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中国のこの20年を現地で目の当たりにしてVol. 2〜情熱中国大陸〜

20年前と今では、工場工員の給料は10倍になっているのに、労使の立場は逆転、仕事への責任感や物作りへの情熱などは皆無、かくして品質の低下と価格の上昇に歯止めがかからない状況に陥っているのである。

そして当然の結果として機械化がますます進行していく結果になっている。機械は文句を言わないし、間違えない。給料を上げてくれとも言わないし、自殺もしない。社長にとっては非常に良い事である。仕事がない時は電源を切って置いておけばいい。

こうして人の仕事が減り、人が働くという事に対する意識が確実に変化した。
中国の一部の工場では、機械と人の仕事の融合、機械オペレーション、人の配置、人事教育システム、仕事の効率化全般を、日本人を使って劇的に向上させているところも多いという。

ノウハウ、ソフト、経験をお金で「買う」。日本人ごと期間限定で買う時代だ。何百人もの工員に払っていた給料分が浮いているので、日本人の2人や3人、2年間囲ったって安いものだ。そしてノウハウを全部吸い取り、自分で出来るようになったら、はい、サヨウナラ、である。
今や世界を席巻している中国の携帯電話ブランド。彼らもあらゆる技術を、アメリカ人、日本人、韓国人などの技術者を、期間限定で金で買い、彼らに自社のプロジェクトチームを編成させ、存分に能力を発揮させている。
我々は、これらの現実をよく考えて中国の工場と付き合う必要があるだろう。

以前は社長や上司はとても怖い存在で、工員は首にされたら大変なので、徹夜だろうが何だろうが、命令に従い文句を言いながらも一生懸命働いた。出来る奴は自分で工夫して作業がうまく行くように固定ジグを考案したり、チームで工夫して不良品を減らし、成績を組長にアピールし、少しでも上に行けるように頑張った。給料を1元でもアップする努力をしていた。そして下班(退勤)後、目を輝かせて工場の周りの屋台で、5毛(5角=0.5元)の煎餅を買うかどうか、真剣に迷っていた姿がとても懐かしい。

給料の400元のうち300元を、郵便局から実家の親の生活と弟の学費の為に仕送りし、残り100元を一カ月間で自分がどう使うか、それが重要であった。今では100元など、外食とジュース代で一瞬で消えてしまう。昔は1ヶ月分の生活費だ。流行りのローラースケート場にも行きたいし、デートで彼女にりんごや煎餅も買わなければいけない。草っ原に座り、同僚と将来の夢を語り合いながら、本気で皆それを考えていたのである。実は、今の中国の経済を牽引しているのが、ほぼその世代である。

つづく

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