隠しきれない03
職場では内線をかけることが多い
受付スタッフやカウンタースタッフなど、基本的にその場を動けないことが多いためだ
彼女へ内線をかけたときの、あの電話口の緊張した声色
そして名乗った電話の相手が自分だと分かったときの、ふわっと吐息が聞こえてくるかと思うほどの安心感
そんなとき自分は絶対に口許が緩んでいる
そんな反応、自分にだけだろうか
きっとそんなはずはないというのにほんのり期待してしまう
ふわっとした空気感を肩越しに感じる
カウンターで作業中に後ろから耳元で相談されることがある
「HPに原則返却は貸出したキャンパスで、とありますけど―――」
利用者の方を待たせていることもあり彼女の焦りが伝わってくる
「―――利用者の方に伝えていいですか」
それにしても
近い
顔の位置が
ひきつっているであろう自分の顔の想像がつく
それどころではないと思っているであろう彼女にはきっとバレていない
(たぶんつづく)
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