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阪神タイガースがなぜ9連敗したのか
こんにちは。ノート2本目のたけ珍です。
みなさんいかがお過ごしでしょうか?阪神タイガースが9連敗して泣いてる人、号泣してる人、落涙する人、涙が頬を濡らす人、紅涙を絞る人、色々いると思います。
世間では9連敗の原因は「シーズン開始前に退任宣言したからだ」「矢野が無能」などとさまざまな荒唐無稽の憶測が飛び交っています。
では本当に矢野監督は無能なのか?監督が有能だったらもっと良い状態だったのか?阪神タイガースの開幕前〜ここまでの様子を振り返ってみます。
ポイントは2つ。監督の采配の範疇外の出来事と、それを乗り越えるために発生した選択。これらについて見ていきます。初出の情報はあまり出てこないかもしれませんが、状況を整理できればと思います。
なお、ここでは些細な采配ミスや、矢野監督の開幕からの野手運用については主に指摘しません。確かに矢野監督は実績重視起用であり、開幕前に謳っていた競争をスタメンで具現化しているとは言えませんし、ヤクルトの高津監督が先日言っていたように「その日その日のベストオーダーを組む」ことがこのような状況では適切でしょう。しかし、ここまでのチーム打率はリーグ3位、3/29~の週間成績はチーム打率1位であることが示すように、打線はそこまで悪くなく、課題の中心は投手です。(特に開幕から3試合は中継ぎが9.1回を10失点)また、打者の調子による打順変更案もまだたった9試合しか経過していない中では結果論的である上に、小幡小野寺といった若手の起用も当然必要ですが、それは短期的な勝利のリターンではなく後半戦や次年度以降を見据えた長期的リターンの話なので、ここでは9連敗に与える直接の影響は小さいとして無視します。
セリーグ 4/3終了時点でのチーム成績(シーズン・週間)です。 pic.twitter.com/1ztAyD4J44
— つばめ(セのデータの人) (@chikupn2896) April 3, 2022
監督の采配の範囲外の出来事
スアレス離脱
まず最初は誰もがわかる大幅なマイナスから。阪神タイガースの去年の躍進を支えていたのは間違いなくあの男でした。
2021年の阪神
— aozora (@aozora__nico2) March 29, 2022
8回裏終了時点でリードしていたのは70試合
69勝1分0敗
でした
サイバーメトリクスでは、得失点差と貯金に強い相関があるとされ、つまり得失点差を見ることでおおよその優勝可能性が見れるとされています。
しかし、こちらの分析において阪神タイガースはあまり大きな得失点差を実現していないにも関わらず、首位のヤクルトと同数の貯金を実現しています。
一般に少ない得失点差でも采配などでやりくりすることで貯金を稼ぐというのは不可能(運でしかない)とされておりますが、スアレスの昨シーズンの61回の登板でセーブ失敗が一回(しかも同点で止めた)であることを鑑みても、「NPBレベルを超えた投手の存在」が少ない得失点差での貯金を稼いだということが示唆されるといえるでしょう。
この投手の離脱が何を意味するかは火を見るより明らかでしょう。
怪我/不調離脱
次に、オープン戦〜開幕までの間に怪我やコロナで離脱した選手をリストアップします。
髙橋遥 手術明け 昨シーズン終わり〜
アルカンタラ 捻挫 2/21
岩貞 左足痛 3/10
ガンケル 腰の張り 3/10
及川 右脇腹筋挫傷 3/15
他にも西勇輝や齋藤、糸原、岩崎優によるコロナ離脱や、中野の昨シーズン遅れからによる調整遅れもありました。シーズンには間に合いましたが、岩崎の調整不足は悲劇の開幕戦を見てもわかるでしょう。これに加え、オープン戦不調の馬場が二軍調整になります。
ここで、2021シーズン最終戦(10/26)のベンチ入り投手を見て見ましょう。
13 岩崎(8回)
18 馬場
37 及川(6,7回)
44 アルカンタラ(6回)
50 青柳
56 小林
66 小川(6,7回)
75 スアレス(9回)
先発であった青柳を除けば、岩崎と小川の実に2/8しか一軍登録されていません。そして、とどめの出来事が起こります。
青柳・島田コロナ
青柳 コロナ 3/17
島田 コロナ 3/21
青柳の離脱により、ガンケルの離脱と合わせて2人も先発投手が欠けることになります。都合の悪いことに、青柳のコロナが発覚したのは開幕一週間前。既に開幕カード・2カード目のローテは決まっており、調整に動いていた選手を無理に開幕カードに動かすのは避けたい状況でした。
それを乗り越えるために発生した選択
クローザー起用
これらを踏まえてまず最初に発生した重要な選択がクローザーです。正直言って、スアレスが抜けた以上阪神の投手では誰が入っても格段に見劣りします。岩崎を後ろにずらすという選択肢も取れますが、8回ではまっている人を無理に動かしてメンタル面に影響が出ることは避けたかったはずです。
これらにより、9回に誰を当てはめるかを考えた際に白羽の矢が立ったのは、元々守護神候補として獲得したケラーでした。
小野でも湯浅でも齋藤でもよかったでしょうが、誰をとっても実績が全くありません。その上、これほどまでに投手に離脱が出ている状況で、二軍は怪我明け調整組の登板待ちなどで常に投手の玉突き事故のような状況になっておりました。そのためケラーの調整を待っていられる状況ではなく、オープン戦で好投した本来守護神候補であるケラーに調整を兼ねながらクローザーをすることを託したのでした。
結果的には二回連続で1点差という厳しい場面で登板させることになり、時期尚早な決断と判断されてしまうのでした。
開幕カード投手
次に、開幕カードの投手です。
開幕戦に関して言えば、一日のスライドで済む藤浪晋太郎に白羽の矢が立ったのは当然と言えますし、実際7回3失点と十分なピッチングを仕上げました。問題は残りの2日です。託されたのは小川と桐敷でした。
結論から言えば、小川は5回0失点、桐敷は5回1失点と急遽抜擢されたとは思えない素晴らしいピッチングをして見せます。「先発として抜擢したこと」自体は間違いではなかったでしょう。
しかし、中継ぎ不安の影響で二人ともに6回まで任せる必要があり、二人とも体力不足もあり6回に失点しまいました。さらに、打線も不運や相手投手の好調さもあり沈黙、全く投打の噛み合わない二試合となってしまいます。その後のカードも、伊藤・西・秋山3投手全て6回に失点を許すという重苦しい展開となります。連敗・中継ぎ不安によるプレッシャーを抱えている先発が体力がなくなってきた6回に崩れるのは想像に難くないでしょう。
開幕時のローテは6試合全部勝つつもりで投手を整備したでしょうが、結局は小川・桐敷という中継ぎに配置できる人材を先発に回してしまったことにより、課題であった中継ぎが更に不安となり、残りの試合の連敗にも響くことになります。今思えば、最初から小川・桐敷を中継ぎに回し、実績不足でも別の先発にすることで、その二試合を半ば諦めたとしても他の4試合を取る方が賢明であったようには思えます。しかし、実際に6試合経過する前にその点に気づけた人が果たしていたでしょうか。
投手配置転換
上記6連敗を受けて、首脳陣は投手の配置転換を迫られます。
まず最初に、調整不足であったケラーの代わりに湯浅を守護神に任命します。
圧倒的に少なかった左腕を確保すべく、桐敷を中継ぎに配置転換することになります。
これらにより、まだ十分に調整が完了しているとは言えないアルカンタラを中継ぎ、ガンケルを先発に上げることになります。焦っていたのは明らかですが、岩崎以外で一番信用できる湯浅を守護神に、直前に二軍で4回1失点だったガンケルを代役先発に選んだのは、細い勝ち筋を掴むために露骨に間違っていた選択とは言えないでしょう。首脳陣的にも、長いイニングは投げなくていいから最初をきっちり抑えて欲しいという思いだったでしょう。また、アルカンタラもケラーよりは確度の高い選択でしょう。
「なぜ先発桐敷にしないのか」という声がファンや一部評論家からも上がっていましたが、上記の理由を考えればガンケルを使ったことの正当性はわかるはずです。全ての試合を勝とうとして他の試合にも影響しているようでは先が見えてるとは言えません。おそらくですが、来週の小川も中継ぎに配置転換になり代役の先発が立てられるのではないでしょうか。
結果としてはこの選択も裏目となり、ガンケルが初回に4失点してしまうという苦しいスタートになり、強打の巨人打線の前にアルカンタラも捕まってしまうのでした。
苦しかったのは中継ぎに配置転換したい二人である小川・桐敷が開幕カードに並んでしまったことです。しかし、これは一番計算できていた青柳が開幕一週間前にコロナになってしまったため、どうしようもなかったのです。
まとめ
もちろん、後からあーすればこーすればと見えてくる部分は多いと思います。実際何か些細なことでも変えていれば9連敗することはなかったかもしれません。
ですが、このような苦しい状況の中で首脳陣は1勝を紡ぐべく投手運用の面で細い勝ち筋を拾いに行こうと懸命な選択を取ってきていると個人的には思います。
「キャンプから投手整備するのが監督の責務ではないのか」などと厚顔無恥にデカい声をあげている人もいますが、これだけのイレギュラーによく対応している方ではないでしょうか。
このような苦しい状況の中で戦っている監督に投げかける罵詈雑言は自分は持ち合わせていません。
個人的に矢野監督に強く求めるのは、「俺たちの野球」を指揮するなら、一点一点に闘志を出してほしいと、そう思います。
参考
ここまで読んでもまだ野手ガーという人もいるかもしれないので、本日配信されたDELTAによる1.02 Weekly Report第506号から、要点を抜粋します。詳しくは有料会員になって読んでください。
DERが12球団最低で飛んだ打球がヒットになる不運が強い
HR/FBも12球団最低で飛んだフライがホームランになる不運も強い
これらにより運が下振れていることがわかります。この野手の状態で、前を向いて戦っていればきっと初勝利はそう遠くないはずです。
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