見出し画像

日中お互い良いところを学ぼう Vol.2~情熱中国大陸~

また目線を変えてみると、20年前中国から日本に留学し、日本が大好きで、努力して日本で念願の就職を果たし、日本人と結婚、子供も生活基盤も日本人と全く変わらない人達がいる。私の友人知人にも何人かいる。

彼らの複雑な気持ちは容易に想像できる。自分が大好きで、そして生活してきた場所日本。皆礼儀正しく住み心地の良い、一番好きな自分の場所だった。日本はここがすごい、こんなに素晴らしいんだと、自分の事のように、中国にいる友人にずっと日本いい国なんだと自慢して来たはずだ。

ところが最近、来た時とは随分状況が変わってしまい、気づくと今日本は元気がない。大好きな日本が衰退し没落して行ってしまうのではないかと不安で仕方がない。一方あまり好きではなかった、ちょっと軽蔑さえして来た自国が、台頭し強く豊かになって来た。

日本の良いところ、美味しいもの、売れ筋商品、などの日本に関する情報は彼らの方がよほど多く知っているし、お金もたくさん持っている。今から自国に戻っても、日本に慣れ切ってしまった自分などが働けるような場所があるのか?昔は自分よりずっと下のレベルだと思っていた同級生達は、今では皆大金持ち。片や自分は日本の中小企業のしがないサラリーマン。「国を捨てた負け組」のようで、同級生らに会うのもちょっと気恥ずかしい。

日本に来て夢を掴み、一生懸命働いて幸せな家庭を築いてきたはずなのに、両国のお互いの良いところ悪い所を知り尽くしているはずの彼らが、このようなやるせない気分になっているのは悲しい残念な事ではないか。彼らは、意識も心も、日本人と何ら変わらない。皆一緒になって頑張ればいいのだ。

2018年の年末、社員旅行で我が中国人スタッフを日本に連れて来た。日本の仲間(お客さん)と作戦を練り、皆に楽しんで貰おうと予定を組み、一週間の旅を計画した。日本の良いところを感じ、体験し、吸収しようと目を輝かせている彼らを見て本当に嬉しく思った。

「ゴミが本当に落ちてない!綺麗すぎ!なにもかも整理されていて機能的!皆礼儀正しい!どこに行っても静か!一度も車のクラクションの音を聞かなかった!」などなど予想通りの反応もあった。

またお客様、同志の皆に本当に良くして頂き、そのキメ細かな日本の「心遣い」を全てスタッフに中国語で分かりやすく説明し伝えた。スタッフ皆、その「心」に大変感動していた。旅や豪華な食事、宴会、演奏会など、皆で過ごした時間は、まさにプライスレス、私にとっても涙が出るほど嬉しい時間となった。

倉庫で検品作業をしている皆さんとの交流も本当に有意義であった。検査の仕方や、不良の原因を、お互いの視点から議論し、その場でお互いの作業をやって見せあい、説明しあった結果、中国に対する印象、見方が180度変わった、と言って頂けたのは嬉しかった。

私も経験があるが、品質が悪いと、材料をケチった結果じゃないかとか、わざと入れたのではないかとか、中国人に悪意を感じるとか、非常に困った「被害者妄想」に囚われてしまっている事が良くある。

しかし「現実」はそうではない。実際どうやって作るのか、作業工程を知らなさすぎたり、材質の特徴を理解していなかったり、指示が不明確で分かりにくい上、優先順位も間違っていたり、そもそも時間がなさすぎた、等等、諸々の原因が起因している事を、一切忘れてしまっている。

それらを一つ一つ浮き彫りにし、具体的に商品を見ながら一つ一つ丁寧に紐解いて行ったところ、日本のスタッフも中国のスタッフも、言葉ではなく、本当の意思疎通が出来た事を実感でき、皆の表情は明るかった。「物を介し顔を見ての具体的コミュニケーション」がいかに重要かをお互い認識出来た。

認め合える人と、心で繋がり、情熱と思いを込めて、丁寧に人のために物作りをする。この旅で、我々が今まで一体何をして来たのか、何を大切に思っているのかが、日本の仲間のお陰で、確実にスタッフに伝わった。そして日本の検査員の方々と分かり合えた。これは大変な収穫であり本当に幸せな事である。日本の皆さん、そして我がスタッフにも、心から感謝したい。

お互いの良いところを学び合い、高め合う事は、相互理解と人の繋がりを深め、ひいては平和につながる、最も基本的な要素ではないだろうか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?