなった人が負けとか(部活で遠征に行った時の空き時間でよくやっていた) なにしろなにもなくても遊びやゲームを考え出していたものだ。今は娘は遊ぶもの(遊具やゲーム機器や時には漫画を持って公園へ行く)がないと遊べないという。おいおいオマイらナサケナイノウ、、、。

話は戻るのだが、小学高学年ともなると、男女混合で身体に触れる遊びを自然と避けるようになってくる。特に胸が膨らみ始めた女子は心無い男子の標的にされてしまうので、避けざるを得ない。私はそちら方面の成長がいたって遅かったので、6年生まで参加していたが、さすがに中学生でやめた。専門学校生の頃、下級生の男子が馬乗りをしているのを見た時、一緒になって身体を使って馬鹿みたいに笑ったり無茶したり、できなくなってしまった自分を随分つまらなく淋しく感じたのだった。

中学生になると何をして遊んでいたのだろう。前半はまだまた裏山に探検しに行ったりアクティブに遊んでいたが、後半になるとやはり誰かの家で遊ぶとか、せいぜい近くのショッピングセンターをウロつくぐらいであっただろうか。

そういえば、交換日記をしていた。単に日記を書いたり漫画やイラストを描いたり、小さな事件を大きく大げさに小説風に書いたこともあった。書くことは好きだったのだ。最初は数人でノートを回していたが、やはり書いたりするのが苦手な子がいて、少しずつ抜けていき、最後はエリちゃんと私だけになった。エリちゃんは絵と字が上手だった。エリちゃんは一年生の時だけ同じクラスで、あとはずっと別々だった。高校も別になり、彼女が就職してからも、連絡をとったり会ったりしていた。

ある時、ラジオごっこが2人の間でブームになった。私のカセットデッキを持って彼女の家に行き、好きな音楽をかけたりおしゃべりをしたりしてもう一台のカセットデッキで録音するのである。当時流行っていたのはアリスやツイスト、エリちゃんは渡辺真知子と原田龍二が好きだった。自分の声を聞いた時は、鼻にかかった何と歯切れの悪い声なのかと、驚いたことを覚えている。

エリちゃんのお父さんは船乗りさんでほとんど家にいない。お姉ちゃんがいたが、お父さんと折り合いが悪く、家にいたりいなかったりで私はほとんど会ったことがない。お母さんはお家にいた。ある時エリちゃんのお母さんが、おやつにチョコパフェを作ってくれた。固まらないチョコがなかったので、アイスの上で溶かしたチョコがカチカチに固まってしまっていたけど、お店でしか食べられないものだと思っていた私は、エリちゃんのお母さんすごーいと思った。

エリちゃんのお父さんとお母さんは仲が悪く別れるつもりだったのが、エリちゃんができてしまったので、エリちゃん曰く、仕方なくやり直すことになったのだそうである。お姉ちゃんはその頃すでに社会人だったので姉妹は年が離れており、お姉ちゃんは両親が仲が悪かったことを見て知っているので、家にいつかないのだとエリちゃんは言っていた。エリちゃんもお父さんを毛嫌いして、「キモー」とか言っていた。

私たち2人共社会人になって少し疎遠になりかけていた頃、彼女から引越しの知らせが来た。両親ともに癌を患っているのだという。お姉さんは結婚して子どもができ、お父さんと和解したのだと。両親が病気にもかかわらず、引越し先は持ち家だと言っていた。だから働かないとと言っていた。目の大きな子だった。どこか感情を押し殺して、それでいてお兄ちゃんに憧れて、年上の男の人を好きになり彼氏というよりお兄ちゃんにしたがっていた。白馬の王子様(お兄様)を、目をキラキラさせて待っているような、そんな子だった。私の記憶の中のエリちゃんは少女のままである。同い年だから、すっかりおばさんのはずなのだが、おばさんのエリちゃんなんて想像できない。

女子が3人以上集まると、良好な関係を維持するのは私には至難のワザである。絶妙なバランス感覚と嗅覚と分析力と認識力と鈍感力と会話力と、それからそれから、、、。なんと疲れることだろうか。私は決まったグループには入らず、あっちへ顔を出し、こっちの子と喋り、また別の子と登校したりと、緩やかな繋がりを好んだ。2人きりは相方が転校したりケンカをしたりすると、致命的だ。3人は何かともめる。4人以上は派閥ができる。男子が入るとマイルドになるが、好いた惚れたが絡んでくる。蝶が蜜を吸うように、あっちへヒラヒラこっちへヒラヒラしているか、羽を休めてひとりボーっとしているのが楽なのだ。

エリちゃんと長く友達でいられたのは、ずっとクラスや学校が別々で、付かず離れずの絶妙な距離があったからだろうと思う。


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